――Baby, don't be shy――






テレビを見れば、見知らぬ女性が
「たまには行動に移してくれないと、本当に愛されてるのか不安になっちゃいますよね。」
なんて物知り顔で言っていたし、街を歩けば、 きゃっきゃと甲高い声で笑う若い女たちまでもが
「いつもじゃなくていーんだけどぉ、やっぱ愛してるとかぁ言ってほしーよねぇ。」
「わかるわかるぅ。」
なんてはしゃいでいたからつい、いつもこっちの都合なんてお構いなしに 瞬間移動でやってくる傍若無人な男に来い、なんて電話してしまった。






文字通り電光石火の勢いで現れた男の姿に、 そう言えば呼んだあとどうすればいいのかなんて誰も言ってなかったぞ、 と慌ててみても今更帰れとは言えず、俺はただただ沈黙するしかなかった。
「・・・どした?何かあんのか?」
と流石に焦れた男に聞かれても、知らん!!と答えるしかない。
「知らんって何だよそれ。何か言いてぇこととかあったんだろ?」
確かにコイツの言ってることは的を射ているし、言いたいことも一つしかないのだけれど、 目の前の男のように愛してるなんて軽々しく言える性格でもキャラでもないし、 だからと言って昼間から盛るのも嫌だし、もう俺に残された道は口を噤むことだけだった。






ちょっと待てよ、俺はこいつの目が苦手なんじゃないか? 長い静寂の中でそのことにやっと気づいた俺は、 絶対動くなよといつも落ち着きの無い男に命じ、その辺にあったタオルを掴んだ。 だからおめぇは何がしたいんだよという男のぼやきを無視して、 少し飛び上がって目隠しをする。白いタオルを顔に巻いた姿を見てよし、 と呟くとギリギリまで気を落とした。
「・・・ベジータ?」
訝しげな声を出す男を黙ってろ!!と一喝して、深く息を吸い込み、そっと唇を触れ合わせる。






そのままぐっと抱きしめようとしたコイツの腕からすり抜け、全速力で窓から逃げた。












――遺伝的恋愛事情――






コツコツと小さな音がして、窓を開けてみると誰かが月を背に浮かんでいた。 明日になれば綺麗な円を描くのであろう月の光が思いの外眩しく、 思わず眇めた目に映ったのはもう見慣れた赤いバンダナだった。
「バーダック!」
何故か最近姿を見せなかった男の名を叫ぶと、 顔の前に人差し指を掲げ悪戯っぽい笑みを浮かべてみせた。 今思えば俺はこの悪童めいた表情が一番好きだったのかもしれない。
「静かにしろって。バレるかもしれねぇだろ。 一緒に上に来ねぇか。最後の月が見られるぜ。」
最初から俺が断るなんて露ほども思っていないそれは、誘いではなく確認。 ただ俺も俺で、いつも奴の期待通りの答えを返していた。 訳の分からぬ言葉に首を傾げつつも大きく頷いて屋根へ上った。 ブルーツ波を体いっぱいに浴びれば、本能的に血が騒ぐ。 五体すべてで興奮を感じ取りながら、俺は馬鹿みたいにバーダックを見つめていた。






「なぁベジータ、お前は今幸せか?」
「・・・・・・?」
「俺たちには美味い食事も出ねぇし、柔らかい寝床もねぇ。 上の奴らからすりゃ死んだら捨てるだけの存在だ。 ただな、俺たちには自由ってもんがある。 いくら支配したって無駄だって胸張って言える誇りもある。
お前はまだちっせぇから分かんねぇかもしれねぇが、俺がそのきっかけをくれてやる。 自分の手で自由を掴むんだ。いいか、いつかお前は俺やサイヤ人から解放される。 そのときまで絶対に死ぬな。這いつくばってでも自由を手に入れろ。 忘れんなよ、ベジータ。・・・・じゃぁな。」
矢継ぎ早にそう言ったかと思うと俺の額に唇を寄せ、 バーダックはどこかへ飛び去っていった。まだ言葉の意味を理解できなかった俺は、 ただ遠ざかっていく後姿をぼんやりと見ることしかできなかった。 奴がフリーザに殺されたのはその翌日だったらしい。






「・・・地球から見る月も悪くない。」
あの頃は見ることを禁止されていた満月を見上げ一人ごちる俺の隣には、 奴とそっくりなようでまったく似ていない男が鼾をかいている。
「バーダック、俺はまだまだサイヤ人から解放されないらしいぞ。」
笑い声を漏らしながら呟く俺を、後ろから伸びてきた腕がシーツの中へと引き入れた。
「・・・バーダックって誰だよ。」
「さぁな、忘れた。」
「・・・ならいい。」
俺を腕の中に抱きこんだまま、また夢を見始めたらしい男の額にあの夜と同じキスをして、 俺も眠りへと誘う手に従いゆっくりと瞼を閉じた。












――ゲンカイトッパ――






なんべん好きだって言っても、どれくれぇ強く抱いても、 やっぱオラたちには帰る家っちゅうもんがある。これだけはどうしようもねぇ。 チチや悟飯が大切なのもほんとのコトだし、ベジータがブルマやトランクスのコトを だいじに思ってるのも分かってっから。・・・けど、やっぱ、夜に家に帰るのはつれぇ。 特にベジータが寝てっとさびしい。
パンツをはいて、ズボンをはいて、腰紐を巻いて、青い道着を着て、 最後のテイコウみてぇに、眠りこけるベジータにそっと口づけて。 また明日な、なんて聞き分けのいいフリして、オレンジ色の道着をつかんだ。
「・・・・ん・・カカ、ロット・・・。」
「・・・え、今オラの名前言った?」
ごくっとツバを飲み込んで、誰もいねぇのに質問なんかしちまって。 なんべん思い出してみたって、やっぱベジータが言ったのはオラの名前だった。 ・・・そりゃはんそくだぞ、ベジータぁ!!せっかくオラが帰ろうとしてんのに、 んなカワイイトコ見せられちまったら、オラもう帰らんねぇ。






さっき着た服を100倍のスピードで脱ぎすてて、 カワイイ顔して寝てる身体におおいかぶさった。 うれしすぎて、顔が一生笑ったまんまもどらねぇ気がする。 広いでこにキスをして、いっつもシワが寄ってるまゆげのまん中にキスをして、 いっつもニラんでる目を隠してるまぶたにキスをして、カワイイ鼻にキスをして、 ひでぇコトばっか言う口にキスをして、やわらけぇほっぺたにキスをして、 ちっせぇ耳にキスをして、ベジータの顔中オラのチュウで埋めつくしてやる。
「・・・んん。」
ベジータが出した息にちょっとビックリしちまったけど、ベジータはあいかわらず寝てた。 ・・・うん、やっぱすなおなほうがカワイイ。初めて見るベジータにドキドキしながら、 そっとシーツをまくった。出てきたノドボトケを口ではさんで、サコツをゆるく噛んで、 ピンクのチクビを吸って、なでて、ちっせぇヘソにもキスをして。 起きてほしいけど、起きてほしくねぇ。
「・・・ぁ・・カカロ、ット。」
ベジータは寝てんのに、オラが誰か分かってくれて、 サイコウにうれしかったオラはもっとうれしくなった。 寝てるベジータがこんなカワイイと、やっぱ起きてほしくねぇよなぁ。 ぶきっちょなオラが、ベジータを起こしちまわねぇように、そっとそっとシーツをまくって。 ベジータのちんちんが、ちゃんとデカくなってくれてて、また嬉しくなった。 オラもう一生顔がもどんなくてもいいや。
ベジータのちんちんをなめて、くわえて、やさしく噛んで。 これ以上したら起きちまうよな、って分かってっけど、オラはもう止めらんねぇし、 サイショにオラの名前言ったのベジータだし、ま、いいだろ。






オラは今すぐ中に入りてぇんだけど、ベジータがいてぇのはぜってぇやだから、 足を上げて、ゆびを入れて、アナを広げる。 まだ寝てるベジータもそうとうガンコなヤツだなぁ。 ゲンカイまでベジータの足を広げて、いっきにオラのちんちんをつっこんだ。
「・・・んんっ!あ、カ、カカロット!?」
やっぱ起きちまったベジータは、自分が何をされてんのか分かんねぇみてぇで、 パチパチまばたきばっかしてる。
「な、何やって・・・あぁッ!」
「だっておめぇがさそうから・・・。」
「なっ、誰が誘うか!!さっさと抜けっ。」
「オラおめぇのことすっげぇ好きだ。」
「知るか!!・・・ひゃぁっ。」
「ベジータ・・・すっげぇカワイイ。」
ついて、回して、ゆさぶって、二人とも気持ちよくなれんのが一番いいから、 つながってるトコからほんとに溶けあっちまうくらい、むちゃくちゃツヨク抱きしめて、 シタとシタをぐるぐる巻きにして。
「ベジータ・・・あい、してる。」
今までなんとなく、言えなかったコトも言っちまって、すっげぇ気持ちよくて、 オラはすっげぇしあわせだった。
「やあぁっ・・・カカ、ットぉ・・も、いくっ!」
「ベジータ、ベジータ・・・好きだっ。」
「ひぅ、ん、あああぁぁっ・・・!」






「イッたんならさっさと抜け、バカロット!!人の寝込みを襲いやがって。」
さっきまであんなカワイかったのに、今じゃケッカン浮いてるし、シワ寄ってるし、 すっげぇニラんでるし、なんかブツブツ言ってるし。
「・・・やだ。」
「ナニ?」
ピクッてうごいたまゆげがすっげぇ怖ぇ。さっきまでいたヤツとおんなじヤツとは思えねぇ。
「だ、だってよぉ、今抜いちまったら、さっきのおめぇがどっか、行っちまいそうだもん。」
「ケッ、俺はここにいるだろうが。」
「そうだけどよぉ・・・。なぁベジータ、おめぇはオラのコト、好きか?」
「寝込みを襲う奴は嫌いだ。」
「じゃ、じゃぁ寝込みをおそわねぇオラは?」
「・・・嫌いじゃないな。」
けど、やっぱ、ニヤッて笑うベジータは、すっげぇカワイイ顔して、 すっげぇカワイイコトを言うから、やっぱ抜けなくなっちまって。
「・・・あ!き、貴様何考えてんだ!!」
ベジータの中で、モコモコデカくなっちまったオラのちんちんに気づいて、 アワアワあせってるやっぱカワイイベジータに、オラはすなおなキモチを伝えた。
「オラベジータのことすっっげぇ好きだ!!!」












――悪戯ゴコロ――






心地よい夜風にうつらうつらと夢と現実の境を彷徨っていたベジータは、 ごそごそと何かを探っているような不審な物音に突然現実の世界へと引き戻された。 舌を鳴らし、泥棒なら少し痛い目にあわせてやろうと 少々危険な考えを走らせたベジータの部屋にいたのは、 既に見慣れた金色の光をまとう男だった。
「ああ悪ぃ、起こしちまったか。」
「・・・いや、別に構わんが何をしてるんだ?帰ったんじゃなかったのか?」
「帰るつもりだったんだけど、腰紐がどっか行っちまったんだよ。 このへんに置いたつもりだったんだけどなぁ。」
よく見るとずり落ちてしまわないようにズボンを手で押さえているカカロットの姿は、 ベジータの瞳にも滑稽に映る。これが自分の追いかけ続けている宿敵の姿かと 内心溜め息を吐いたベジータは、揶揄を込めた冷笑を浮かべた。






「もうそのままで帰ったらどうだ?」
「冗談だろ。あの腰紐はどこにやったってチチに問いただされちまうぜ。 オレはまだまだお前を愛してぇんだよ。」
「ヤりたいの間違いだろ?」
わざと軽薄なことを言ってみせる情人に挑発的な笑みを向けながら、 カカロットは未だベッドに横たわるベジータに覆いかぶさった。 冗談にほんの少しの本気を混ぜて、己が身に巣くう激しい渇きを覗かせながら。
「んなこと言ってんだったらほんとにヤッちまうぞ。 幸いオレには紐がねぇし、お前は全裸だしな。」
「勝手にやってろよ。俺は付き合わん。」
自分と同じように飢えろ、のたうちまわれと吐き出す言葉はまるで呪詛のようで、 カカロットは小さく自嘲的な笑いを浮かべた。
「・・・ぁ・・ば、か・・・・ほん、とにする・・・んっ、のか?」
「お望みとあらば。」
先程汗を散らしたばかりの身体には簡単に火がついてしまい、 カカロットの唇に首筋を辿られるだけでベジータはビクビクと身体を震わせてしまう。 何とか男を押し返そうとベジータが腕を伸ばしかけたのと同時に、 いつも執拗な愛撫を繰り返すカカロットがすっと離れていった。 珍しいものを見るような目つきで自分を見つめるベジータに、 カカロットはにやりと片頬を上げて見せた。
「続きは紐が見つかってからな。」
「・・・ふ、ざけるな。誰が続きなんかするか。」
上気した頬を向けるベジータに理性のぐらつきを感じながら、 カカロットは困ったように頭をかいた。あれが無いと困るのは確かなのだが、 できる限りベジータの側にいたいという思いもまた確かなのだ。 一応探すか、と無気力な決意を胸にカカロットは再び床を見て回ったのだった。






また腰紐を探し始めたカカロットに、自分の手の内にある群青色の布を見やりながら ベジータは内心こっそりとほくそ笑んだ。

いつも迷惑をかけられてるんだ。これくらいしたっていいだろう?






一方シーツから覗く見慣れた青い布切れに視線を走らせたカカロットは、 ベジータの心境を思い、思わず浮かんでしまった笑みを噛み殺すのに苦労していた。 小憎らしいことばかり口にする可愛らしい恋人が与えてくれた幸せを、 できる限り長く感じていたい、そう誰にともなく願いながら。












――願わくは確かな気持ちだけ――






よし、と新たな決意を胸に悟空は小さく拳を握った。 常ならばどんなことが起ころうとも「ま、いっか」で終えてしまう 他に類を見ない楽天家の悟空にも、近頃一つの悩み事ができてしまった。 何をしていても一旦気になると他のことが手につかなくなってしまう、 そんな経験をしたのは生まれてこの方初めてで、 悟空は自分の心境の変化に大いに戸惑いながらも、 やっと一つの打開策を見出したのだった。






「・・・ベジータってオラのことほんとに好きなのか?」
その言葉に答えられないでいる自分に愕然とした。 たわいない小さな独り言であった筈の疑問はムクムクと広がり、 今や悟空の脳味噌の大部分を占めている。 そう言や、ベジータからオラに会いに来てくれたことなんか一回もねぇし、 抱き合ってるときしか好きだって言ってくれねぇし・・・ 考えれば考えるほどその言葉に否と答えうる事実ばかりが頭をよぎる。
そもそも最初からその言葉に頷こうとしていたこと自体が間違っていたのではないか、 新たに浮かび上がった疑問に必死に頭を振っても現状はなんら進展しない。 うじうじ悩み続けるのは性に合わないと気分を新たにした悟空は、 己の理性と愛するベジータを信じ、今まで決行を迷っていた作戦開始の命令を 自分へと下した。
『ベジータが会いに来てくれるまで、自分からは何もしない』






一日目は何事も無く過ぎていった。いや、オラだって毎日会いに行ってるワケじゃねぇし、 と頭をかすめた嫌な予感を隠す。二日目を平穏に終えた。 だってあいつ恥ずかしがりやだし、と訳も無く流れてくる汗を拭う。 そのまま三日目も四日目も特に変わったことも無いままに、 ただただ太陽だけが機械的に昇降を繰り返していった。
「何やってるだ、悟空さ!」
聞き慣れた声に我に返ってみれば、強大な握力に粉々にされたグラスが、 最後の抵抗と言わんばかりに自分の掌に傷をつけていた。 指の間を流れ落ちる鮮やかな緋色に、知らず高ぶっていた気持ちが静まっていく。
「悪ぃ・・・頭冷やしてくる。」
疲れたような笑みを浮かべる見たことのない夫の姿に、 チチは声をかけることができなかった。






春の訪れを待つことのない北の大地、ユンザビットで悟空は一人頭を抱えていた。 見渡す限り真白い景色は鬱々とした感情を抱えている悟空には眩しすぎて、 顔をしかめた彼はただぽつりと独り言を漏らした。
「もう二週間、だもんなぁ。オラほんとにベジータに嫌われてるかもしんねぇ・・・。」
言葉にすればにわかに現実味が増してくる。 キラキラと輝く雪がこの憂鬱を消してくれればいいと、 とりとめのないことを考えながら大地に横たわった瞬間、 崖からなだれ落ちてきた大量の雪が悟空の視界を奪った。
「くそっ。」
常ならばこれを避けることくらい簡単なのにと悪態をついてみても、 体温を奪われた身体は容易には動いてくれなかった。 あまりの冷たさに感じていたヒリヒリとした痛みが、麻痺しかかった四肢から消えていく。
「ここで死んじまうのかぁ・・・。最後にベジータに会いたかったなぁ。」
呟いた筈の言葉は、悟空の耳に届く前に結晶となって散っていった。






「おい、カカロット、カカロット!!」
幻聴まで聞き取るようになってしまったのかと自嘲しながら、 幻覚でもベジータに会えるのならそれでいいと重い瞼を上げれば、 そこにいたのは心配そうな顔をした彼だった。 やはり幻だと安堵する自分に、情けなさがこみ上げる。
カカロットを殺すと公言していたベジータが、 死にかけた悟空の姿に喜びこそすれ懸念を抱く訳がないのだ。 それでも久しぶりに見ることの叶った彼を悟空は強く抱きしめた。 ベジータが自分を好いているかなどと考えず、 ただこうしていればよかったのにと今更ながら後悔する悟空の腕に、 何故かベジータは静かに包まれていた。
「すっげぇ会いたかったんだ。おめぇが幻覚でも、やっぱ嬉しい。」
穏やかな口調で話す悟空の頬を、ベジータは突然思いっきり力を込めてつねった。 激痛の走った頬を撫でながら恨みがましい眼差しを向ける悟空に、 さも楽しそうな表情を見せてやる。
「何すんだよベジータぁ。」
「ケッ、貴様の幻覚なんぞに間違われてたまるか。」
「え、じゃぁおめぇ本物のベジータなの、か・・・?」
「分からないか?」
にやりと笑うベジータからも自分からも、同じように暖かさと心拍を感じる。 当たり前のことに感激して飛びかかってきた悟空をすんでの所で押しとどめ、 ベジータはお得意の人の悪そうな笑みを浮かべた。
「その前に聞かせてもらおうか。・・・どうして二週間も来なかった?」






その問いに不自然にびくついた悟空は、 眼光鋭いベジータの恐ろしさに堪えきれず渋々己の情けなさを披露していった。
「・・・おめぇが会いに来てくれるまで、オラから会いに行かねぇって、決めてたんだ。」
「何?」
「だ、だってよぅ、ベジータがオラのこと好きなのか、分かんなかったし、その・・・。」
段々と小さくなっていく語尾に比例して俯いていく悟空の唇に、何かがふわりと触れた。 一瞬の出来事であった筈のそれは、初めてベジータが与えてくれたハッキリとした形だった。
「ベベベジータ!?」
「フン、これで分かったか、バカロット。」
もうこれ以上下がるところが無いほど落ち込んでいた悟空の気分を、 一瞬にして晴れやかにしてしまうそれは、まるで魔法のようで。
「ベ、ベジータ、もう一回!!」
思わず鼻息を荒くしながら頼みこんだ悟空を、 赤い顔をしたベジータが殴り飛ばしたとか殴り飛ばさなかったとか。







――罪作り――






「カカロットぉ。」
そう言って普段の彼からは想像もつかないような笑みを浮かべる姿は 本当に可愛いのだけれど。誰か何とかしてくれ・・・男は大きな脱力感に頭を抱えた。






「今日はトランクスの誕生パーティーなんだから、 いつもみたいに部屋に閉じこもってないでちゃんと出てきなさいよ。」
涼やかな水縹(みなはだ)色の髪をなびかせた、いつまでも老いを知らぬ美女に諭され、 チッと小さく舌を鳴らしながらもベジータは重い腰を上げた。 自分が顔を出すことで何のメリットがあるのかはまったく不明だが、 一応ベジータにも彼女に世話になっているという意識だけはあるのだ。
何かを訴えかけるような乾いた空気音とともに入室した男を認め、 がやがやと騒がしかった部屋が一瞬にして静まり返る。 その場にいた誰もが、早く帰って来てくれと心中ひそかに美女の名前を呼び続けていた。 ・・・一人の男を除いては。
「なんだよ遅かったじゃねぇか。」
「フン。俺は暇じゃないんだ、貴様と違ってな。」
「んなコトどうでもいいからさ、これ飲んでみろよ。すっげぇうめぇぞ。」
「・・・・・・。」
眼前のにこやかな笑顔に酒は飲まんという一応の拒否を胸におさめ、 ベジータは淡い桜色の液体に満たされたグラスに恐る恐る口をつけた。 口腔に流れこんだそれは舌に僅かな刺激を与え、 みずみずしい果実の爽やかな香りだけを残し胃袋へと消えていった。
「・・・美味い。」
「だろぉ。」
何故か誇らしげな声を出す男のことなど完全に無視してごくごくと喉を鳴らし 夢中でグラスを傾ければ、淡い桜色の液体はほんの数秒で儚く消え去ってしまう。 だが先ほどの清涼な飲み心地は、たった一度の体験だけで満足できるほど 安っぽいものではなかった。突如感じ始めた喉の渇きに従い、 ベジータは思わず悟空に手を差し出していた。
「もっと。」
「はいはい。」
言葉少なに強請っても、文句一つ言わずすぐに新しいものを渡してくれる。 そんなことに必要以上に喜んだベジータは、 自分がさほどアルコールに強くないこともすっかり忘れ、次々に杯を空けていった。






「お前が何とかしろよ、ソレ。」
「ええ、オラが!?」
「当然だろ。酒飲ませたのはお前なんだからな。」
にやにやと笑うヤムチャの目線の先には、もはや同一人物であるのかすら 定かではないベジータがいた。焦る悟空の膝の上に。
「もう止めろって、ベジータぁ・・・。」
「やだ、もっと飲む!!」
「部屋に連れてってやるからさぁ・・・。」
「・・・・・ッ。」
グラスに伸ばそうとした手を掴めば、許容摂取量を大きく超えたアルコールのせいで 潤む瞳が必死に見上げてくる。赤く染まった頬とあいまって凄まじく艶かしい表情は まるで己を情事に誘っているかのようで、湧き上がる欲望を必死に抑え、 悟空はへべれけと化してしまったベジータに何とか説得を試みるのだった。
「頼むからもう部屋に戻ってくれよ。」
「・・・お酒、飲みたい。」
「・・ッ、の、飲みすぎは身体に悪ぃぞ。」
「ダメ、なのか・・・?」
「〜〜〜〜ッ!!ぜってぇダメだ!!」
「・・・・分かった。」
寂しげに目を伏せる姿に感じた、ぐっと胸を鷲掴みにされるような激しい衝動を 何とか抑制していた悟空の首筋に、きゅっと二本の腕が廻された。 頭をよぎる嫌な予感にまさかと冷や汗をかきつつも、一縷の望みにすがって ためらいがちに口を開く。
「・・・こ、このまま行けっちゅうのか?」
「・・・・・・。」
無言のままうなじに廻された腕に力がこもる。もうどうにでもしてくれと、 珍しくやけくそになった悟空がコアラよろしくベジータを抱えて部屋を出て行く姿に、 堪えきれなかったヤムチャはとうとう腹を抱えて笑い転げた。






「もうオラ堪えらんねぇ。」
自室に戻った途端金色の光を放ち姿を変えた男を不思議そうに見つめたベジータは、 にっこりと微笑んで今もなお強大な疼きを抱える男に口づけた。 小首をかしげ、自分は上機嫌なのだと男の名に乗せて伝える。
「カカロットぉv」
「・・・・・・。」
目前の彼は本当に、とてつもなく可愛らしく妖艶なのだけれど。





どうしよう、手が出せない。

日記のカカベジはキモさ倍増ですね・・・。 特に悟空さファンの方々には本当に申し訳ないですっ。 更に萌えを書きなぐっておりますゆえSS以上の読みにくさ・・・最低ですね。 しょ、精進致します;;