ただ単純にお前がほしかったんだ。仕方ないだろう、俺はサイヤ人なんだから。嫌ならとっとと逃げちまえ。 綺麗サッパリ忘れましょう。追いかけてやるつもりなんかないから。






男がいる。名前はハッキリ覚えていない。
「おい」
「何?」
だってほら、呼べばすぐに答えるんだ。どんな犬だってここまで忠実には育たない。なんて可愛い俺の子犬、 愛してやろう、たっぷりと。
「何のつもりだ?」
「あ、だってその、俺も一応男っていうか、我慢できないものがあるっていうか」
「ふうん」
ヘタレなのに、すぐ暴走するのが悪い癖だ。少し頭を撫でてやっただけで、俺をソファに押し倒したりして。 だけどこいつの興奮した目だとか、バツの悪そうな顔つきだとかは嫌いじゃない。いや、情けなくて怒る気に もならない。
「え、あの、そんな気分にはならない、ですか?」
「そんな気分にさせれば良いじゃないか」
「え、ウソっ、いや頑張る、すんごい頑張る!」
ああこの喜びよう、なんて素直。また頭を撫でたくなっちまう。怒りも喜びも悲しみも、全部俺が与えてやる から。他から感じるものなんて、俺が一瞬で噛み殺してやる。飼い主は俺だけで充分だ。






髪が、肌を擦るから、くすぐったくて思わず笑った。首筋、鎖骨、脇、少しずつ、唇に皮膚が削られていく。 舌が這うと身体の内側がじわじわ痺れた。俺が声をあげる度に、男は嬉しそうに笑った。
抱き締めるような優しい愛撫、なんて腹立たしい甘さ。包容、まさか、そんなものを求めているとでも思っ たか。可愛い子犬、愚かなお前は、鎖に繋がれ堂々巡り。反復、なるほど、それが一番幸せだろうさ。
「・・うぁっ!」
顔を掴んで引き寄せた。舌を絡めて引きずり出した。頬に刻まれた傷を抓ると、男の身体が大袈裟に震えた。ね ぇ、今頭に浮かべたのは誰?俺、それともお前に傷を残した誰か?もしも俺以外の誰かなら、今すぐお前を殺し てやる。お前は俺の掌の中で、遊んでいればそれでいいんだ。ここから出て行きたいのなら、そのままあの世へ 送ってやる。
そうだ、破壊だ。破壊の他に何があるんだ。何でもいい。手当たり次第に壊しつくして、それでも残ったものが あるなら、それだけを守り通せばいい。貝みたいにしがみついたって、貝殻しか残らないじゃない。俺がいれば 充分でしょう?他に何もいらないでしょう?
「どうしたよ、急に。何かあった?」
「うるさい、バカ」
「ちょ、ストップ!・・・うっ」
下着ごとズボンを剥いだ。だって隠さなきゃいけないものなんて無いんだもの。反応しかけたペニスをしゃぶる と、男の身体が緊張して、雄がぐんぐん力を持った。はち切れそうな、ナマの喜び、感じる顔が堪らない。ああ 粉々に砕いてやりたい。お前の破片を踏み潰しながら、ありったけの声で笑ってやりたい。これを愛と呼ぶので しょう?ねぇ、俺はこれ以上何もいらないのよ。






「あぁっ・・・ん、っく」
尻たぶを指で広げる。いつの間にかペニスを咥えるのを忘れていた。男の指の間で、ペニスが震えて、粘りつく 感触が、顔中に広がった。
「・・あ、ゴメンベジータっ」
「・・・・・ばか」
青臭い顔を近づけて、擦りつけるようにキスをした。唾液と精液が混じりあって、にちゃにちゃと糸を引いた。 後手でペニスを扱くと、男がみるみる勢いを取り戻した。苦くて甘い劣情の味、お前は何を感じるかしら。何でも いいさ、考える余裕ごと奪ってやる。
「・・・んっ、ぁぁああ!」
ペニスがメリメリ肉を裂いた。膝の力が抜けて、自然と雄を呑み込んでいた。痺れ、痛み、光が散った。欲望、衝 動、俺たちはどこまでも肉でしかない。ずっとこれがほしかったの。薄く薄く広がって、今なら宇宙中を飛び回れ そう。軽く軽く、重みなんて最初から知らなかったように。
腰を回されながら、項を掴まれて舌を絡めた。脳味噌がぐらぐら揺れて、スタートラインの向こう側まで一っ飛び。 リセットボタンに騙されるフリ。嘘でもいい、それを押せるのはお前だけなの。ほら、甘酸っぱさが突き抜けて、 これが破壊の味なんだ。
「なぁ、呼んで?俺のこと、ヤムチャ、って呼んで?」
「あぁっ・・・ん、ん、ヤムチャっ」
名前を呼ぶと、男はまた嬉しそうに笑った。どうして、名前に何の意味があるの。俺もお前も肉の塊、それ以上に 何がいるの。俺ならお前の鎖だって、一瞬で粉々にしてやれるのよ。






いっそこのまま地獄、奈落、どこでもいい、転がり落ちていければいいのに。世界の涯で欲に溺れて、身体をお前 で満タンにして、空虚だって握り潰して、それから自分のことも忘れちまうの。そこでなら安心して眠れそうな気 がするんだ。お前だってもうタクサンでしょう?今にも窒息しそうでしょう?
「ひぅ・・・ァッ、も、いい!」
「ベジータ、好き?・・俺を好き?」
「・・・んんっ、ハ、すき」
「俺も!マジで、ほんと、すっごい好き!」
男の目が丸く輝いた。餌を前にした犬そのもの、なんて可愛い俺の子犬。俺だけを餌に生きればいいのに。全部忘れ たお前になら、きっとどこまでも優しくしてやれる。
意識のどこか一ヶ所だけが、妙にハッキリ浮かび上がった。胸がざわつく。息が吸えない。左手を伸ばす。お前の首 なら多分片手で充分だ。少しずつ力をこめる。ああ骨を折らないように慎重に、できる限りゆっくりと。さぁたっぷ りお食べ、これこそが俺だ。
「ベジータ?・・・・っぐ!」
「・・んぁっ」
男の顔がみるみる赤く、どんどん赤く、きっと最期の一踏ん張りね。苦しいでしょう、今俺が手を離すだけで、お前は 解放されるみたいよ。そうして何事も無かったように。もし俺が手を離さなければ、お前は呆気なく真っ逆さま。そう してみんな失くしちまうの。
男の身体がガクガク震えた。右手で自分のペニスを扱いた。そうだ、破壊だ、これ以上なく手当たり次第に。何も残ら なくたって構わない。右手に生を左手に死を。このまま自分も壊しちまえ。あら、もうとっくに壊れてるかしら。どう だっていいさ。この手の中の熱だけは、今確かにここに、あるんだから。






「っん、あああぁぁ・・!」
ぐんぐん昇って、俺は何よりも透明になった。男の身体に欲望が散った。抜け殻みたいで、何も感じさせてはくれなかっ た。一度過ぎ去ってしまえば、後は濁っていくだけだ。ああ一気に壊したかったのに。
男が小刻みに震えだしたから、仕方なく手を離す。まだだ、待つんだ、もう少し。常備してあるセンズとやらを押し込 んだ。何故かこれを飲むと一瞬で復活するんだ。前に泣きながら頼まれたから、飲ませない訳にはいかなくなった。そ れに見てると面白い。ほら、青紫だった肌に赤みが差して、手品みたい。
「ちょ、おま、何回殺しかけたら気が済むんだよ!閻魔様まで見えた。マジ焦った」
「いいじゃないか。天国に行けただろ?」
「・・・・・俺はイッてないからもう一回。普通にな!絶対普通!絞殺オプションいらないから!」
「・・・分かった」
途端に身体を舐められた。見上げてくる目がもう欲望に滲んでる。なんて可愛い俺の子犬、愛してやろう、嫌になるほ ど。破壊に繋がれ、生死をさまようジェットコースター、他では味わえないスリルでしょう。もっと夢中になりなさい。 俺以外のものなんて捨てなさい。お前が俺だけのものになったら、その時にこそちゃんと優しく壊してやるの。
脳味噌がアルコール浸けにされたみたいに、ぞくぞく痺れた。思わず笑うと、男もにっこり笑い返した。じわじわ輪郭 が滲んでいく。粉々にされて破片になっても、お前はそうしてにっこり笑うのでしょう。素直な笑顔、弱く醜い地球人 の筈なのに。信じられない、まさかそれこそが何よりも強い破壊だなんて。

また日記に収まりきらなくなったのでこちらへ。首を絞める王子を書きたかっただけなのですが、 人選をミスった気がしないでもないです;;
だけどカカ相手だと、王子のものにならない代わりに 誰のものにもならないから、生死まで支配したいとは思わないんじゃないかしら。 それが包容の男ヤムチャなら、王子の過剰な支配欲まで笑って受け止めてくれるんじゃないかしら。ハァハァ!
それにしても久しぶりのヤムベジは難しかったです。中途半端なお話ですみません・・・orz