――ささやかな幸せ――






地球で出会って、即効で殺されて、生き返ったり一緒に暮らしたり変な奴に襲われたり、ダ メもとで告白したら嫌そうだったけどOKされちゃったり、とにかく色々あって、同じ時間を 過ごしてきて、俺もやっと少しずつベジータのことが分かってきた。
最初はビビることしかできなかったムチャクチャ不機嫌そうな眉間の皺は、実は照れ隠しだ ったり、感情を素直に出せないことへの苛立ちだったりするんだ。何でも器用にこなすよう に見えて、意外と細かな作業が苦手だったりもする。暑さ寒さにはすげぇ弱いし、結構寂し がりやだし。それからもう一つ。
戦闘のことしか考えてないように見えて読書が好きで、おまけに本を読むときはものすごく 集中するんだ。周囲への対応がおろそかになるくらい。






毎日昼飯を食った後、ベジータはよっぽどのことがない限り読書をする。だからその時間を 狙ってささやかな幸せを感じに行くのが、いつの間にか俺の習慣になってた。
今日もやっぱりベジータは、窓際の椅子にもたれながら、穏やかな顔で本を読んでる。戦っ てるときの触ったら切れてしまいそうな雰囲気はどこにもなくて、それだけで自分の顔が緩 んでいくのが分かった。
「・・・ベジータ?」
「・・・・・・んー?」
普段のベジータからは想像もできない間延びした声に、ますます顔がにやけていく。
こっち を振り返りもしないけど、多分誰に話しかけられてるのかも分かってないんだろうけど、俺 の顔を見た途端、苦虫を噛みつぶしたみたいな顔をされるよりはよっぽどマシだ。いくら素 直じゃないって分かってても、あの表情の破壊力は半端じゃないから。
「俺さ、お前のことすっげぇ好きだよ。愛してる。」
「・・・・・・うん。」
何を言われてるのかも分かってないとか、機械的に返事をしてるだけだとか、そんなことどう でもいい。ただベジータが俺の言葉に返事をしてくれることが嬉しいんだから。
それに、こうやって毎日ベジータの無意識に好きだって言い続けてたら、いつか本を読んで なくても、照れ隠し抜きで答えてくれるようになるかもしれないし。
「ベジータも俺のこと好き?」
「・・・・・・うん。」
嗚呼・・・・し・あ・わ・せ!決めた、明日ボイスレコーダー持ってこよう。






屈折してる?男らしくない?いやいや歪み上等!ヘタレ上等!宇宙一我が儘で素直じゃない くせに、宇宙一可愛い恋人と付きあうのは、並大抵の苦労じゃないんだから。






ちなみに、今まで規則正しくページをめくっていたベジータの指が、実はヤムチャが来てい るときにだけ止まっていることを彼が知り、更なる幸せを噛みしめる日は、やはりまだまだ 来そうにもありませんでした。人生何事も、ほどほどが一番ですものね。












――聖夜に願う――






気づけばその存在に、捕らわれていて。何度も思いを告げようと思ったけれど、それと同じ 数だけ口をつぐんで。だって俺は、弱いから。強さだけを求めるあいつに、それを見せるこ とも、一緒に育んでいくこともできないから。
だけど今日なら。今日だけは、何もかも捨て去って、正直に俺の気持ちを言える気がする。






今宵生まれ、十字架を背負って死んだ愛の人。
敬虔な信仰心なんて、持ちあわせちゃいない 俺だけど、今日だけでいい。俺に勇気を与えて下さい。






顔を叩いて気合いを入れて、最初の一歩を踏み出してみる。目的地は分かってるんだ。ただ がむしゃらに修行するあいつの気は、身体の芯まで響くから。
壊れそうな心臓も、カラカラに渇いた喉も、汗でベタベタする掌も、全部不安を増長するも のでしかないけれど、簡単に予想できる悪い結果にも目をつぶって、今はひたすら、お前に 会いに。思いを告げに。
金属質の扉を開けて、集中してこっちを見てくれないお前を見つめて、大きく息を吸って。
「ベジ・・・うっ!」






今宵生まれた、死してなお十字架を背負う愛の人。
奇跡なんて信じちゃいない俺だけど、今 日だけでいい。俺にあと少しの勇気と、400倍の重力に耐える体力を与えて下さい。

なんだか最近増えてきているヤムベジですv報われているようで、結局報われていないのに 幸せを感じるヤムチャ氏が好きです。恐らくベジヤムではないところが最大の ポイントでしょうね(笑)