――微睡み――
瞼がひどく思い。閉じた瞳にも降りそそぐ日差しのおかげで、もうとっくに夜が開けていることは分かっ てはいたのだけれど、今更この居心地のいい温もりと柔らかさから抜け出す気にもなれなくて、本 当に久しぶりに二度寝をすることに決めた。 ふわふわと夢遊する意識を起こすでもなく沈めるでもなく、ただぼんやりと怠惰な波に 身を任せる。夢と現の境がこんなにも気持ちのいいところだなんて、今まで知りもしな かった。けれど忌々しいことに、どこにいてもどんな時でも、俺の平安な日常の破壊者 は必ず現れるのだ。 「なぁベジータぁ。修行しようぜ、しゅぎょー。」 ふと空気を切るような音が聞こえて、大きな気を驚くほど近くに感じて、間伸びした声 が聞こえて、何が楽しいのか頬をつつかれる頃になっても、やっぱり瞼は軽くならなか った。 確かに修行は魅力的ではあるけれど、今頭の中にあるのは一分でも長く布団の中で丸ま っていることだけなのだ。今朝の自分は少し変だと我ながら思う。 「おーい、起きろよ。聞こえてんのはバレてんだぞ。」 服を引っ張られても、髪の毛を掻きまわされても、起きる気にはなれそうにもない。ま るで馬鹿な牛みたいに眠りに縋ろうとする自分に、何となく肉体的な衰えを感じそうに なる自分が嫌だ。 とにかく俺は、何があっても満足するまで寝続けてやると決めたのだ。今更、しかもこ の馬鹿が理由でこの心地いい二度寝を断念するわけにはいかなかった。 「あ!今眉毛ピクッてしたろ!なぁ、早く起きろよ。・・・・起きねぇんなら襲っちま うぞ。」 ふと、それもいいかもしれないと思ってわずかに頷く。 「えぇ!?マ、マジでいいんか?・・・怒んねぇの?」 予想した以上の反応が返ってきて、思わずかすかに笑ってしまう。おずおずと寄せられ たぬめった舌の感触を感じながら、やっと静かになった破壊者を前に、おれはようやく 本格的な眠りを貪り始めたのだった。 |
――like a sweet cock――
はい、と何の脈絡も無く差し出されたそれは、目にも鮮やかな黄色をしていて。「・・・何だ?」 「だからはいって。」 「・・・食うのか?俺が。」 こくりと頷く姿にどこか釈然としない思いを抱えながらも、特に断る理由も無いかと思い直 してそれを受け取る。 しかし、どこで拾ってきたんだという素朴な疑問の解決を待つ前に、 らんらんと異様なほど輝く双眸のおかげで、悟空の愚にもつかない計画は呆気なくベジータ の知れるところとなったのだった。 「なぁ、まだ食わねぇんか?」 全身を使って期待しているのだと伝えてくる悟空に思わず溜め息をこぼしながらも、暇つぶ しがてら付きあってやるか、とベジータにしては慈悲深い決定を下す。 「いちいち焦るな、馬鹿。」 にやりと浮かべた不適な笑みが、暇つぶしを開始する合図と化した。 ゆっくりと鮮やかな皮を剥ぎ、現れた雄身に赤い舌を滑らせる。途端に口腔に広がった甘っ たるい匂いに眉根が寄る。 しかしそれもますますベジータを煽り立てる要因にしかならず、確かな欲望を滲ませたいつ もは穏やかな黒瞳が見つめる光景は、やにわにねっとりとした湿度を伴った淫蕩なそれへと 変わっていった。 「・・・・ん・・・ふぁ・・・っ。」 意図せぬうちに、曖昧な声が鼻から抜けていく。ピチャピチャと音をたてて口内で弄ぶそれ から独特の青い臭いが漂ったような気がして、どこか甘えたような息がこぼれた。 わずかに目元を紅潮させながら果実を唾液で濡らしていくベジータの耳に、ふと男の喉を鳴 らす音が届く。雄身を頬張ったまま何気なく見上げた先の興奮をあらわにする男の姿に、 しかしベジータは己の熱が急速に冷めていくのを感じていた。 自分がとんでもなく愚かなことをしているような気になって、苛立ち紛れに含んでいた果実 の先端を勢いよく噛みちぎる。 「イテッ。」 何を考えているのか、悟空の口から漏れた小さな悲鳴に哀しき男の性を目の当たりにしてし まったベジータは、あっという間に下降した機嫌を直す術も思いつかぬまま、ひたすらに只 の食べ物と化してしまったバナナを咀嚼していくのだった。 |
――駄犬――
日に日に厳しくなっていく寒さを尻目に、穏やかな陽光が降りそそぐベジータの自室には、
一人の欲求不満気味の男を除けば、静かで安らかな時間が珍しくゆっくりと流れていた。一
定の速度でページをめくるベジータの眉間に、いつもくっきりと刻まれている皺も、今は静
かに鳴りをひそめている。常ならば穏やかなベジータの姿に幸せそうな微笑みを浮かべるカカロットではあったが、そ の状態をもたらしたのが己以外の何かであることが殊更厭わしいようで、部屋を訪れてから この方ずっと無視されていることへの不満も相乗して、どうにか相手をしてもらおうとちょ っかいをかけ続けていた。 「なぁ、いい加減読書なんか止めてこっち向けって。」 「・・・・・・。」 「オレならお前と修行することもできるし、お前を可愛がってやることもできるんだぜ?」 「・・・・・・。」 耳朶を食みながら低い声で囁いてみても、字面を追うことに夢中になっている恋人は、赤面 するどころかピクリとも反応してくれない。変わらず舌で形の良い耳を弄びながら内股に這 わせようとした片手は、柔らかな肌に触れた瞬間に叩き落とされてしまった。 それでも、今まで微動だにしてくれなかったしてくれなかったベジータの確かな反応が殊の 外嬉しくて、たちまち頬を緩ませた男の指が抵抗をかいくぐり脇腹や太腿を撫でていく。も う少しでベジータの我慢は限界を超える筈だという予想は、果たして1分も経たぬうちに 現実となったのだった。 大きな音をたてて、ベジータの興味を奪っていた忌々しい本が閉じられる。赤く潤みを帯び た唇から、長い溜め息が落とされる。 やっと振り向いてくれたつれない恋人の唇に、おあずけを解かれた犬さながらの素早さで、堪 えきれなかったカカロットはむしゃぶりついた。生暖かい舌をすすり、互いの唾液を絡ませ、 口腔から一つに融けていく。 「・・・・・ツ!」 逸る心そのままにベジータの身を包む邪魔な衣服を剥ぎ取ろうとしたカカロットは、しかし 強く舌を噛まれ、不機嫌そうに甘美な恋人の身体から離れざるを得なかった。 「馬鹿が。少しの間じっとしていることもできないのか?」 「悪いな。オレはしてぇことは我慢せずにしちまう人間なんだ。知ってるだろ?」 滲み出た血液がゆっくりと口内に広がっていく。 「フン。せめて貴様も何か読めばどうだ?」 「んなもんに興味ねぇよ。第一オレは字が読めねんだ。それよりまだ相手する気になんねぇの か?好きだろ、気持ちいいこと。」 全身を巡る血液までもが沸騰して、あちこちで解放を叫ぶ。 「生憎と盛った馬鹿の相手をする趣味は無いんでな。字が読めないのならこの俺様が読んで やろうか?」 「優雅な昼下がりでも過ごすつもりか?ま、構わねぇよ。さっきのそれでいいから読んでくれ。」 部屋の空気が薄れていく。興奮と萎靡の境界線上を、覚束ない足取りでフラフラと歩く。目 元に、頬に淫奔な本能を滲ませながら、鼻先が触れあうほどの距離で掠れた囁きを交わす。 簡単に辿り着いてしまっては、面白くないのだ。道のりはいつも、険しいものでなければ。 「心して聞けよ。何しろこの俺が読んでやるんだからな。『われわれは人生におけるアフォリ ズムとして、人間たちとの交渉なしに、彼らの悲しみや喜びに参画せずに生きている。われ われは生の騒音の』」 「邪魔して悪かった、反省してる。反省してるからちょっと待っててくれよ、な?」 一気に冷めてしまったような気さえ起こさせる室温に閉口しながら、すべてを言い終えぬう ちに姿を消し、1分と経たぬ間に再び現れたカカロットの左手には、何故か文庫本が収まっ ていた。妙に昂ぶっているらしい様子に首を傾げるベジータに、瞳を輝かせながらそれを差 し出す。 「何で貴様が本なんて持ってくるんだ。」 「悟天のを借りてきたんだよ。どこからでもいいから早く読んでくれ。」 男の背後に濃厚な期待がちらつけばちらつくほど、ベジータは混乱と疑心に囚われていく。 しかし好奇心を抑えることなどできず、適当に開いたページを読み始めたベジータの目には、 まもなく呆れた色が浮かんだのだった。 「『隆は指を乳房から臍へ、そして漆黒の恥毛に縁取られた下腹』・・・・貴様は阿呆か。」 「放っとかれすぎてアホになったんだよ。もっと酷くなる前に可愛がってやってくれ。」 この軽薄そうな笑みも、話題も、すべてベジータの口には出されぬ望みの通りあつらえたの だ。それでもまだ、この努力を認めてくれと願うことは許されないのだろうか。 「なら選ばせてやろう。このままこの低俗な読書を続けてやろうか?それともこの俺様が直々 に遊んでやろうか?」 「選ぶまでもねぇさ。快楽は徹底的に追う主義なんだ。」 「ほう、奇遇だな。俺も同じだ。」 切望していた唇が近づく。柔らかな口腔を荒々しく陵辱しかけた飢えた男の願いは、しかし 眼前を遮る白い手に寸前で成就を阻まれたのだった。 「焦る必要は無い。簡単に捕まってしまっては面白くないだろう?」 鼻先でにやりと笑うベジータの姿に、まだまだ己は翻弄される運命にあるらしいと、カカロットは 諦め混じりに小さな息を吐いた。 |
――搾取する自己愛――
毎年ブルマが開くクリスマスパーティーは、やはり例年の如く深夜に至っても尚にぎやかさ
を失ってはいなかった。むしろ夜が更けるほどに、いささか理性を欠いた宴はその暴力的な
精彩を増していく。常ならば輪の中で一際大きな笑い声を発しているカカロットは、しかし 死にかけた照明に頼りなく照らされた狭いトイレで、湿った音をたてながらベジータの赤く 色づいた秘所を解していた。 硬い指を蠕動する襞の中で蠢かせ、その隙間を縫うように舌を挿しこむ。わずかに力を入れ るだけで面白いほど反応する腸壁が、今すぐにでも怒張した肉棒を突きたててほしいと先程 から必死に訴えていることは勿論知っていたが、すぐ近くで騒いでいる知人や家族たちを気 にして懸命に唇を噛みしめるベジータの姿に、かすかな理性の残骸を見出せるのが殊更不満 で、今のカカロットにはその淫奔な望みに応えてやるつもりなど更々無かった。 「ふ、いっ・・・・くっ・・ア!」 言葉をかけてやることも、だらしなく濁った雫をこぼすペニスを撫でてやることもせず、た だひたすら前立腺ばかりを刺激する。容赦も遠慮も、ましてや理性など無用の長物に過ぎな いのだ。 ベジータが嬌声を抑える度、煮えたぎる身体に反して思考が明瞭になっていく。 何もかも捨て去って、快楽だけを追う自己愛にも似た傲慢な肉欲のみが、この非生産的衝動 の唯一にして絶対的な理由ではなかったか。お互いの声を聞き、姿を見ただけで、否、想起 しただけで沸きあがる稚拙な劣情のみを、甘受すべきではなかったか。ベジータが大 切そうに抱えているくだらない矜持や日常など、跡形も無く握りつぶしてやる。 ふと憎悪すら抱く男に肛門をしゃぶられながら、まったく無機質な便器に縋る元王子の心境 を夢想しかけて止めた。彼が何を思っていようとも、カカロットの前にはただ己を求める襞 の動きだけが真実なのだ。 無駄なことをしてしまった羞恥と苛立ちに急かされたように、前 立腺を引っかく指を一つ増やす。 「んぁっ・・カ、カロット・・・も、いれて・・くれっ。」 そうだ。この場で交わされる言葉は、ベジータがカカロットを求めるそれだけでなくてはな らないのだ。虚飾に満ちた愛の言葉など、肉欲を劣化させるしか能のない馬鹿げた遊具でし かない。ぽっかりと口を開き、ひたすらカカロットのペニスを待ちわびる後孔にそれを突き 進める。 ベジータとの性交でしか得られぬ魂の震えるような一体感、圧倒的な包容。それらに酔いし れていたカカロットは、突如ベジータの瞳から流れ落ちた涙を、ただ不思議そうに眺めること しかしなかった。 |
――崖っぷち――
ベッドから落っこちて目が覚めた。朝食のスープで舌をやけどした。なんだか今日はツイて
ない。凍った水たまりで転んだ。拳にキレがなかった。おまけに集中だって続かない。少し沈んだ 考えに、溜め息を一つ。 いつもなら10個は軽く食べられる肉まんも、8個しか腹に入らない。寒くて少し背筋が震え る。もしかしてこれが噂の、風邪とかいうやつだろうか。 何をしていても楽しくなくて、何かが少しずれている気がして。そのズレに引きずりこまれ そうで、気持ちがどんどん沈んでいく。もう何度目か分からなくなった溜め息をまた、二つ 三つ。 息を吸うたびに、胸の中にもやもやが溜まっていく。だけど息をしないでいることなんてで きなくて。代わりに何をすればいいのかも分からなくて。食べることも、修行もつまらなく なってしまったら、自分にはもう何も残っちゃいないじゃないか。 突然頭に浮かんだのは、最近会えていなかった恋しい人。会いたいなぁなんていう今日一番 の溜め息と一緒に、いつの間にか胸のもやもやが全部吐き出されていた。 どうして今まで気づかなかったんだろう。何も残っちゃいないなんて、言うもんじゃない。 一番奥にあったじゃないか。一番大きくて、大切なものが。 きっと彼は、今日も無愛想な顔で、自分を超えるために修行している筈だ。邪魔をしても、 今日だけは怒らないでほしい。だって今日はツイてなくて、集中もできなくて、おまけに初 めて風邪を引いた日なんだから。 もしかすると、察しのいい彼のことだから、全部悟ってなんだか変な今日の自分に、いつも 以上に怖い顔で、ぶっきらぼうな優しさをくれるのかもしれない。 きっと何もかも大丈夫だ。 だって彼を思っただけで、胸のもやもやはたちまち消えてしまったんだから。 ああ、彼に会えるまで、あと1秒。 |
――100分の1――
素っ裸で同じ布団に寝転がったベジータの、赤い耳にキスして一回。「好きだ、ベジータ。」 「・・・・っ。」 白い首にもキスして一回。 「すっげぇ好き。」 「・・・・・。」 オラよりちっこい身体に廻した腕に、ギュって力を入れながらもう一回。 「ムチャクチャ好き。」 「・・・・・・う。」 ついでにまっすぐな背中にもキスして一回。 「死んじまうくれぇ好き。」 「うるさいぞ貴様!!何で何回も言う必要があるんだ!」 だってベジータの「好き」は、オラの「好き」の100回分だから。 珍しいベジータの「好き」は、さっき貰っちまったばっかだから。 おめぇからの「好き」がほしくて、オラとにかく努力すんだ。 あと96回。目標は明日の朝。 「好きだ、ベジータ。」 「・・・黙れ。」 |
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中途半端に痛かったり甘かったり、自分のSSSの不安定さに改めて自分が心配に
なりました(死)ところで今月は長い放置期間から復活した月だったせいか、結構数が
ある方ですね。まぁ良しとしておきます!;; |