確かにこんな事は日常的で、日常的だからいつもある事だけど。 だからって、だからってこんなの買って来なくても良いじゃん!! と、その時ベジータは本気でそう思った。 ――親の愛と子の心情。―― 「何で母上って、こんなのばっか買ってくるんだろ…」 こんなの、と引っ張った服は黄色いタオル地で襟元には大きなフード、 その先にはご丁寧に先の尖った耳とギザギザのシッポが付いていた所謂“着ぐるみ”というヤツで。 それを見ながら、 「良いんじゃないのか?普通だと思うけどな」 「これが普通なら俺はジガイしてやる」 何て云い合っている王子とその側近は、 王妃であるアピスの着せ替え人形と化していたベジータが逃げて来た為、ラディッツの部屋に居た。 曰く、「こんなさびれた所に居るなんて思わないだろ」との事。 寂れたと云うよりは物が無くて殺風景なだけだが、それにはあえて突っ込まない。 兎も角ラディッツの部屋に転がり込んだベジータは、 今はベッドの上にちょこんと座って自身が身に纏っている衣服…もとい着ぐるみに文句を云っている。 「そもそもこれ、動きにくい」 だぼだぼの袖からは指しか出ていないし、裾だって半ば引き摺っているようなもので。 要するに合っていないのだ、サイズが。 だから見た目はとても可愛らしい…もとい、とてもお子様らしいのだが、 大きいのが気に喰わない様でさっきからバタバタと袖を振っている。 その仕草が可愛らしさやお子様らしさに拍車を掛けていたりする訳だが、 そんなものは本人の知った事では無いので、ちょっと不機嫌に頬を膨らませていたりした。 「そんなにむくれるなって」 「むくれてなんかない」 「じゃ、拗ねてんのか?」 「すねてないっ」 ふくれっつらでぷい、とそっぽを向く。 拗ねている。 誰が見ようが、明らかに。 一つ溜め息を吐きながら、 「それを“拗ねてる”って云うんだよ」 苦笑するようにそう云って、頭にぽん、と手を乗せた。 「っ、なにっ」 「拗ねてるお子様にはこうしてやるのが一番効くからな」 「だからすねてないってっ」 ゆっくり頭を撫でて、ぽんぽんと二回叩く。 強くでは無く、宥めるように、そっと。 最初はムッとしていた表情も和らいで、 暫し経たない内にうとうとし始めたベジータを見て、 やっぱりお子様にはこれが一番だな、とか、一人ごちた。 :::::::::: さてさて実は、この一部始終をたっぷりきっちりはっきり目撃している人物が居たりした。 「な、な、な、な、」 宮殿に関わる警護や上級職の者は皆宮殿内部に住まう仕来たりになっている。 彼等の部屋はそれぞれ王を囲む様な配置――つまりは謁見の間を中心として円状に居住区が広がっている――になっており、 上級では無いにしろ王子の側近と云う大役を担っているラディッツも例外ではなく、その居住区の一部に住んでいる。 で、部屋がそんな配置になっているのだから勿論窓は有る。と云うか、景観を損ねないよう窓は大きい。 窓が大きいと云う事は、高さが合えば部屋の中は丸見え、と云う事になる。 丸見えと云う事はつまり、その気になれば覗きに行く事も可能、と云う事になるわけで。 何が云いたいか、と云うと、 「あの子ったら、あんな処で何やってるの!!」 「ワシですら頭など撫でた事無いと云うにッ!!」 ベジータの目論見など筒抜けで、 尚且つ寒空の下ベストポジションで二人の様子を見守って(?)いる両親の姿があった。 「居なくなったと思ったらあんな男の処に行って…」 「しかも仲良さげじゃ」 「私達の前では笑ってくれる事すら少ないと云うのに…」 「笑う処かコロコロ表情を変えて居ったぞ」 暫し沈黙、風が吹く。 「…ムカツクわね」 「ムカツクのう」 くるりと方向転換して、二人同時に歩き出す。 向かった先は云うまで無い事なので表記はしないが…。 合掌。 |
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