確かに眼前に広がる光景に、カカロットは静かに息を呑んだ。自分ではない誰かに組み敷か れ、自分ではない誰かに愛を告げるベジータの姿が、今までに感じたことがないほどの衝撃 を伴って網膜を締めつける。堅く閉じていた目を見開いたカカロットは、珍しく眉間に深く 皺を刻み、細かく震える手で額を覆った。 「カカロッ・・・!?ぅぐっ。」 「黙れよ。」 首をギリギリと絞めながら、狂ったようにベジータの赤い唇を貪り食う。怒りとも焦りとも、 怯えとも言える感情がわらわらと押し寄せて、視界が赤く点滅する。他の誰かに睦言を囁く 舌になど、存在する価値は無いのだ。そんなもの、木端微塵に砕いてやる。 訳も分からぬ激情を抱えたまま、引き抜いてしまえるほどの力でにゅるにゅると滑る舌根を すする。吸気を失ったベジータの身体が、ピクピクと弱々しい痙攣を繰り返すころになって、 カカロットはようやく彼の気道を解放した。ゲホゲホとむせるベジータの首筋に浮かぶ己の 手の痕を、忌々しい思いで睨みつける。未だ足りぬのだ、この程度では。 「・・・・クッ!」 大袈裟なほど揺れるベジータの身体を無理矢理押さえ、肩に、胸に、脇腹に、陰茎に、つま 先に、全身余すところなく齧りついていく。幾つもの小さな傷を与えながら、歯列を押し返 す肉の弾力に、絶えることなく響くいつもより速い鼓動に、軽やかな興奮を覚えた。 痛みにピクリと跳ねる身体も、深く刻まれた眉間の皺も、苦しげに絞り出される掠れた声も、 今このベジータを作り出しているのは、すべて己の与える痛みなのだ。感じうる限りの痛み と、受け止めきれぬほどの苦しさで、ベジータを染めきってしまえればよかった。 白い内腿の噛み痕から滲む血液を見つめ、カカロットはやっとわずかばかりの安堵を手にし た。これで誰がつけたのかも分からぬ曖昧な鬱血などよりも、遥かに確実な自分の気配をベ ジータの身体に残すことができたのだ。 そして全身に刻みこんだ傷と共に、この胸に巣食う 獣じみた恋情をベジータは確かに感じ取った筈だ。自分以外の誰かを見つめることなど、ま してや誰かの愛を受けとめることなど、たとえ死が訪れようとも許してやる気にはなれなか った。 「・・お前はオレだけのもんだ。誰かにやるくらいなら、殺してやる。」 「カ、カロ・・ツ!」 痛みに萎縮していたペニスの歯形に爪を立てる。目を見開き背を軋ませるベジータの耳門を 舌で辿る。 「余計なことは言うな。・・・返事は?」 ギリギリと睨みつけてくる双眸には、何故自分がこのような仕打ちを受けなければならない のか理解できない、とでも言いたげな怒りがはっきりと浮かんでいる。喉元まで迫り上がっ ていた苦々しい鬱情が、知らぬ間に枯れた笑いと化していた。 飽くまでもベジータが抵抗するのならば、カカロットはただそれを一刀に伏すのみだ。何も かも壊して、互いの存在しか感じられなくなってしまえばいいのだから。無我夢中で破滅へ と向かう怨念にも似た妄執は、いっそ笑ってしまえるほど美しく見えた。 おざなりに解した後孔に、屹立した男根を半ば押し込むように突き入れる。例えそれが痛み であろうと快楽であろうと、ベジータに逃げ道を与えてやれるほどカカロットは寛大にはな れなかった。 己が与える痛みと快楽の狭間で、ベジータの身体がキリキリと舞う。もっと苦しめばいい。 もっと苛まれればいい。血と精液に紡がれた歪な螺旋模様に取り込まれ、我を失い、なす術 もなくひたすら駆けずり回ればいい。そうして、行くべきところも帰るべきところも失くし てしまったベジータになら、きっと驚くほど優しくしてやれる。 「んぁっ・・・・く、ぅ・・ハッ。」 眼前でゆらゆらと揺れる白い肩口に浮かぶ歯形に、耐えきれずカカロットは再び唇を寄せた。 少しずつ皮膚を裂き、肉を断ち、溢れ出てきた血液を啜る。ベジータの肉体を巡ったものを、 ベジータの身体の一部を、自身の中に吸収してしまえることが、何よりも嬉しかった。 腰骨の辺りがざわめいたかと思うと、ベジータの腸壁を擦る陰茎がどくりと脈打ち硬さを増 す。横溢する熱に小さな背がかすかな悲鳴をあげながら撓んでも、傷口から顔を上げること はできなかった。 もしこの皮膚を、肉を、内臓を、残すところなくすべて食べきっていられたのなら、あんな ことは起こらなかったに違いない。お互いのすべてを知りたいだとか、すべてを知っていて ほしいだとか、そんな御伽噺のような願いごとを口にするつもりなんてありはしないのだか ら、せめてただ只管ベジータへと向かうこの醜い独占欲だけは分かってほしい。 「ベジータ・・ベジータッ・・・・好きだ、誰にも、渡したくねぇ!」 「んあぁっ・・・・カカロ・・ト、カカロットぉっ。」 掠れた息しか吐き出せなくなった唇を必死に動かしながら、最奥を目指して腰を打ちつけて みたところで、得られるのは陳腐な快感とほんの刹那の充足感だけでしかない。そんなこと くらいもう十分すぎるほど理解していたのに、それでも性交に頼らざるを得ない自分の弱さ に、カカロットはただ堅く目を閉じた。 己の男根がビクリと震える。ベジータの柔らかな肉襞が収縮する。視界がわずかに白みを帯 びて、思考に生温かい靄がかかる。未だ何も解放されてはいないのに、数瞬後には欲望だけ が放出され、我が物顔でベジータの体内を泳ぐのだ。必死に身体を動かして、愛を訴えて、 その結果伝わるのはどろりとした精液の熱さだけなのだ。 「あ、あ、あ、いくっ・・・ぅ、ん、ああぁぁあ!」 「・・ベジータ・・・っ!」 理不尽な怒りだという自覚を抱きながらも、未練がましく体液を舐め取っていた傷口を思い きり噛みつぶし、破裂しかかった陰茎を後孔から引き抜く。鬱陶しいほど粘りつくそれを視 界いっぱいにぶちまけ、ベジータの身体を白く染める。口元に飛び散った精液を掬い取るベ ジータの舌が驚くほど紅く艶めいていたことが、何故か妙に嬉しかった。 しんと静まり返った部屋には、精液の青臭さだけがもたもたと居座り続けていた。だらだら と流れてくる汗を拭うこともできず、居心地の悪さに身じろぐ音ばかりが増える。 せめてベジータの肩の傷に止血を施そうと傍らのティッシュに手を伸ばしかける度に、ぎろ りと睨みつけられ動きを止めるということを、先程からカカロットは飽きずに繰り返してい た。 「・・・・・・ハァ。」 「ベ、ベジータ・・・?え、えっと、ゴメン・・なさい。」 全身に刻まれた傷跡も、そこでじくじくと固まりつつある血液も、事が済んだ後で改めて見 てみれば、何故こんな酷いことができたのだろうか、という疑問ばかりが浮かんでいくのみ だ。それでも馬鹿正直に何でだろうな、などと聞ける筈もないカカロットには、いつの間に か正座していた脚をこれ以上無いほどきっちりと整え、静かにベジータの裁きを待つ道しか 残されてはいなかった。 「・・・・・で?」 「え?で、って・・・。」 「だから、何で俺がこんな事をされなきゃならんのかって聞いてるんだろうが!」 「だ、だってオレのベジータがどっかの男にヤられてたんだもんよ・・・・夢の中で。」 「ほぉ。つまり俺は貴様のくだらん夢なんぞのお蔭でこんな状態にされた訳だ。」 「・・・・・・。」 「一週間セックス禁止。」 「えぇ!?た、頼む。それだけは勘弁してくれ!」 「・・・・・。」 「じゃ、じゃぁせめてフェラだけでも許してっ。」 「・・・二週間禁止。」 「あ、あんまりだぜ、ベジータ・・・っ!」 わんわんと声をあげて自らの招いた不幸を嘆くカカロットが、最も手っ取り早い治療法であ る仙豆のことを思い出すには、まだもう少しの時間が必要となるようだった。 |
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shooting starのまめ様より、確か四度目のキリバン申告、二度目のキリリクを
いただきました!いつもありがとうございますvそして遅くなった上に短くて本当に
すみません!!リクエストは「嫉妬カカベジ」でした。 |