目を覚ますと、そこには見慣れた自室とは程遠い光景が広がっていた。 頭が重い。目眩がする。喉が痛みを感じるほど渇いている。何故か開きっぱなしだった口を 閉じようとして、球状の何かを噛まされていたことに気づいた。通気孔のおかげで呼吸は できるが、垂れ流れた唾液がひどく気持ち悪い。 肌に貼りついた不快感を一刻も早く拭おうと して、今度はわずかに痺れている腕がまったく動かないことに気づいた。脚も同じように強固な 鎖か何かで縛られていて、衣服も奪われているらしい。 ぼやけていた感覚が、ようやく身体の末端まで働きだす。けれど俺に分かったのは、あちこちで 控えめに主張しているマークがカプセルコーポレーションのものであることと、ここが地球から 離れたどこかの惑星であることだけだった。遥か遠くでトランクスや悟天の気が動いてはいる ものの、まだ事態には気づいていないらしい。 人の恨みを買うようなことは星の数ほどしてきたが、いくら寝ていたとは言え俺を殴って拉致 できるほどの生物となると、心当たりは皆無に等しい。唯一自由の利く首を動かして何気なく 自分の身体を見回して、俺は途端に呼吸の仕方を忘れた。 この異常事態を遥かにしのぐ現実を脳が 拒む。思考が、意識が静かに崩壊していく。確かに聞こえていた筈の雨音が、見えていた筈の 白いシーツが、一切の現実が薄れていく。 そこには、そこには確かにあったペニスが、わずかニ、三センチの肉片を残してすっかり失く なっていた。気弾にちぎりとられたらしい肉の断面は焦げついて、醜く歪んでいる。到底受け 入れられない事態に恐怖を感じる余裕もなかった。ガタガタと震える指先は空を切るばかりで、 「よう。やっと起きたか。」 突然鼓膜を震わせた、およそこの場にそぐわない暢気な声に恐る恐る振り向けば、驚くほど 近くに見慣れた男が立っていた。急速に現実が色を取り戻す。ふと見渡すと、確かに部屋の 扉は開いていた。入ってきていたのか―――いつの間に。 「んっ!・・・・。」 声を出そうとして、妙な物が口の中にあることを思い出した。それでも俺が何を言いたがって いるのかに気づいたらしいカカロットが、器用に片眉を上げる。何だ、何かがおかしい。 「ここがどこかは俺にも分かんねぇよ。適当に生き物の気を探ってきただけだからな。」 そうだ。カカロットは何故自由なんだ。にもかかわらず何故何もしない。それに敵は――― 「何故何故って全部俺に答えさせるつもりか?もうお前はみんな分かってるじゃねぇか。」 敵は、こいつか。 みんなどころか、俺にはこの狂態の一端すら理解することはできなかった。否、何を理解でき なくとも構いはしない。ただ目的は、目的だけは知らなければならないのだ。しかし声に表せな い意志をいくら無言で訴えようと、先程テレパシーかと疑うような芸当を見せたこの男には、 それに応えるつもりなどさらさらないらしかった。 「ほら、仕上げだ。」 口角を上げたカカロットが近づいてくる。何をするつもりなのか、唯一自由を与えられていた首 を絞められる。無抵抗でいることなどできる筈もなかったが、四肢を縛られた身体は思うように は動かず、結局曖昧なそれはカカロットに妙なやる気を起こさせただけに終わった。 「・・かはっ!」 「じっとしてろって。やっとオレだけのもんになんだからな。よく見てろよ。」 「・・・・・ん!」 喉を掴む手にまた力がこもった。拘束された肩の関節が、重みにミシミシと不愉快な音をたて る。思わず顔をしかめると、突然左胸に熱を感じた。針のように細められた気が左側の乳首 を貫いて、きらきらと銀色に光る小さなリングがゆっくりとはめられて―――さらさらと静かに鈴が 鳴った。嗚呼、ここは・・・・・・此処はどこだ。 全身を貫いた電流のような衝撃に突如我に返った。見れば胸にはめられた輪をカカロット が引っ張っている。さらさらと鳴る鈴の音と痛みに、硬直していた身体がわずかばかりの自由を 取り戻す。そうだ、例えすべてが崩壊の一途を辿ろうとも、俺だけは確固とした意識を持って いなければいけないのだ。 カカロットも馬鹿ではない。この狂態にも必ず何か目的がある筈だ。頭の隅でおぼろげにちらつ いている、虚無感だけをもたらすのだろう答えを必死に振り払いながら、それでも俺は二度と 思考を放棄することなどできなかった。 この前カカロットに会ったのは、確か三日前だ。あの時こいつは妙に焦っていて、それから――― 「んんっ!」 突然右胸に触れた湿った感触に、思わず目を見開いた。思考の隙間にどろどろと濁った快感 が分け入ってくる。欲情とは程遠い意識の中で、それでも俺の身体だけは素直にその快感を 受け入れようとしているらしい。何故かこれ以上嬉しそうなカカロットの目を見ていることに耐え られず、仕方なくすべてを遮断するように瞼を閉じた。 それから、やけに急いたセックスをしたカカロットが、珍しく喉の奥から絞りだすような声を出し て。 「んっ・・く・・・・ふぁ。」 ぐちゃぐちゃと一向にまとまらない時系列が嘲笑う。カカロットの体温と愛撫に驚くほど簡単に 流されていく意識を、けれど今だけは確守しなければならなかった。 「もう耐えれそうにねぇんだ。お前をオレだけのもんにしてぇ。おかしいか、こんなの?」 白く濁った景色の中で、かすれたカカロットの声に、あの時俺は何と答えた?・・・・俺は。 「・・・・ツ!」 胸のリングを強く引っ張られて、思わずシーツに爪を立てる。じわりと滲んだ血が銀色の輪を、 さらさらと鳴る鈴を、ゆっくりと赤く染めていく。唇の端からこぼれ続けている唾液を、カカロットが ぬるりと舐め取った。 「・・貴様がおかしいのなら、俺だって十分おかしい。」 そう言った俺に、カカロットは安堵したように微笑んで。ならば、ならばこの狂態は。この不自然 な身体は。 「んんんぅ!・・・・・っく、ぁ。」 ついに快楽に呑まれてしまった思考が、ぼろぼろとどこかへこぼれていく。後孔に指を突きたて られて、背中が反り返る。吐精さえできない身体は、それでも頂点に達したらしい。場違いに 甘く唇を重ねられながら、熱いペニスが押し入ってくるのを感じる。 内臓を抉られる不快感も、背骨を駆け上がる愉悦も、すべてがいつもと変わらないのに、 どこかに置き去りにされたような幼い恐怖と空虚感が、あちこちで顔を覗かせている。喜色を貼り つけたカカロットの焦燥がじわじわと押し寄せてきて、何もかも失くなってしまった筈の胸中を 無意味に掻き乱した。 「ふぅぅ・・・・ん・・・ァッ。」 「ベジータ、ベジータ・・・ッ。」 それ以外の言葉を忘れてしまったように、俺の名前ばかりを呼び続けるカカロットのかすれた声 と、腸壁を擦るペニスのぬめった熱だけが切り取ったように生々しい。縛られた腕をこの男の背 に廻せないことが、妙に虚しかった。恐らくこの鎖が解かれることは、もう無い。 「んん!・・・・く、ハッ。」 ふいにちぎりとられたペニスの残骸を撫でられて、あまりの痛みに目を見開いた。突き刺さるよ うな痛感と、遠慮の無い快楽と意味の無い虚しさとが、ぐちゃぐちゃになって雪崩れこんでくる。 暗く濁った景色の中で、カカロットがどこか哀しそうに微笑んだ。 「お前はもうオレだけのもんだろ?ならあんなもん、もうお前にはいらねぇよな?」 やはりこの狂態も、不自然な身体も、カカロットの正常な独占欲に端を発していただけだった。 ならば、ならばあの時、白く濁った景色の中で、俺はカカロットを糾弾していればよかったのだ ろうか。胸に巣食う空虚感に目をつぶり、その欲望の異常性をあげつらってさえいれば。 それができなかった俺は、けれど哀しそうに笑うカカロットの問いに答えることもできなかった。 抽挿を繰り返していたペニスが腸壁の奥深くで白く弾ける。醜く歪んだ肉片からわずかに流れ でた粘着質の液体が、ひどく不愉快な感触を残してゆっくりとシーツの谷間に落ちていった。 |
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大変お世話になっておりますアダン様より、リクエストは「カカベジでボールギャグ」でした。
ボールギャグとは、王子の口の中にあるブツのことです。リクエストを伺うのも、お渡しするのも
とても遅れてしまってすみませんでした!!コンセプトは狂ったカカと、狂った方が楽だと
知っていながら狂えない王子だったのですが、分かりにくいですね・・・すみません。
何はともあれこんなSSをお受け取り下さって、本当にありがとうございました!! |