ブン太の死体は、横たわったまま私を見てる。
私は彼のポケットにあったタバコを銜えて一息した。
しゃがみ込んでブン太を見下ろす私の足首に蟻が這う。
ここは虫が多い。他の場所に移したほうがいいのだろうか。
ブン太の白目はあまり綺麗なものじゃなかった。というより、ブン太は
あまり美しいとは言えない男だった。だけれども、誰よりも可憐で、
いじらしい少年だったように思う。そのブン太の低い鼻はもうすんとも言わない。
自分の指を見たら、昨日塗った赤いマニキュアがもう剥がれていた。
爪の間にブン太の皮膚が残っている。私はブン太の口から流れ出る血を
頂いて、剥げた爪に塗った。ブン太は動かない。
お別れの時間なのだろうか。私たちは15歳ですが、ちっとも早いとは思わない。
だって運命は全部決まってると思えば、全てにおいて早いも遅いもないじゃないの。
だから私が死んでも運命なのですよ。ブン太待って、やはり私も行くことに決めたから。
ブン太の死体は、横たわったまま私を見てる。
ドリーミングコープス
(2008/05/16)