紫色のマニキュアを塗った。女の子ならピンクが良いわとママは言っていた。 遠い昔パパは泡沫になった。 万丈目は私の足を舐めてくれる唯一の存在。指一本ずつ、小さな口でおしゃぶりみ たいに咥えてくれる。私はそれをされると喜ぶふりをするが、本当は不愉快で仕方がない。 だから始終目を瞑って、十代の顔を思い浮かべてた。そうすると私は幸福になっ た。万丈目も私の足を舐めれて幸福、両者平等って訳。 ある日、万丈目は欲を出した。裸の自分を踏んで欲しいと言った。私は素 直に応じた。夜遅くに万丈目の部屋で全裸の万丈目を踏んづけた。尻を蹴ったり 性器を詰った。罵声を浴びせると彼は唾液を垂らして幸福そうに絶頂した。 万丈目の性器から飛び出すスペルマが私の足にかかった。果てた万丈目はそれを舐 めようとはしなかった。事後の万丈目はいつも憂鬱そうにしてる。誰にも言わな いでくれと言う。もちろん私は誰にも言わない。言う相手がいなかった。

「もうすぐクリスマスだな。何か欲しいものがあるか?何でも買ってあげるよ」
「新しいマニキュアが欲しい」
「わかった、すぐ取り寄せるよ。イヴまでには届くと思う」

ねえ知ってる?サンタクロースは死んだのよ、十代。十代、あなたの隣りの女の 子、私嫌いよ。私ととっても似ていて、嫌いなのよ。その子、爪になんにも塗って無 いじゃない。十代、シンナーの匂いが好きなのに。

私なにもしたくないのに。十代が無理矢理私を動かす。使いたくない頭使ってしまう。 私へのあてつけでしょ、わかるわ。でももうこんなの、無駄遣いでしかない。 去年のクリスマス、君は紫のマニキュアくれた。キャンディーみたいな色してる。 君は紫なんて好きじゃないのにね。私は紫の女。君が私に似合う色だと言ってく れたから、それからはずっと紫の女。

生理期間は情緒不安定だのにクリスマスとかぶった。憂鬱すぎる、まるでイった 後の万丈目みたい。万丈目がプレゼントをくれた。オベリスク寮近くのツリーの 下で、赤いマニキュアくれた。私は死にたくなった。というかもう随分昔っから 死にたかった。十代が私のそっくりさんと並んで歩いてるの、彼女の指にはチー プな指輪、指先はエナメルで真っ赤だったのよ。

十代の笑顔って純。百合のようにたおやかで、汚れすら覚えない。 彼の愛は罪なき残虐、君が光なら私は影だ。 少年の残酷を振りかざして私を欺いた、ねえ十代、死にたいの。 私の頭撫でなさいよ、足を舐めなさい。跪いてよ私の前で。

ねえ十代、君と同じ子宮から造り出されてたら君みたいになれただろうか。もう だめだろうか。私は違うのだろうか。ねえ十代、君と同じ精子から造り出されて たら君みたいになれたかな。私今男の子に足舐められてるよ。気持ち悪いでしょ?

その晩私は初めて万丈目の性器と交わることを許した。なにが聖なる夜だ馬鹿ら しいこれでは性なる夜である。

今頃十代はそっくりさんと眠っているのだろう。私は紫色の上から赤いマニキュアを 塗った。

ジブリール
(2009/02/06)