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司9.5 (1)

◆aPPPu8oul.氏

「司、学校どうだ? 」
口下手な父がそう言うのには、それなりの勇気が必要だっただろう。
「ん? 別に…楽しいよ。問題なく過ごしてます」
食後のお茶をすすりながら、そう答える。
楽しいのは事実だし、数名に事実がばれていることをのぞけば問題なく過ごしている。
「うん、そうか。ならいいんだ。よく考えたらもう高校生活も半分だもんな」
「うん。だから俺のことは心配しなくていーよ」
久々の父との夕食で機嫌のいい司は、穏やかな笑みを浮べている。
「司。家で"俺"はやめなさい」
一方母は少し険しい顔つきで司を咎める。
「はいはい。いーじゃん、学校で"あたし"って言い間違えるよりは…心配しなくても約束は守るよ」
お茶を飲み干した司は席を立って、母の小言を背にリビングを出る。
取り残された父が小言を聞かされるのは目に見えているが、これも久々の夫婦水入らずになるだろう。
自室のベッドに寝転がった司は、ふと両親との約束を思い出して頭を抱える。
男装して高校に通うことを許す代わりに、四年制の大学に進学すること。ストレートで卒業して就職すること。
その他保険医の叔母の勧めでピルの常用を義務付けられたり、その他の細かな約束もした。
ただ高校二年の後半になって、進学の二文字が少し重く感じられるようになったのは事実だ。
司より少し勉強の出来る兄は地方の国立大に通っているが、彼もそれなりに勉強していた。
―お兄ちゃん、この時期勉強してたっけ…?
うーん、と唸っていると、枕元に放り投げておいた携帯がなる。タイミングよく兄からだ
「珍しい…もしもしお兄ちゃん? 」
『司、お前学校の先生と付き合ってるってほんとか!? 』
ぶは、と思わず噴出す。離れて暮らしている兄が知るはずのない事実だ。
「な、なんでそれを…」
言いながら、ひょっとしたら、と思う。
『春樹に聞いた。本当なんだな? 』
やはり春樹からか、と司は肩を落とす。従兄弟の春樹と兄は同い年で、仲がいい。
「…うん」
『おやじとお袋は知らない…よな? 』
「…うん」
兄の焦った声が少し胸に痛い。他人に言われるとカチンと来ることも、家族に言われると少し心持が違う。
お兄ちゃんごめん、と内心しおらしく頭を垂れていた司に、兄はとんでも発言をかましてくれる。
『よし。その先生に会わせろっつーか、会う。今週末帰るからな』
「はぁ!? ちょ、ちょっと待ってよ! 何それ!」
思わず大声を出した司は口を覆う。体を起こして、慌てて部屋の鍵を閉める。親に聞かれると厄介だ。
『何って、親に会わせられないなら俺が会う。ただでさえお前はやっかいな属性持ちなのに先生とだぞ!? 』
属性持ち、とか言っちゃう司の兄は隠れヲタだ。
軽くガノタの気がある隆也とは気が合うかもしれないが、そういう問題でもない。
「そ、そー…だけど、だからっていきなり…」
『俺にも会わせられないような男じゃないんだろ? とにかく! 今週末会いに行くからな! 』
一方的に言い切って通話を終了させた兄の思考は理解できない。
ややシスコン気味なのは嬉しいのだが、このぶっとんだ、というか痛い行動はどうしたものか。
ベッドにうつ伏せになっていた司は、ぼすりと顔まで伏せる。
「…どーしよ…」
どーしよ、とくぐもった声で言ったってどうしようもない。
いきなり言い出すような兄だから、きっと止めても聞かないだろう。うっかり両親に漏らされると色々キツイ。
「…う〜〜〜…」
唸ってもごろごろしてもどうしようもなく、意を決して司は携帯をいじる。
カチカチとメールを打って返信を待つと、通話の着信音が鳴る。
まだ慣れない隆也からの着信音が、今日は特に心臓に悪い。はー、と深呼吸して通話ボタンを押す。
「もしもし…」
『もしもし。どうした、こんな時間に…』
司が隆也に連絡を取るのは、遊びに行っていいかとか忘れ物をしたとか、その程度のことでしかない。
あっさりした関係は少し物足りないようだが、それでもとりあえずはうまくいっている。
うまくはいっているのだ。だから、壊したくはない。
「…うん。あのね……さっき、お兄ちゃんから電話があって」
『ん? 今大学生ってお兄ちゃんか。それがどうした? 』
「その……」
どこから話そうか、と順を追ってさかのぼろうとして、ぱっと春樹の顔が浮かぶ。
春樹とのことは隆也には言いたくない。言いたくないが嘘もつきたくない。


「…実は、夏休みに従兄弟にバレちゃったんだけど、その従兄弟から聞いたらしくって…俺と先生のこと」
『……そうか……それで、何て言ってた? その…反対なのか? 』
司の声のトーンが低いのを気にしてか、隆也も心配そうに聞く。
胸が痛む。何に痛むって、そんな声を出させたことにも痛むが、これから言わなければならない内容に痛む。
あ、痛いのは頭かもしれない。きっとそうだ。
「ううん…ただ、先生に会いたいって。今週末」
『は!? ま、待て、今週末? それを今さっき言われのか? 』
「うん…痛いお兄ちゃんでごめんなさい…」
ほんとに痛い。部屋にプラモやフィギュアが置いてあるのも痛いが、こういう突拍子もない行動が痛い。
それでも血を分けたたった一人の兄だけに、嫌いにはなれないどころか好きなのが困ったもので…
と司はため息をつくが、それはすでにブラコンだ。
『いや…そりゃそのうち司のご両親には挨拶しにいかなきゃいけないとは思ってたけど…そうか、兄ちゃんか…』
「大丈夫? その、先生の都合がつかなければいくらなんでも諦めてくれると思うんだけど…」
むしろ都合は悪ければなんとか逃れられる、とか往生際の悪い司に、隆也はいたって真面目に返す。
『いや、大丈夫だ。部屋掃除しておく。多分うちが一番問題ないだろ』
あまり教師らしくない隆也もやはり律儀なところがあるようだ。
ごろり、と仰向けになって、司はため息をつく。
「…うん、お願いします。それじゃ、また後で連絡する…」
『うん…大丈夫か? 司…元気ないな』
優しい声を聞くと沈んでいた気持ちがふっと浮かぶ。きっと隣にいたら、頭をなでてくれただろう。
「うん…大丈夫、ありがと…」
返す司も穏やかに甘えた声になる。電話の向こうで、きっと隆也も笑顔になっているだろう。
嬉しさが口元からこぼれそうになりながら、うつ伏せになる。
快い沈黙の後、隆也が口を開く。
『…もどかしいな』
どきり、と胸が鳴る。そうだ、もどかしい。会いたくてもすぐには会えない。会えても触れられない。
もどかしくて、もどかしさを感じるほど好きだと強く認識さえられて、せつなくて、苦しくなる。
「……うん」
再びの沈黙に、胸が押しつぶされそうになる。ぎゅう、と心臓を掴まれたまま、甘く弱いしびれが全身を包む。
『……今、ベッドの上か?』
「え?」
低く聞き取りにくい囁きに、思わず体を起こす。頬が火照る。ただ、今ベッドの上かと聞かれただけなのに。
「う、うん……」
『…そっか』
どきどきと心臓の音が耳に響く。
―どうしよう、なんか……
頭を振って、少し上ずった声を出す。
「……先生? 」
はぁ、と隆也のため息が聞こえる。
『うん…ごめんな、エッチなこと考えてた』
ぱっと頬に血が上る。誰もいないのに、それを隠すようにうつ伏せになり枕を抱き寄せる。
「……ずるい……」
『うん、ずるいよな…って、いや、そこか? そっちでいいのか? 変態、とかそういうのはないのか? 』
「え? …あ、だから、その……うぅ…」
指摘されて気付いてしまう。自分も同じような気分だった…と、言えるはずもなく、ごにょごにょと口ごもる。
隆也がにやにやと笑う顔が思い浮かぶ。予想通りの調子で、言い当てられる。
『……司もか? 』
「……うん」
恥ずかしくて、顔から全身に火照りが広がってしまう。
『そっか…今、うつ伏せだよな? 』
「うん……先生? 」
聞かれた内容の意図がつかめない。つかめないが、会話の流れだけで何か淫靡な雰囲気を感じ取る。
『……俺はその横に座って…司の頭をなでて』
静かな隆也の声を聞いていると、本当に頭をなでられたような心地よさを感じてしまう。
『覆いかぶさって、耳元で好きだ、って言って耳にかじりついて』
「ん……」
携帯を押し当てている耳が熱い。ぞくりと、弱い快感が耳から背を走って腰に到達する。
『司の綺麗な耳を、舐めて…濡らして、息を吹きかけて』
「…ん……は……」
実際にそうされたわけでもないのに、ため息が口をつく。


『…感じてるなら、服…脱いでくれるか? 』
もう、隆也が何をしようとしているのかわかった。異常だけれど、それに興奮を覚えてしまう。
やめたくない。
「……先生は? 」
『俺は風呂上り。最初っからTシャツとパンツだけだよ…』
苦笑した隆也は、どこにいるのだろう。いつものソファか、ベッドの上か。
まさかパソコンに向かっているわけではないだろうけれど。
体を起こしながら、見えない隆也に言う。
「……脱ぐから…切らないで」
『うん。待ってる』
シャツを脱いでズボンを蹴り飛ばし、サラシを解く。
明るい部屋の中でそのままでいるのが耐えられなくて、布団の中にもぐりこむ。
「脱いだよ…」
『うん…そうだな、そうしたら…うなじを舐めて背中までたどって、胸を…胸の横を撫でて、手を差し込んで』
「ん、う……」
隆也の舌の動きを、手つきを思い出して手を動かす。
ぬめる舌と大きな節くれだった手が、司を熱くするのを思い出す。
『胸を揉んで……乳首をいじって…硬くなってきた…? 』
「……ん、は……うん……」
携帯で拾えないような小さなため息が続く。
『……下は? 濡れてる? 』
そっと、手を下腹部に伸ばす。下着の上から秘裂をなぞると、わずかにぬめりを感じる。
「うん…濡れて、る……」
『…やらしいな、司は……もっと濡らしてみろよ。真ん中なぞって、指入れて…』
恥ずかしいという感情とは別に、ぞくりと快感が走る。もっといじめて欲しい。
もう自分の性癖は隠しようがない。
「や…やだぁ、言わない、で……っん……は、ぁ……」
それでも、恥ずかしい。恥ずかしいけれど、気持ち良くなりたくて手を動かす。
下着の中に手を差し入れて、濡れた中央をなぞり、膣口に指を埋める。
「んぅっ…は、はぁ……」
甘いため息に、隆也は司が指示通り指を動かしていることを悟る。
『中…わかるだろ? どこが気持ちいいか…Gスポット、なぞって…耳と首、舐めててやるから』
声だけで感じてしまうなんて、きっと相手が隆也だからだ。
抗う気は全く起きず、熱く指を包む膣壁をなぞる。
「ふ、ぁ……んぅ……は、ん…だめ…」
うつ伏せのまま秘裂に伸ばした手は膣内とともに恥骨を刺激し、携帯を持つ手から力が抜ける。
『駄目…じゃないだろ? 最後までいかなきゃ辛いだろ。…俺も、納まらないし』
耳に押し当てた携帯から声が聞こえると、常に顔を寄せられ囁かれているように感じる。
「は、うん……」
『だから…俺の、だと思って……指、一本じゃ足りないだろ? 』
きゅう、と膣が収縮して、指を締め付ける。そう、一本では足りない。
せまい入り口をこじあけて、もう一本を埋め込む。
「ん、んんっ……ふぁ、あ、は……」
動かしたい。かき回して、感じて、喘いで、真っ白になってしまいたい。
「せん、せぇ……して……」
『…いいぞ……ほら、入り口の近く、ぐちゃぐちゃにして…』
言葉どおり、指を動かし、自分の内部を犯す。
気持いいところは知っている。そこを、飽きることなく擦り続ける。
「ふ、ぁ……んんっ……あ、ひぁ、んっ……」
快感が、指を止めるなと言う。もっと、もっと。熱が上がり、呼吸が激しくなって、汗がにじむ。
「あ、あっ、せんせ、せんせぇっ……」
『奥もだ。一番奥から入り口まで、俺のが司の中を行ったり来たりして、擦って…っ…』
隆也の息もあがりはじめている。ぼんやりし始めた頭で、想像する。
あの部屋で、隆也も自分を思って自慰に浸っている。
興奮に流されるまま指を動かし、声をあげる。
「あっ、あ、あぁっ…あぅ、んっ…ん、あぁっ…」
『司……司っ……』
「あ、んんっ…せんせぇ、いっちゃ、う、よぉっ…」
『はっ…イって、いいぞ…クリ、いじめてやる、から……』
司の指がぐりぐりと陰核をこねる。強烈な刺激に息もままならず、身悶え悲鳴をあげる。


「あ、んっ、んんっ、だめ、だめぇっ! 」
『司……っ、奥……いくぞっ……っ』
「ふぁ、あ、あぁっ、あっ――ーっ! 」
イった直後、隆也のうめき声が聞こえたような気がした。
それも確かめられず、息をつく。
「せん、せ……」
『ん……いけた、な? 』
「うん……」
息が上がっていて、ノイズが激しい。熱くなった携帯を逆の耳に押し当てる。
『汗、かいたな。頭撫でて……』
「うん……気持ちいい……よ……」
汚れた手を布団の中から引き抜き顔の前に持ってくる。
「……手、汚れちゃった……」
『俺もだ……司ー、ティッシュとってくれ』
笑う隆也につられて、肩が揺れる。ベッドサイドのティッシュで愛液を拭きとって、ごろりと仰向けになる。
布団の中が自分の熱で熱くなっていて、肌を重ねているような錯覚が心地よい。
「……先生のえっち」
『司もだろ? あー、しかしこれ、携帯代かかるからそうは出来ないな』
「うん」
くすくすと笑いながら息を整える。
『ん……そろそろ、切るぞ? ちゃんと風呂入ってあったかくして寝ろよ? 』
「うん。先生もね」
時計に目をやると、途端に現実に引き戻された気持になる。
『あぁ……じゃあ、またな。おやすみ』
「おやすみなさい……」


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