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R.m.G-ひみつのくすり- 3

◆.Xo1qLEnC.氏

* * *
喉が乾く。
体に残された温もりが、熱へと変わっていく。
掛けられた上着から漂う、ホークの匂いに頭がクラクラする。
ギュッと上着を引き寄せても、その薄く軽い感触は空虚さしか
与えてくれない。
体中をうねる疼きに、おかしくなりそう。
もう耐えられない。
気付かぬうちに私の手は、自分の秘所へと伸びそうになっていた。

やだっ、何考えてるんだろう。
自分でなんて…やだやだやだ!
いつ、ホークが戻ってくるか解らないのに…
「…っ」
それでも、どんどん熱は増し、息が上がっていく。
両手を握り締め、唇を噛んで耐える。内股に力が入ると、ソコが
湿っているのがわかる。
苦しい…
じわりと、体の中から熱がまた湧きだした。
もう、やだ…

―ビクッ

勝手に体が跳ねた。
パサリと上着が落ちる音で、私は抱き上げられている事に気付く。
「っ…ほーく」
覗き込んでくる、優しい笑顔。頬に浮かぶ、赤い傷。
あれ、私、泣いてるのかな…
「っく…ホー…っ…うっ」
「大丈夫。大丈夫だから…」
子供みたいに、ただ泣く私を、ホークは抱き締めてくれる。
大きな体に包まれるのはほっとして、嬉しくて、せつない。
私は、ただ彼の胸に縋る。
額に暖かい物が触れた。

床に広がる上着に下ろされ、シャツのボタンが外されていく。
こ、こんな所でぇ!?
「ちょっと、乱暴にするけど…ごめん」
止める間もなくホークは落ちてたナイフで、サラシを切り裂く。
「やっ…あっ…」
素肌が外気に晒されるれると共に、呼吸が少し楽になった。
宥めるように口付けされ、ズボンも下着も剥ぎ取られる。
「や、やぁ…だ…」
力が入らない。
出る声は自分でも信じられないほど、甘い。
「大丈夫。誰も来ないよ」
そういう問題じゃないッ!
でも、なんの抵抗も出来ないまま、ホークに横抱きにされてしまった。
少しカサつく指が頬に触れると、それだけでゾクリとする。
思わず、ホークを押し退けようとした。
体はそうされる事を望んでいる。
でも、でも…怖い。
薬のせいでおかしくなった自分の体が怖かった。


抵抗する腕は捕まえられ、耳に唇の感触。
「好きだよ」
「あ…」
噛み付くように囁かれ、抱き竦められると一気に力が抜ける。
逃げられるわけないんだ。
いつだって、この人に求められるのは嬉しいんだもの…

髪が解かれる。そして、深い口付け。
彼の手が私の頭を捕まえ、髪をクシャクシャにしていく。
何度も角度を変えては、唇を吸われ、噛まれ…私は、自ら舌を
差し入れる。

もっと。
からかうように逃げる舌を追いかけ、ホークの奥へと誘い込まれていく。
やっと追い付くと、絡め取られ思い切り吸われる。
その感覚に意識を奪われていると、彼の舌は私の口腔内を蹂躙していく。

その間も、待ちきれないというように、私は体をホークに擦り付けて
しまっていた。
胸に零れ落ちた唾液が、体を震わせる。
唇が離れていく。
もっと繋がっていたいのに…
淋しい一心で身を起こし、その首筋にしがみついた。
もう一度、自分から唇を重ねていく。
暖かい手が胸に触れ、体がビクリと跳ねる。

円を描くように動く手の平が、痛いほど立ち上がった先端を掠る度に
甘く痺れた。
息苦しい程の刺激に飲み込まれていく。
それでも離れるのは嫌で、何度も荒い息をつきながら、唇を重ね続ける。
もう一方の手は、脇腹から腰までを、猫でも撫でるように往復する。
それはもどかしく、いつしか舌を動かすのも忘れて、体を捩り続けていた。
すり合う内腿は、自身のソレでヌルヌルと滑る。

唇が離れ、耳に熱い息を感じた。
耳たぶにそっと歯が触れ、優しく舌が這う。
「あぁ…」
熱いのに、背筋がゾクゾクする。
胸の手は擽るように、先端の周囲をなぞる。
勝手に腰が揺れる。
「も…ああんっ…」
自分でも何を言おうとしたのか解らない。
出かけた言葉は、先端を強く摘まれ中断させられる。
私の口から洩れるのが喘ぎだけになると、再び焦らすような優しい
愛撫に戻ってしまった。
「や、ホーク…ぅ」
彼のシャツに掴まり、力の入らない体を起こす。

目の前の喉仏、その上の顎のライン、シャツの向こうの厚い胸板。
何もかも私とは違う、男の人。
愛しくて、首筋に口付けを繰り返した。
服も殆ど剥がれ、こんなに乱れさせられているのに、服を着たまま
落ち着いた表情の彼が、淋しい。
確かめたくて彼自身へと手を伸ばすと、それは確かに固く熱を
持ち始めていた。
そっとさすってみると、固さは増して嬉しくなる。



もっとメチャクチャにして、全身で感じさせて欲しい。


胸にあった手がゆっくりと下がり、私の意識はそこへと集中していく。
お臍を擽られ、体の中心へと。
絶え間なく零れる声も、大きくなっていくのが自分でも解った。
足は勝手に開き、それを待ちわびている。
でも、下腹に辿りつくと、動きはピタリと止まってしまった。
期待を裏切られ、目を開けると、真剣な瞳と目が合った。

「リディ、もう無茶はしないって約束する?」
「え…?」
「ああいう場合は、さっさと逃げるんだ」
その言葉に、体中が凍りつく気がした。
「…嫌よ!」
「駄目だ」
速答で私の返事は突っぱねられ、彼の手は腿をそっと撫で上げてくる。
心臓がドクドクと重い音を立て、全身が粟立った。
「っ…い、嫌っ…」
「下手したら今頃、こうしてるのは他の男だったんだぞ」
「んぅっ…!」
腿にあった手が上ってきて、割れ目をそっとなぞる。
その手を追うように腰は動くけど、ホークは手を離してしまう。
切ない苦しさに、涙が零れてくる。
嫌。こんなの嫌だけど、絶対に折れない。
「…ホークが、ひどい事されるの、嫌…だもの…」
家族を失った夜の記憶は、今でも消える事はない。
大切な人が傷ついて、自分が無事なんて、もう…。

気付けばまた、嗚咽を漏らしていた。
「リディ…」
諦めたような溜息が聞こえた。
「俺は、他の男がリディに触るのも、お前が泣くのも嫌だ。それだけは
覚えていて」
「ひぁっ!」
肩を強く引き寄せられたと思うと、いきなり大きな手が奥へと
入り込み、体が仰け反っていた。

敏感な部分を二本の指で攻められ、押し寄せる悦楽は、渦巻く感情を
全て掻き消していった。
首筋を舌が這い上がり、耳を噛まれる。
背中から回された手は、胸をメチャクチャに揉みしだく。
再開された愛撫は激しくて、気が狂いそう。
指が侵入してきた。
中をほぐすように弄り、弱い部分を何度も刺激され、私はどんどん
昇り詰めていく。
「ホーク…っ」
少し紅潮した頬。
真剣で、どこか惚けたような表情は、すごく色っぽくて、ドキドキする。
「……て…」
…れてほしい。
「入れて…あなたが、欲しいのっ…」
恥ずかしいとか、はしたないとか、そんなのどうでもいい。
一緒に、いきたい。
彼は、りょーかい、といつもみたいに笑った。


ズボンが下ろされ、屹立した物が出てくる。
私はそれから目を反らせなかった。
「おいで」
柱に寄り掛かるように座ったホークが差し出した手を取る。
ホークの足を跨ぐように膝立ちさせられると、腿を液体がつたい身体が
震えた。
彼は私の腰を持ち、ゆっくり下ろしていく。
「位置、調節して」
言われた通りに、彼のものに手を添えると、それはピクリと動いた。
凄く、熱い…
「場所、解る?」
「ん…」
私の一番熱い所…ヒクヒクと震え、彼を待ち続けてるから、解る。
期待で鼓動が速まる。
硬い先端が当たり、私を押し広げて侵入してくる圧迫感。
待ち望んだ感覚に、息がつまり、背が反る。
倒れないよう、そのガッシリした肩を掴む。
引っ掛かりがある一点を通過した途端、頭が真っ白になった。

頬をペシペシと叩かれて気付くと、ホークの上に座り込んでいた。
達してしまったのだろうか。
「はえーよ」
間近で笑われ、体の中心が縮まるのを感じる。
私の中の、ホークの脈動が伝わってくるみたい。
身じろぎしただけで息が漏れた。
やっとで体を揺すれば奥で擦れ合い、体中を悦びが支配する。

「は…あ、ああ…ホーク…」
見上げると、朽ち葉色の瞳に私が映っていた。
悦楽に溺れ、だらしなく開きっぱなしの口元。
繰り返す口付けで零れた唾液も拭っていない。
やだな…今、すっごい可愛くない顔してる…
見られたくなくて、広い胸に顔を埋めると、また中心は窄まり、
体内の脈打つ彼の存在をより強く感じる。

ホークの手が、うなじをなぞり背筋を下る。
「ん…ふあっ…あんっ、」
ふいに突き上げられ、バランスを崩す。
甘い痺れに全身を支配されていく。
振り落とされないよう、しがみついていると太い腕に抱き締められる。
自分の重みで沈み、いつもより深くを突かれる。

開いたままの口から、獣のように流れる唾液は舐め取られ、
飛び出ていた舌をくわえられる。
私…ホークに食べられてるみたい。
このまま食べ尽くされたい。

気付けば、私は自分で自分の胸を掴んでいる。
やだ、見られてるのにっ!
でも、止める事はできなかった。
中で動く、ホークの形がはっきり感じ取れるほど、私は締め付けて
しまっている。
何度も突き上げられ、揺さぶられ、意識が白く染められていく。
追い詰められる感覚に、広い背中を抱きし、彼の腰に脚を絡める。
もっとこうして、ホークを感じていたい。
なのに確かに今、その瞬間を待ちわびてる自分もいる。
ホークの動きが激しくなっていく。
矛盾する気持ちも、快楽の渦に消えた。


…もう…だめ…
「やぁ…ほーくっ、ほーくうぅぅっ!」
体がガクガクと揺れる。
もう、狂ってるのかもしれない。
ただ彼の名を呼び、その背中に爪を立てる。
「イッちまえよ」
低い声が聞こえた。
腰を掴まれ、強く突き上げられる。
いや!このまま、もっと、このままで…!
しがみつく腕に渾身の力を籠めた。

「    」
弾けていく意識の中。自分の叫ぶ声と、体内に広がる熱い迸りを感じていた。

霞みがかった意識の中、ズルリと、ホークが出ていくのを感じる。
その感触に喪失感を覚え、また体は求め始める。
「っ…ぬいちゃやだぁ…」
手が空をさまよう。
私は抱き上げられ、背を預けるように、ホークの足の間に納まった。
「うん。でも、その前に…」
ゴツゴツした指がいきなり秘所に潜りこんだ。
「あああっ」
粘る水音を発て、中が掻き混ぜられる。
与えられる快楽に貪欲に食らい付く。
でも、足りない。
欲しいのは、違う。
腰の辺に当たる塊は、硬さを取り戻し始めている。
悶える度にそれが擦り付けられ、大きくなる。
指が折り曲げられ、ぐるりと回された。
「やああぁぁっ」
また、絶頂の波に襲われ、腰に回された腕を掴む。

「リディ、舐めて」
目の前にはホークの指があった。
滴りそうに絡み付く、少し泡立った白い液体は私とホークのが混ざった…
じわりと、また溢れる。

私は舌を伸ばした。
変な味…
喉にへばりつくような感触も、良いとは決して言えないけれども、
我慢して飲み込む。
ピチャピチャと音が響く。
もっとして欲しい。
そのためだけに、こんな事をしている自分がたまらなく恥ずかしい。
それでも、身の内の衝動には逆らえなかった。

ぬるぬるした指がだんだん唾液でベタベタになっていく。
更にその手を掴んでくわえ、舌を絡めしゃぶる。



やがて、指が口から出ていった。
あれ?なんだろ、気分が落ち着いてきた。もしかして…
「今のが、解毒…薬?」
「そ、頑張ったな」
変な気恥ずかしさに苛まれながらも、振り返ってみると、大きな手に
頭を撫でられた。
誉められた…。
嬉しくて後ろに体を預けると、二本の腕に抱き締められる。
暖かい。ホークの鼓動が伝わってくる。
私も少しずつ、でも確実に鼓動が速くなる。
媚薬のまやかしなど無い、私の気持ち。
ホークを大好きな、私の鼓動。
「…ね、ちょうだい…」
「リディ?」
少し恥ずかしいけど…
「"解毒薬"は効いたわ。だけど、ううん。だから。いつもみたいに…
して…ほしいの」
「かしこまりました」
笑いを含んだ声が聞こえ、押し倒された。
ホークはシャツを脱いで、覆い被さってくる。

「ホーク、大好き」
「俺も。大好きだよ、リディ」
みつめると返ってくる笑顔に、体が暖かくなる。
抱き寄せて、自分からその唇をついばむ。
彼の腕に頭を抱えられ、何度も繰り返す軽いキスは、深いものへと
変わっていった。
ホークの、味。
互いの唾液が混じり合い、飲み込まれていく。
それは恥ずかしいとか汚いとかじゃなくて、嬉しい。
「んぅ…ふっ…」
熱い手が体に触れれば、自然と息が漏れる。

好き。
好きで好きで仕方ないから、何度伝えても充分な気がしない。
あなたに抱かれているから、心も体も気持ち良くなれるんだよ。


伝わってるといいな…



* * *
目を覚ましたら、見覚えのある天井が見えた。
背中には柔らかい感触。そして、暖かい。

ここは…ホークの家の客間だ。
前も気失って、ここに担ぎ込まれたっけ。

…という事は、あのまま私…
起きあがると、ホークがベッドに頭だけのせて寝ていた。
その寝顔を見た途端、頭に血が昇る。
もうやだ。記憶、消えてれば良かったのにっ!!
も、もう少し、寝たフリしよっ。

「あ…起きた?」
もう一度横になり、頭から布団を被ろうとした瞬間だった。
起きちゃった。
なんかニコニコして、機嫌良さそうだなぁ…。
大好きなはずの笑顔を見てられなくて、毛布を顔までずり上げる。
「う…うん」
「体、大丈夫か?後遺症も何も無いってアイツは言ってたけど…」
強いて言うなら、体のいろんなトコが痛いです…。
そんな事言えないから、黙って頷く。
「そっか。異常があったら、早く言えよ。中で出しちまったし…」
あーっ、言わないでっ!!
私が思いっきり、しがみついてたせいじゃない!
その後だって、私が…

体を強ばらせた瞬間、ドロリと何かが出ていくのを感じた。
…ホークのだ。
私はもう、コクコクと頷くのがやっと。

ホークは何も言わない。視線が突き刺さる。
喋んないから、怒ったのかな…
恐る恐る毛布を下げると、真剣な瞳がこちらを見据えていた。
目が合うと、いつもみたいに笑って頭を撫でられる。
「おやすみ」
それだけ言うと、出ていってしまった。

心臓がまだドクドクしてる。
深呼吸してから、まず自分の体を確かめる。
体は清められ、自分の寝巻を着ていた。下着も新しくなってる。
ホークがやってくれた…んだよね?


ヒュージリアに来て、もうすぐ1ヶ月。
ホークの家には、こうして私の着替えが揃ってしまってる。
天井を見上げながら、『初めての夜』を思い出していた。

あの時は不思議なくらい、男の人に抱かれる事に恐怖心は無かった。
ホークから離れてしまう事の方が怖かったから。
あれから何度も、ホークと肌を重ね、最初の頃は酷かった痛みも、
だんだん薄れていった。
本当は喜ぶべきなんだろうけど、私はそれが少し淋しかった。
翌日も辛いような痛みは、それだけホークが強く体に刻み込まれてる
気がして…。

痛くても嬉しいというのはおかしいのかな。
でも、ホークにされる事だから、痛くても嬉しい。
私にとって、ホーク以上の媚薬は無いんだわ。

そういえばまたお礼、言い忘れたなぁ。
でもさすがに今回は、彼の部屋まで乗り込む勇気は無い。

窓の外は澄んだ星空。この町の夜は、冷え込む。
………。
やっぱり行っちゃおうかな。
きっと、ホークは笑って迎え入れてくれる。
そして同じベッドで、手を繋いで…

駄目。やっぱ無理。
一度は起き上がりかけた体を倒し、枕に火照った顔を埋めた。
あーあ。明日になったら、まともに顔を見れるかしら。


* * *

- epilogue ---------

あれから5日。
レッドムーンの午前は相変わらず閑散とし、客も俺達以外は誰もいない。
「なんか、イロイロ大変だったみたいだね〜」
クリスは軽く言ってくれる。
俺が誘拐された事件のあらましは、クリス達の耳にも入ったらしく、
スコットとノーア家の取引は断絶が決定したらしい。
「まあな。でも、今日はお前が大変そうだったな」

今朝訪ねて来たクリスは、店に踏み込むと同時にリディに捕まえられ、
彼女の部屋と引き籠もること小一時間。
俺がここに着いた時は、クリスがヘロヘロと部屋から出て来た
トコだった。
なんでも、この前の無責任行動についてずっと正座で、説教を
くらい続けたとか。
「今日のはそうでもないよ…。足はまだ痺れてるケド」
神妙な顔で、少年はジュースを啜る。
「で、アレはどうしちゃったのさ」
「あ〜、アレなー…」
愉快そーに視線をリディにやるクリスに苦笑する。

リディは今、カウンターの横でコチラが視界に入らない角度に
立っている。
近くに座るローズが時折何事かを話しかけるが、口数は少ない。
俺は声をひそめた。
「…スコットのその後は聞いたか?」
「ううん」
「あれからなー、男も、男らしい女も懲り懲りだって、おとなしい
貴族の嫁さん探してるらしいぜ…」
「あ、なるほど」
クリスからは堪えきれない笑いが零れている。
要するに、自分がそれ程スコットに恐怖心を与えた事が
ショックだったらしい。
その話を聞いたから時、かなり落ち込んでるご様子で…。


それより重大な問題がある。
頼れる者はクリス以外にはおらず、俺は姿勢を正して咳払いする。
「ところで、クリスさん。事件後、俺は何故かリディさんにまともに
口を聞いて貰えてないんですが…」

近寄ればそそくさ逃げるし、話しかけても、返ってくる言葉は
一言、二言。
ワケも解らずこの5日間、ストーカーのようにリディに付きまとっては
口説き続けている。
原因は全くワカリマセン。
もう、淋しくて限界…。

なのにクリスの笑いは加速し、机に突っ伏し肩を震わせている。
なんかムカつく。
「クリス、てめー…」
「っ…ご、ごめんごめん」
ヒーヒーいう息を整えるが、その顔はまだ笑いを堪えている。
「まあ、もーちょっと待ってあげてよ。怒ってるってより、
照れてるんじゃないかな。リディは怒ったら説教だもん。
キミ、何したのさ」

―ぶふっ
その問いに茶を吹き出した。
な、何したって、ナニしか…もしかして、原因はソレか?

「催淫効果の解除方は、精液を飲ませる事」なんてスコットが
ほざいた時は殺意が湧いたが、俺的にはそーとーオイシイ
役回りだった。
俺だって年頃のオトコノコだ。
そりゃあ、いろーんな妄想が駆け巡ったさ。
それでも、一番無難な手を選んだつもりだったんだが。
…まあ、そうだな。イロイロ刺激が強すぎた、と。
しかし、俺の指を舐めてたリディの顔を思い出すと、今でも
ゾクゾクする。
「心当たり、あった〜?」
ニヤニヤしながら、聞いてくるクソガキの足を軽く蹴る。
「うりゃ」
「〜〜〜っ!卑怯者!!」
痺れの残る足を抱え、クリスが呻く。



その時、無意味に陽気な声が響いた。
「ちぃーす!おや、皆様お揃いで」
「あら、ビー」
「何か用かい」
入ってきたのはビー。
笑顔で迎えるママに対し、メイさんは一瞥した後すぐ視線を逸らす。
「メイさん、冷た〜い!用も何も、自分ちに帰って来ただけじゃん」
「え?自分ち…?」
そこまで沈黙していたリディが声を上げる。
あれ?リディ、知らんかったのか。

「ふっふっふ。俺こそメイとスネイルが一人娘、ビーでっす」
「え?ええ!?」
Vサインなど出しながら、歩み寄るビーをリディは唖然とみつめている。
「すまないねぇ…。本当はあの時、言っとくべきだったんだけど」
「ごめんなさい。言い出しにくくて…」
口々に謝るメイさん達の恥ずかしげな表情は、滅多に
見れるもんじゃない。

そう、ビーは正真正銘の『女』。
俺とは幼馴染みのよーなもんである。
趣味は女遊び。
そんなで、ママ達も人(特に女)には紹介したがらないから、
リディが知らなかったのも無理は無いか。
自分が男装してるからって、他人もそうだとは思わんだろうしな。

「ちなみに好みのタイプは、可愛い女の子。どお?これから
デートしない?」
当の本人は、んなことほざきながらリディの手を握ってやがる!
俺なんか、ずっと触ってねーのに…

が、メイさんがビーの首をホールドしたのは、俺が立ち上がるより
早かった。
「お前は!盛ってばかりないで、たまにゃ親を手伝いな!」
そのまま、ビーをカウンター内へと引きずり込んでしまった。
「リド、今日はお休みでいいよ」
「あ!じゃあ、俺がリドのステキな休日をプロデュース…ぐげっ」
めげないビーの戯言は、メイさんの絞め技により鎮圧された。拍手。

「あ、あの…」
リディがやっと我に返ったようだ。
「この前は散々だったんだから、ゆっくりしてきなさいよ」
「は、はい。ありがとうございます」
メイさんとママに一礼し、リディの動きが止まる。

「そういえば…ビーは、私が女だって気付いてたの?」
「んにゃ。なんで?」
「だって、あなた初めて会った時から…」
言いながら赤面し、俯いてしまったリディを、ビーは
楽しそうに見ている。
俺がいない間に何があったんだ!?
「ああ。いやさ、久しぶりにこの街に戻ったら、ホークが
うちのウェイターに手ぇ出してるって噂じゃん。んで、興味津々で店を
覗いたら、かーいい子が居る。これなら俺でもイケるかもーって」



「お前もスコットと大して変わんねーな…」
俺がツッコむと、ビーはムッとして振り向いた。
「失礼な。リドを横取っちゃえば、俺は普通のレンアイできるし、
ホークを直の道に戻す手伝いもできて一石二鳥!
そこまで考えてたんだよ?」
「まず、変な噂を真に受けんな!」
コイツは、思慮が有るんだか無いんだか。
「ま、リドを可愛いと思ったのはホントだし。女の子でも問題は
全然無いわけ。ってコトで、ホークに飽きたらいつでも言ってね。
あいつよりも、気持ち良くしてあげるよ〜」
「あ、あはは…」
満面の笑みで乗り出すビーに、リディも退き気味だ。

「リディちゃん、あっち行きましょ」
見かねたローズに手を引かれ、気まずそうにリディがやってくる。
「ローズちゃんも、大きくなったらヨロシクねー」
「覚えてたらね」
ローズは呆れたように吐き捨て、こっちのテーブルに着いた。
俺の隣にはリディが。

彼女から近寄ってきてくれるのは久しぶりで、嬉しくなる。
(ローズの強制でも!)
「リディ、なんかモテてるね」
「こういうのも、モテてるっていうの?」
楽しげなクリスに、憮然とリディが返す。機嫌悪そー…
「さあ。でも、男運がないのは確かじゃない?ねえ、ローズ」
「かしらね」
んの、クソガキ共が。でも、ローズに言われるとなんかヘコむ…
「やっぱそう思う?」
うわ、ひっでぇ…リディまで、さらっと…。
しかし、その言葉には続きがあった。
「ホークに会えた事で、男運使い果たしちゃったんだわ」
「…ノロケはいーよ」
クリスが生温い笑いを浮かべ、立ち上がる。
「ローズ、皆忙しいみたいだから、町でも案内してよ」
「おっけ〜」
二人は連れ立ち、出掛けて行った。
気ぃ効いてるんだかなんだか…

俺はというと、さっきのリディの言葉に舞い上がって何も言えない。
もう、許してもらえた…かな?
「…あの、リディさん。そろそろ、ご機嫌直していただけました?」
「えーとね、ホークが遊びに連れていってくれたら、直る」
よっしゃ!
「んじゃ、早速行くか」
立ち上がり、リディを引っ張りあげるどさくさに、耳に一瞬口付ける。
「っ…」
上げかけた悲鳴を飲み込み、目を見開いた真っ赤な顔がみつめてる。
5日間ほっとかれたんだ。これくらいは、悪戯させて頂きマショ。
「なにボーッとしてんだ?行こうぜ」
握った手を引っ張ると、ばか、と呟きが聞こえる。
いつもどおりの反応に、小さな手の感触。
やっぱ、こうじゃないとな!

今日こそはリディを独り占め出来る。
ビーには明日も働いてもらうとしよう。うむ。


-end-


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