Index(X) / Menu(M) / Prev(P) / Next(N)

男装王子と従者

9_511氏

大陸の中央に位置する小国ベルキア。
太陽の位置は高く鬱蒼と茂る森林に囲まれている。
国の中心部を流れる大河の東側に位置する首都ツェーレでは今度成人の儀を行うオリバー王子の話題で持ちきりだ。
黄金の髪に睫の長い濃い青の眼、すらりとした細い身体。優男然とした風貌は町の年若い娘に大変な人気がある。
武術は得意ではないが語学の才能に恵まれ、軍事力の乏しいこの国においてゆくゆくは外交の一翼を担うと期待されている。

そんな王子ではあるが、今日もふらりと何処かへ見えなくなった。
複雑で広い王城の中、人一人探すだけで日が暮れる気がする。

おっと突然申し訳ない私ははルイス。
母さんが王子の乳母をやっていたのが縁で恐れ多くも王子の世話役をやらせてもらっている。
この国では王子が成人すると首都に近い城のどれかに引っ越すことになっている。
衣服の整理、家来・侍女の人事、現地の視察、王室の財産の分与、成人の儀の手順の確認・・・やることは山ほどあるっていうのに。
打ち合わせ中もボーっとした様子でいつものようにテキパキと物事を決めなくなった。
最近、かつては真面目だった王子は皆の目を盗んでふらりと何処かへ行ってしまう。
図書室に篭っていたり、城に奉公に来ている子供と球遊びをしていたり。
王子の誕生日は1ヶ月後だ。
侍従長が涙目で呟いていた。
「オリバー様には成人する気が無いんでしょうか?」
全くだ。
バルコニー、中庭、渡り廊下と王子を探してゼエゼエ言いながら城中を走り回る。
聖堂の前を通ったとき、見慣れた緑色のマントが見えた。当たりだ。
息を整え、そっと近づいて様子を伺う。
祭壇の前に跪いて祈りの姿勢を崩さない。
どうやら神様に相談事があるらしい。珍しいな。
今日は司祭が来ていないから、聖堂のある広場には人気が全く無い。
静寂に包まれたまま5分が過ぎた。
そのまま私も動けないでいると祈りを終えて立ってようやくこちらに気が付いた。


「あ、ルイス。また僕を探していたの?」
さっきまでの深刻な顔を拭い去ってにっこりと微笑む。
私の大変さも知らないで・・・。
「そうですよ。最近こうやって打ち合わせの時間になるとふらりと抜け出して・・・。」
「心配してくれるのかい?」
「ええ。侍従長が倒れないかと。」
「えー、僕の心配じゃないの?酷いなぁ。」
「冗談は此処までにして、戻りますよ。失礼。」
王子の細い手首を掴んで歩く。いやいやと抵抗してその場から離れようとしない。
打ち合わせが滞っていることもあり、
「王子!我侭はいい加減にして下さい!」
さっきまでの王子の様子も忘れてつい怒鳴ってしまった。
俯いた王子の顔から水滴がこぼれた。
オリバー様のこんな様子は初めてだ。他の王子らが泣いて嫌がっていた勉強も行儀作法も武術の訓練も不満一つ言わずこなしてきたのに。
そんなにきつい言い方だっただろうか?
私はどうすれば良いか分からず手首を掴んだまま王子を見つめて立ちすくむ形でいた。
「手を放せよ。痛い。」
ようやく王子が口を開いた。私はかなり強く掴んでいたらしい。
手を放したら左手首に赤く跡が残っていた。王子はそれを庇うように袖の下に隠すと私に背を向けて顔をごしごしとこすった。
「一人前の男になんて、僕がなれるわけないじゃないか・・・」
消え入るような声で呟いた。
「母上は僕に王位継承をさせたくてこんな事をしているけれど、へージェン兄さんの方がずっと王に相応しいと思うんだ。武術ができて兵士からの人望もある。」
へージェン様は正室の一人息子でオリバー様の異母兄弟に当たる。
オリバー様の母上のバレッタ様は交易で莫大な富を築いた商家の一人娘で多くの持参金を持って側室として後宮に入った。
オリバー様を出産した際に子宮を患ってしまい一命は取り留めたが以降妊娠が望めない身体になってしまった。自分の血を分けた子供はオリバー様のみである。
男であれば王位継承者として丁重に扱われるが、女であれば政略結婚の材料になるだけであろう。
姫だけを産んだ後宮の女は姫が嫁いだ後はすっかり邪魔者として扱われるのが目に見えている。
幸いその頃王は外交上の問題を解決するために他国を巡っていて2・3年ほど本国に帰還されなかった。
バレッタ様はこれ幸いと出産に立ち会った乳母と侍医に賄賂を渡してオリバー様の性別を男だと偽り続けたのだ。
乳母の子供である私も母さんから耳にタコが出来るほどにオリバー様を男として扱えと言われ続けた。
王は現在病床につき、王子の誰かが王位を継承するのも時間の問題だ。


「オリバー様だって王位継承者として恥ずかしくないですよ。兄弟の中で一番語学に秀でて、その点で一番お父上に似ていらっしゃる。」
王子は背を向けたまま空を仰いだ。
「でも僕じゃ妃を迎えることが出来ない。成人したらいつか結婚相手を決めなくてはいけないだろう?僕が男なら相手は女性。子供は出来ない。いつまでも騙せるものじゃないんだ。」
正論である。でもこちらも何か言わなければ王子に押し負けてしまう。
「バレッタ様が何とか手配して下さるでしょう。例えば女装した何処かの貴族の御曹司とか。」
慰める言葉が見つからなくて言っていることが滅茶苦茶になる。
王子はくるりとこちらに向き直って、泣きはらした目でびっくりするようなことを言った。
「じゃあルイスが僕の結婚相手。ちゃんとドレスを着てさ。名前はルーシー。」
自分が貴族の子女に扮している姿を想像してしまった。冗談にしても酷すぎる。この冗談は流そう。
「王子、打ち合わせに・・・」
平手打ちが飛んできた。
王子がしたたか私の顔を打ったのだ。
視界に星が走り状況を飲み込めないでいると王子が私の肩に手を回して顔を覗き込んできた。
真っ直ぐな瞳に射抜かれそうになる。
「ルイスってば酷い。僕が心臓が破裂する思いで愛の告白をしたっていうのに。」
何て突拍子もない。
「あれ愛の告白だったんですか?」
声が思わず上ずった。
「『ルイスが僕の結婚相手』って言った。何回も言わせるな。」
怒っているらしい。
「申し訳ございません。しかしあんな言い方じゃ冗談にしか聞こえませんよ。」
「僕は本気だよ。こっちに来て。」
「え、ちょっと・・・」


王子は私のマントの裾を無理矢理に引っ張り、聖堂の中に連れ込んだ。
誰も居ないのを確認すると聖堂の扉を閉め、閂をかけた。
ステンドグラスから差し込む光が王子の火照った顔を照らす。
その場で王子は自らのマントの止め具を外し、床にパサリと落とした。
これから何をするつもりなのか大体分かった。
駄目だ。
ここを離れなくては。

「逃げるなよ、ルイス。」
ステンドグラスの光をサファイヤのような目に反射させてオリバー様が私の背中に手を回す。
細い指が私の背中を這う。
直立姿勢だと頭一個半くらい身長差がある。
顔を私に近づけようと背伸びする。
「ルイスって意外と大きいね。もう少し屈んでよ。」
「出来ません。」
必死の思いで直立姿勢を保つ。目をぎゅっと瞑る。欲望に負けては駄目だ。
「しょうがないなぁ。僕としては順番にやりたかったんだけど。」
カチャカチャと音がして腰の辺りに動きを感じた。
オリバー様が私のズボンを外しにかかっている。
「いけません!何をなさるのですか!」
「だって屈んでくれないから。」
半分ズボンがずり落ちてしまった。あわてて逃げる。脚にズボンが絡んでそのまま床に尻餅をついてしまった。
オリバー様がすばやく私の上に乗った。
にやりとしたかと思うとすかさず口を付けてきた。
「いけません・・・王子」
喋ろうとするとすかさず王子の舌が口唇を割って進入してきた。
密着した唇。口内を這うオリバー様の舌。
息苦しくて空気を吸おうとするとオリバー様の唾液が喉の奥に流れる。
ねっとりとしたものが喉を通過した。
「ん・・・あ」
オリバー様も息がしにくいのか、切ないような声を上げる。
いつの間にか私が押し倒されてオリバー様の全体重が私の上に圧し掛かる形となった。
口付けをしながらオリバー様は自分のズボンも脱いでいて、白い脚が露になっていた。
腰を動かして下着越しに秘所や柔らかな尻を触れてくる。
下着越しからでも湿っているのが分かった。
自分のものもだんだん硬くなっている。
オリバー様は一度口付けを止め、宝石のように潤ませた瞳で私を見下ろしながら言った。
「お願いルイス、欲しい・・・」
そう囁かれた私は理性の箍が外れた。


華奢なオリバー様の身体はすぐに私の下に組み敷かれた。
短く切りそろえられた金髪が床の上に流れた。
首筋や肩に滅茶苦茶にキスをして痕を付ける。つややかで柔らかな肌に舌を這わせてオリバー様の味を確かめる。
なお身に纏っているシャツのボタンを毟り取るようにして外し、胴体を締め付けている特注のコルセットの紐を解く。
コルセットを取り去るとこちらに向かってそそり立つ赤く色づいた二つの頂が現れた。
締め付けられてもなお、美しい形と弾力を持つほどの大きさを保っている。
「ルイス・・・」
まじまじと鑑賞していたらさっきまで自分を押し倒していたオリバー様が恥ずかしそうに自分の名を呼んだ。
そうだな、早く楽しませてやらないと。
膨らみの片方は手のひらで捏ねるように圧迫し、もう片方は頂点を口に含んでゆっくりと転がす。
「いっ・・・んん・・・やん・・ああっ!」
痛みと快感に悶えながら私のマントをぎゅっと掴む。
「そんなにいいですかオリバー様。」
責め立てるような言葉が口を突いた。
「オリビア」
「ん?」
「オリビアって呼んで。それが本当の名前だから。」
「オリビア」
「もっと」
「オリビア」
「ルイス・・・。」
口付けを交わす。
私は自分のマントを脱いでオリビアのしっとりと汗ばんだ裸体の下に敷いた。
「好き・・・ルイス。」
そう呟くとオリビアは私のシャツを脱がしはじめた。
首筋や胸元に口を付けて肌の味を確かめながら。


お互い恥部を隠す下着以外身に纏わぬ姿となった。
オリビアは私の下着の紐に手を掛けた。
屹立した自身が姿を現す。
「すごいね・・・これ。」
まじまじと感心した様子で見つめる。
そんなに見つめられると変な気分になる。
つんと指でつつくと更に赤く大きくなった。
「オリビア、いじると駄目だ。我慢できなくなる。」
オリビアの腰を愛撫しながら下着を一気に下ろし、白い脚を開かせた。
「やだっ・・・まだ・・・」
抵抗するオリビアをよそに私はまだ味わっていないオリビアの腰の辺りや腿の裏に滅茶苦茶に口を付けた。
「やだぁ・・・そんなところ・・・うぁっ・・・」
恥ずかしそうに身もだえする。
チュウと吸ったり、舌を這わせたりしてオリビアの反応を楽しんだ。
オリビアの呼吸が荒くなる。
「これくらいで気持ちよくなられては、困るんだが」
恥部に手をかけ、挨拶代わりに蕾を摘み、蕩け始めている襞の中に指を入れた。
「ああっ!」
今までよりずっと敏感なところを弄られて溜まらず苦悶の叫びが漏れた。
「痛い?」
呼吸を整えて、気丈にもオリビアは頭を振った。
「無理はしないで。痛かったらいつでもやめるから。」
泣きそうな声でオリビアは答えた。
「お願いやめないで。僕は大丈夫だから・・・」
「分かった。やめない。だから力を抜いて。」
こくりと頷く。
今まで抵抗していた脚の力が抜けた。
「上手だ。そのままで。」
さっきより奥に指を入れ、更に一本増やし入り口を広げる。
「はぁ・・・っ」
そっと往復させて硬くなった突起の裏側を撫でた。
「ふう・・・んんん!」
「いっ・・・ああああ!」
経験したことのない快感のやり場が分からず、下に敷いたマントを必死に掴む。
「はぁっ・・・やん!
敷物は乱れて、布の皺がオリビアの下に波紋を寄せた。
もっと最奥に指を入れようとしたその時
「ああーー・・・っ!」
達した。
肉壁が指にまとわりつき、オリビアの身体が弓なりになって硬直し、直後にだらりと力が抜けた。
とろとろと液体があふれ出し、オリビアの腿や私の指を濡らす。


トロンとした目で天井を見つめるオリビアの上に身体を重ねた。
恥部と恥部の距離を詰める。
私の様子に気が付いたらしくオリビアと目が合った。
「ルイス・・・早く来て。」
切なげな声で私を呼ぶ。
「ああ」
先ほどの淫らな様子を見せられてこれで終わるのは不満だ。
「入る」
十分に濡れたそこは雨上がりの花のように鮮やかに色づいていた。

「いやぁっ」
入り口に触れただけでオリビアは反った。
腰を抑えて、さっきの指よりずっと太いそれをゆっくりと挿入する。
指でも入れなかった狭い箇所に当たった。
苦しそうなオリビアの唇に口付けし、腰を一気に進める。
ぶつりと振動が走り処女膜を破ったのを感じた。
「あああああっ!」
破瓜の痛みに抑えていた声が一気に漏れた。
のろのろと腰を往復させ、奥をかき回し、突く。
「ふあっ・・・ん!あん・・・!やっ!」
下半身から脳天に突き抜ける快感にオリビアは嬌声を上げながら私の腕を掴む力を強める。
オリビアの嬌声が私の脳内に反響し、下半身の熱となって巡る。
極限まで密着し、ぶつかり合い、汗にまみれる身体。
お互いの体温がどちらのものともつかなくなった。
腰の動きが自然に早まり、目の前が真っ白になってきた。
・・・出る!
オリビアの胎内が肉棒を搾り取ろうと収縮したとき、私は血と愛液にまみれた自身を抜き、オリビアの腹上に白濁した熱い液体をこぼした。


「ルイス・・・どうしてこんなことを・・・?」
仰向けに身体を横たえたオリビアは消え入りそうな声で私に尋ねた。
だるさに支配された身体をどうにか起こし、服のポケットに入れてあったハンカチでオリビアの腹を綺麗に拭っていた。
「あなたに孕ませるわけには生きませんから。」
「どうして?」
「女だと明かすのは現状ではまだ早すぎます。へージェン王子が王位継承をするまで待ちましょう。そうすればバレッタ様も手出しは出来ないはず。
 貴方がまず立派に王子として成人の儀を迎え、語学を生かして外交官として実績を積み、へージェン様のサポートに徹するのです。
 誰もが貴方が王国には必要不可欠な存在として認めた暁に性別を明かして下さい。
 へージェン王子は非合理的な伝統を嫌う方ですから、そうすれば貴方も政略結婚のダシというような、悪い扱いは受けないはずです。
 城を一つを当てがわれるぐらいにはなるでしょう。」
オリビアに射精するその時、最後の理性が頭の中に蘇り、このまま進んではいけないと叫んだ。
今の提案もオリビアに最良の方法はないものかと聖堂の静寂の中で必死に考え付いたものだった。
オリビアは納得した様子だった。
よいしょと身体を起こし、私の手を握って言った。
「うん・・・。じゃあ僕王国初の女領主目指して頑張る。だからルイスも絶対僕以外の女の人を抱かないで。」
「はい、約束します。」
そう誓うとどちらともなくお互いに視線を交わし、唇に熱い接吻をした。

聖堂で王子を見つけてから2時間は経っていた。
侍従長はカンカンに怒っているだろう。
もう太陽が傾いている。
聖堂を出るとき王子を見つけたときに気になったことを尋ねてみた。
「そういえば王子、此処で何をお願いしてたんですか?」
王子はくるくると私の前に回りこみ「えへへ」と照れ笑いしながらこう答えた。
「ルイスと結婚できますように って!」


Index(X) / Menu(M) / Prev(P) / Next(N)