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上を向いて歩こう 2

実験屋◆ukZVKLHcCE氏

「辰斗〜。いる〜?」
いるいない関係無しに辰斗の部屋に上がりこむ巽。
「巽君。一応呼び鈴くらい押そうよ。」
我が物顔で家宅侵入する巽に辰斗は呆れた顔をして巽を迎えた。

巽と知り合ってから半月ほどになる。すっかり辰斗(限り無く辰斗の部屋)を気に入った巽は
ちょくちょく現れては好き放題している。
「勉強みてほしいんだ。辰斗大学生でしょ?高校の問題くらい簡単でしょ?教えてよ。」
「教えるったって・・・俺工業系の高校だから普通高校の問題なんて分んねーぞ。」
「何だよ期待してたのにー・・使えないなぁ。」
「ムカ(怒) んだとコラ!!やってやろーじゃねぇか。問題見せてみろや。」
巽に上手くのせられて問題集と対峙する辰斗。

「これでどうだ!!」
「えーと・・・凄い全部あってるよ!!」
「見たか俺の実力!!」
「これで宿題お終いっと。」
「あっ!!巽お前ハメやがったな!?」
「ぜ・ん・ぶ 解いてくれてありがとうございました。」
「チクショー!!」
テーブルを思い切り叩いて悔しがる辰斗。
「怒らないでよ辰斗。お礼にコレ・・・」
「ん?・・・ぬおぉぉぉぉぉぉ!!!それは!!??」
驚愕する辰斗。目の前には牛肉を持った巽が後光をまとっていた。(もちろん後光は牛肉から)
「控えおろぉ!!グラム200円のすき焼き用のお肉だぞ!!」
黒地に金縁のパック。それはまさに高い肉の証明。
「ははぁぁ!!!」
悪代官よりも床に頭を擦り付けながら辰斗はひれ伏した。


「はぁ〜幸せだ。」
至福、と言う気持ちをあらわに満面の笑みですき焼き(つーか牛肉)を頬張る辰斗。
「ハハ・・喜んでもらえて何よりだよ。」
その姿は巽的にはドン引きだった。
「また、買ってこようか?」
「いいのか?やったぜベイベー!!」
「ベイベーってオイ。」
「あっそうだ!!」
「どうしたの?」
「来週俺誕生日なんだ。お祝いって事で・・・ダメか?」
「来週か・・・分った、楽しみにしててね。」
「そりゃもう!!」
辰斗の目は牛肉と言う文字で光り輝いていた。
「ねえ辰斗、他に何か欲しいものある?」
「イヤ別に。ソコまで気を使わなくてもいいぞ。」
「でもさ、辰斗にはいつもお世話になってるし・・・。」
「気持ちだけありがたく頂戴するさ。」
「・・・・・・・・ウン。」
「?」

含みのある巽の返事。だが辰斗にはそれが何なのかまだ分らなかった。


誕生日当日。辰斗はウキウキしながら巽が来るのを待っていた。
「肉!!肉!!肉!!肉ゥゥゥゥゥゥ・・・ヒャッホゥイ!!」
すでに鍋や野菜、つまりは肉以外の全てを完備した状態で辰巳が来るのを今か今かと
半ば殺気立ちながらまつ辰斗。
そして、
「辰斗〜。お誕生日おめでとう。」
「キターーーーーーー!!」
巽というか肉が来た事に喜ぶ辰斗。
「ハイお望みの品。」
「グハァァァ・・・。」
木目調の丸いパックに入った霜降りの肉。
「すげえ・・・こんな肉見たことねえよ。」
見切り品で半値になった豚肉しか普段知らない辰斗は霜降り肉という未知の世界に絶句した。
「よし早速喰っちまおう。」
「食い気の塊だね辰斗は・・。」
「なんとでも言うがいい。今日にかける意気込みはただならぬ物なのだ・・見よ!!」
辰斗はおもむろに卵を一個取り出した。
「卵がどうしたの。」
「ヌフフフフ、なんとこれは”ウコッケイ”(漢字忘れた)の卵なのだ!!」
「ええ!!それって安くても一個500円はする高い卵じゃん。」
「この卵は今日と言う日に懸ける俺の想いの結晶なのだ。」
「・・・・だったらそれでもっといい肉買えばいいじゃない。」
「・・・・・・・・・・・・ハッ!!」
「今気付いたの!?」
「ま、まあなんだ。早く喰おうぜ。」
「立ち直りと切り替え早!!」
「お前のためにもう一つ卵用意してるんだぞ。」
「おぉー!!用意がいいね。」
二人は鍋を囲んだ。
「では改めて、お誕生日おめでとう辰斗。」
「あんがとさん巽。」


「あぁ〜〜喰った喰った。」
少なくとも5人前はあった肉をほとんど一人で平らげた辰斗。
「幸せそうな顔しちゃって・・・殴りたくなっちゃうぜ。」
呆れ半分の顔でそれをみる巽。
「構わんよ〜今の俺は気分がいい。何したっていいぜ。」
食ってる最中ビールも飲んだせいか寄った勢いでかなり調子に乗ってる辰斗。
「・・・・本当に?」
「あぁ。どんとこいよ、ハハ。」

辰斗は気が付いていなかったが巽の表情は笑顔から徐々に真剣なものへと変わっていった。

「辰斗・・・。」
「なんだ?」
「もうひとつプレゼントがあるんだけど。」
「プレゼント?」
「もらってくれる?」
「くれるって言うんなら有難く頂くけど、前にも言ったけどあんまり無理しなくてもいいんだぜ。」
「全然・・・無理なんかしてないよ。」
そう言いながら辰斗の方へと近づく巽。
「そうか?ならばいいんだ・・・が・・・んんっ!!」
辰斗は酔っていた事もあり状況判断に苦しんだがこれだけはハッキリと理解できた。

巽に・・・・キスされている。


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