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プレゼント 1

実験屋◆ukZVKLHcCE氏

「プレゼント、なにがいいかな・・・。」

『プレゼント』

狂介は悩んでいた。有紀の誕生日が明日に迫ったのだがプレゼントに何を送るかで
結局、前日まで何も出来ない状態に追い込まれてしまった。
「女の子っていったい何がほしいモノなんだ?」
人から物は奪うが挙げる貰うと言った経験がほとんど無い狂介はプレゼントひとつ
満足に選べないでいた。
「わからん・・・・ウーン・・・」
これが親兄弟ならば福沢諭吉の一枚や二枚を直に渡せば目を¥マークや$マークに
変えて飛びつくから簡単なのだが、大好きな子、しかも女の子にあげるものなんて
考えたことが無かった狂介は目星もつかずに唸るだけだった。
「しょうがない、誰かに参考までに聞くか。」
人を頼りにしたくない、と言うか有紀へのプレゼントと知られて冷かされるのを
ウザく思っていた狂介は人に聞くのを拒んでいたが、実際ここまで何も考えつかなかった
以上、ヘタな意地を張るわけにも行かないといろんな人にプレゼントの参考を聞くことにした。

[山崎家]
「兄貴いるかー?」
「あっ、狂介君。ご主人様は今お仕事でいないよ。」
兄の正樹の部屋には以前”色々あって”自分の義姉になった萌(旧姓:天王寺)がいた。

当然衣装は巫女さんだ!!

「マジで・・・じゃあ・・えっと・・・義姉さん?」
「萌でいいよ。」
「じゃあ萌さん、ひとつ聞きたい事があるんだけど。」
「私で役に立つなら。なに?」
正直なところ面と向かって話すのはこれが始めての狂介と萌。
「女の子ってさ・・・プレゼント貰うなら何がいいもんなの?」
「・・・もしかして有紀ちゃんに?」
「グハッ!!」
いきなり核心をコークスクリューでブチ抜かれた。


「まあ・・ね・・。」
しどろもどろになりながらも返事を返す狂介。
「一概に何がいいとは言えないよ。本人じゃないんだもん。」
「・・そりゃそうだ。」
「でも大切なのは、何を貰うかよりも誰から貰うかだと思うよ。
 狂介君から貰ったものなら有紀ちゃんは何でも喜ぶと思うな。」
「それは実体験からですか?」
「モチロン!!」
ちゃっかりノロケられていた狂介。
「うん・・わかった。サンキューね萌さん。」
「いえいえ。」

[学校]
「そういえば今まで有紀に何あげてたっけ?」
狂介は過去に有紀に贈ったプレゼントを思い返した。その頃は有紀を男と思っていたので
特に何か考えて送っていたわけではないのだが。

小学校の頃:ゲームソフト(中古)
中学校の頃:DVD(18禁)
去年:アキバで購入した同人誌や同人ゲーム(中古で18禁)

「ヤベェ、俺って最低ジャン」
何を今更・・・
「うるせー殺すぞ作者!!」


どうもスイマセン。


「本当・・・何やってるんだか・・・。」
今思えば本当に何を送っていたんだというラインナップに狂介は頭痛と目眩を覚えた。
 
「先輩!!」
「ん? 園太郎じゃないか。」
後ろから声をかけられ振り向けば園太郎がいた・・・そしてその隣に。
「あれ? 君は確か?」
「このあいだは・・・ドウモ。」
まえに告白してきた下級生、田中詠子がいた。
「ん?あれ? もしかしてお前ら・・・」
「そのまさかと思ってください。」
詠子と手をつないで満面の笑みを浮かべる園太郎。
「へぇ〜・・いいんじゃない?お似合いだと思うよ。」
「当然ッスよ。」
「ありがとうございます。」
イケメン化して以来、自己主張が強くなった園太郎と恥ずかしげにうつむく詠子。
「そうだ園太郎。ちと聞きたいんだけど。」
「なんでしょう?」
「彼女に何かあげるとしたら何をあげる?」
「そりゃモチ自分にリボン巻いて『俺を食べて』って・・」
「なにいってるのバカ!!」
そう言いながら園太郎の胸板をポカポカ叩く詠子。
「痛い、痛いって叩くなよ・・・。」

ここでもノロケられてしまった狂介。


「もういい・・・」
「あっ、スイマセン先輩。参考になるか分かんないッスけど直接
 聞けばいいじゃないッスか?南先輩に。」
「そうだけど・・・って、オマ・・エ・」
「狂介先輩が他人に物をあげるって行ったら相手は決まってるじゃないッスか。」
「テメェ・・・まあいいや・・アンガトね」
「いいえ。」
狂介は足取りも重く去っていった。

「ねえ、園太郎。山崎先輩と南先輩って・・・ホモ?」
「はぁ?何言って・・・あぁ、そうか詠子は知らない派か。」
「?? どういう事?」
「口で言うのもなんだから・・・」
園太郎は懐から抜き出した拳銃を上に向けた。

「秘技 スレタイ落とし!!」

園太郎が発砲したと同時に上からスレタイが落ちてきた。

つ【男装少女萌え】

「こういう事。」
「男装・・・って・・えぇ!!」
田中詠子、自分がいる世界の根源に触れる。


それからも狂介は手当たり次第に聞いて回った。

藤澤「大人のおもちゃは?ローターなりバイブなり。」
狂介「氏ね!!」

升沢「前にも言ったけどオマエさんがおしゃぶり咥えて赤ちゃんプレイ・・・」
狂介「氏ね!!」

結果は散々だった。

「人に聞いても成果は無いなぁ・・・」
結局、これといって参考にならなかった狂介は近所のデパートへと足を向けていた。
「んーーーー・・・・・。」
地下食料品売り場から7階催事場、4階迷子センターにまで足を伸ばし
店員「ちょっと君、なにしてんの!?」
ちゃっかり怒られた。


「全然だ・・・本当に困った。」
一通りデパート内を回り終えた狂介はふと足を止めた。
「ん?ここは?」
狂介が今いるのは家電製品売場。
「別に家電なんて・・・・ん?」
狂介の目にあるものが飛び込んだ。

「・・・・・・・・・・・これだ!!」

そのあるものに狂介はガッツポーズを向けた。


〜次の日の夜〜
「はぁ〜・・・」
有紀は自分の部屋でため息をついていた。今日は自分の誕生日、黙ってはいたが狂介からの
プレゼントを有紀は楽しみにしていたのだった。
しかし、狂介は朝から学校にも姿を現さず、家を訪ねても留守との事、
結局狂介に会える事が出来ずに一日が過ぎようとしていたのである。
「狂介・・・」
家族や同級生、知り合いなどにたくさん祝いの言葉を言われた。だが、肝心の狂介からは
まだ「おめでとう」と言われていない。寂しさと悲しさが有紀の心を襲った。

コンコン

その時、部屋の窓が叩かれた。
「なんだろう?」
有紀が窓に向かいカーテンを広げると・・・
「よっ!!」
「狂介!!」
窓の外のサッシにしゃがみこむ様に狂介は佇んでいた。
「邪魔するよ。」
狂介はそのまま部屋の中に上がりこんだ。
「時間は・・・11時半か、ギリギリだね。」
「狂介、今日はいったいどこ行ってたの?」
丸一日姿を見せなかった狂介を不安に思いながら有紀は狂介に尋ねた。


「人には言えないところに・・・ちょっとね。」
「ちょっとって、僕心配したんだから・・んっ」
次の瞬間、有紀の口は狂介の口に塞がれていた。
「ゴメンな。だからコレをお詫びに・・・」
そういって狂介は抱えていた小さな包みを有紀に渡した。
「何なのこれ?」
「あけてみて。」
そう促され有紀は包みを開ける。
「あっ、これ・・・。」
中にはサイズは小さいが丁寧に彩られたケーキが入っていた。
「気に入ってもらえると嬉しいんだけど。」
「まさかコレ狂介が・・・」
「慣れない事はするもんじゃないな。」
見れば狂介の指はバンドエイドだらけだった。
「もっとでかいのを作るつもりだったんだけど失敗に失敗を重ねたら
 それ一個作る分しか材料が無くなってさ。いやマイッタマイッタ。」
冗談めかして笑う狂介。
「んっ・・くぅ、うぅ・・・ふぇ・・・」
「え?オイ有紀、何で泣いてるの?」
有紀の目には涙がたまり、身体は震えていた。狂介は何がなんだか分からず焦った。
「もしかして、コレじゃ嫌だった?ゴメン、じゃあ何か他のを・・」
「違うの!!嬉しいの!!」
「有紀。」
「狂介が僕のために・・・凄く・・・凄く嬉しい。」


「そっか、気に入ってもらえて良かった。」
何も嫌だったわけではないと分かり狂介は安堵のため息を漏らした。
「本当にありがとう狂介。」
「いえいえ、じゃあ改めて・・・誕生日おめでとう有紀。」
「狂介・・・僕嬉しい。」
「ハハ、そう言って貰えて俺も嬉しいよ。」
「ところで、このケーキ食べてもいい?」
「そのために作ったんだから食ってくれよ。」
「ウン。」
有紀は添えてあったフォークを使いケーキをつまんだ。
「あっ、ちょっと待った。」
そう言うと狂介は有紀からフォークを取り上げた。
「狂介?」
「はいアーン。」
狂介はケーキがのったフォークを有紀の口元に差し出した。
「ちょ、ちょっと狂介!!恥ずかしいよ!!」
「恥ずかしがって下さい。はいアーン。」
「あ・・アーン。」
顔を真っ赤にしながら有紀はケーキを口にした。
「お味はいかが?」
「お・・美味しい・・・とっても美味しいよ。」
恥ずかしがりながら有紀は顔をうつむかせて答えた。
「よかった〜。有紀にそう言ってもらえるのが一番うれしい。」
「もう・・・」
「はいじゃあ次、アーン。」
「も、もういいよ。一人で食べれるから。」
「今日の主役は有紀だよ。ご奉仕させてちょうだいな姫さま。」
「うぅ〜〜〜・・・。」


結局、最後の一口まで狂介の給仕でケーキを食べさせられた有紀。
「ごちそうさま。」
「おそまつさま。」
「恥ずかしいかったんだから。」
「ハハ。」
笑ってごまかす狂介。
「ねぇ、狂介?」
「ん?どうした?」
急に真剣な顔になる有紀。
「もうひとつだけお願いがあるんだけど・・・いいかな?」
「お願い? まぁ俺であげられるんならいいけど。」
「欲しいものがあるの。」
「なに?今すぐ買って来ようか?」
「大丈夫、そういうのじゃないから。」
「はい?」
有紀は真っ赤になった顔を狂介に向けた。

「めくるめく夜をお願いします!!」

狂介の脳内にある記憶の世界、その世界のファラオが理性と自制を生贄に召還を行った。

アテム「『なんだって隊』召還!!」

なんだって隊「「「「「「「なんだってーーーーーーーーーーーー!!!!」」」」」」」


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