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はいすくーるでいず! 1

◆tfOOvljg.E氏

「……そんなので大丈夫なの?」
「平気。引っ越したばかりだから友達も居ないし」
 ――木下神楽(きのしたかぐら)はそう言うと、身に纏っている
シャツの皺を伸ばした。

 四月。始まりの季節。
 神楽とその双子の姉である鈴(りん)は、そろって同じ高校に通
うこととなった。親戚が高校に近いアパートの大家をしているため、
自然に二人はそのアパートに暮らす事になった。
 
 おかしいのはそれから先だ。――神楽は女なのに、なぜか男とし
て振る舞っている。鈴はその理由を「聞いた事がある気がするけど
よく覚えていないの」と言うし、神楽はなぜかその理由を言おうと
はしない。
 けれど現実世界に置いて、「神楽は男として振る舞っている」と
いうのは事実である。籍では女という事になっているのだが――

「行くよ、鈴」
「待ってくれてもいいじゃない」
 入学式の朝。神楽と鈴は二人で登校した。無論徒歩数分で着くの
で、二人で登校しようが一人で登校しようが同じだが。
 後ろで低めに一つにまとめた黒髪をなびかせて、神楽はちょっと
早足で歩く。鈴は困りながらも大きな歩幅で頑張って歩いていた。

 神楽の身につけた男子制服はサイズが少し大きかった。それもそ
のはず、神楽は身長が異様なまでに小さいからだ。一四五ほどだろ
うか? そのため、男用の中でも一番小さいサイズを着用している。

「やっぱり、その服は大きいと思うのよぉ」
「それが? 僕は別にこれで良いんだから、指図しないで」
 刺々しい言い方だと、神楽は自分を罵った。けどこれくらいがちょ
うどいいだろう。姉はいつも浮かれ過ぎだ。
「バレたらどうするつもりよ?」
「さすがに全校生徒全員には女だってバレないと思うけど」
 そう言い捨てると、神楽は駆け足で学校の方へと走っていった。


 入学式も終わり、少々長い休み時間が始まった。
 新入生は、通常ここで自己紹介やらの馴れ合いをする。
 神楽はだるそうに馴れ合いを見届けると、黙って瞳を瞑る。
 新入生が神楽に目を向けないと言う事は、逆に男だと言う事が
バレないということだ。いっそこのまま一匹狼にでもなって、ふ
らふらとさまよい続けようか。

「――くん、木下くんっ!」
 神楽はとっさに瞳を開いて、目の前に人物を凝視した。それこ
そ、睨むくらいの勢いで。
「木下くんって、木下さんの弟さんだよね! 私ね、びっくりし
 ちゃって。今まで双子の人に会った事がなかったの」
 赤茶けた髪をツインテールに結んだ少女は、ぱっちりとした二
重の窓を持つ瞳を輝かせていた。紅潮した頬は、男から見れば本
当に愛らしいと言われる部類に入るだろう。
「それでね、木下さんが『神楽に話しかけてもいいよ』って言う
 から、私迷わず話しかけちゃったの」
 良く喋る少女だ――神楽は興味無さげに「うん」「うん」と相
槌を打つ。それでも、少女は嬉々として喋る。これでもかという
くらいに。
「木下くんは部活決まった?」
「まだ。帰宅部でいいけど」
 これは答えても良い質問だと察したので、神楽は返事をする。
 少女は「じゃあ」とぽんと手を打って、神楽に向かってこう言
い放った。
「吹奏楽部に入らない? 私、中学の頃からフルートをやってて。
 さっき木下さんに聞いたら、『私もバスクラをやりたいの』っ
 て言ってたから。良い機会だと思って、ね」
 悪くはないんだけど――そう言いかけた途端、後ろの扉が勢い
良く開いた。扉を開いたのは、背の低い――僕ほどでもないけど
――少年だった。ネクタイの色からして新入生だろう。
「七海、行くぞっ! ほら、変な男にはべらかされんな! 早く
 行こうぜバカ! このあんぽんたん!」
「ひ、ひどいわねえ、あんぽんたんだなんて言わないでよぉ……。
 もう、今行く! 今行くわよ! ――ばいばい、木下くんっ」
 少年に半ば引っ張られるかのように、少女は教室から出て行っ
た。呼び出されたのか、はたまたもう帰るのか。


 HRが終わって、殆どの生徒はもう帰宅していた。が、鈴は新
しい友達とまだ話をしている。プロフィール帳かなにかの交換だ
ろう――そう思いつつ、神楽は鈴が帰ろうとするのをずっと待っ
ていた。
 HRが終わって少し経ってから、少女は神楽の側に帰って来て
いた。心無しか、肌がつややかだ。
「ごめんねー。で、吹奏楽部に入る気ない?」明るい口調で言
う。
「悪くはないんだけどね。知識が無いし」
 大丈夫大丈夫、と少女が胸を張って言う。「高校から始める人
もいっぱい居るよ。私は違うけどね」そう言って苦笑いした。
「今日帰ってから鈴に相談してみるよ」
「本当!? ありがとう、うれしい!」少女は神楽に抱きつく。
神楽は内心「初対面の少女が男に抱きつける筈が無い」と思った
が、その辺りはもう気にしない事にした。
「自己紹介が遅れたね、私は藤内七海(ふじうちななみ)。そっ 
 ちの名前はもう知ってるんだけど、自己紹介が聞きたいなっ」
「僕は木下神楽だけど」七海は「えへへ」と愛らしく笑った。神
楽は少々狼狽えると、黙って七海から目をそらす。
「えへへーっ。双子っていいなあ。かっこいいっ」
「そう思われるものなの?」「うん」間を空けずに七海が答える。
「勉強とか教え合えるし――あ、あとね、双子なのに同じクラス
 ってすごいと思うの」屈託の無い瞳は、にこやかに笑っていた。


「――神楽っ、それでどうなのよ? 入るのぉ?」
 帰る頃。部活もまだやっていないので、新入生は昼過ぎに帰る
こととなる。
 神楽と七海の会話を鈴は聞いていたのか、神楽に向かってねち
ねちと問う。――吹奏楽部に入るのか、入らないのか。部活見学
も始まっていないこの時期に考えるのはまだ早いのだろうが、少
なくとも七海と同じくらい鈴は入部したいと願っているのだろう。
 神楽は正直うるさいと思いつつも、「はいはい」と適当に相槌
を打っていた。
「……真面目に返事してよぉ」それを感じ取ったのか、ぶーたれ
た表情で鈴が言う。
「まだ考えるべきところじゃないと思うんだよね。早すぎる」
 確かに悪くはないんだけど、と付け足すのを忘れてしまった。
それに七海には「帰ってから相談してみる」と言ってしまってい
る。神楽はあわてて訂正しようとしたが、時既に遅し。鈴は怒っ
たのか、すたすたと早歩きで家の方へと歩いていってしまってい
た。二十メートルほど先に居るので、普通に歩いていればまず追
いつくことはできないだろう。
 神楽は呆れとやるせなさの混じった、大きなため息を吐いた。


「ただいまー」神楽が家に帰り帰宅の挨拶をしても、鈴は返事を
しなかった。――無視している、といっても過言ではないだろう。
 そう感じ取った神楽は、一応家の隅々まで鈴を探してみること
にした。
「鈴ーっ、いないの? 僕が悪かったから出て来てよー」
 台所兼リビング。返事は無い。
「鈴ってばーっ」
 鈴の部屋。返事は無い。
「りーんーっ」
 神楽の部屋。返事は無い。
「……いい加減にしてくれないと怒るよっ」
 風呂場。神楽もさすがにここには居ないだろうと踏んではいた
が、ものは試しだ。
「りーんーっ、何処に居るのさーっ」
「ここよぉ」
 風呂場の中から声がした。――神楽にとって、それはとても意
外なことだった。まさかこんなところに居るなんて、と神楽は舌
打ちする。怒らせたのは神楽の方なのだが。

「鈴、入るよ」そう言いながら、神楽は勢いよく風呂場の戸を開
いた。風呂に入っているのか、生まれたままの鈴の姿が其処には
あった。――浴槽のなかでだらりとしている。
 腰まである濡れた黒髪、風呂に入ってのぼせた頬、ぼーっとし
て潤んだ瞳。神楽には無い、約八十八と言う大きなサイズの胸が
ぷるんと揺れた。この辺は姉の特権なのだろうか。正直神楽は男
子並に胸が無い。下を隠せばすぐに男子と一緒に温泉にも入れる
くらいだ。過去、何度かやったこともある。
「神楽ぁっ」
「え、あ、鈴!?」
 濡れたまま、生まれたままの姿で、鈴が神楽に抱きついた。神
楽はよろめいて、浴槽の方へ倒れる。――水の跳ねる音がした。
「わ、新しい制服がっ」
「……いいじゃないのいいじゃないの。嫌なら脱いで来なさい」
 鈴の言葉に「それもそうか」と神楽は納得したが、とたんに赤
面した。


「な、ぬ、脱ぐって……え!?」
「一緒にお風呂に入りましょうよ。久しぶりに」
「お風呂にはまだ時間が早すぎると思うんだけど」
 気にしない事よぉ、と鈴独特の間延びした口調。鈴はにやりと
笑うと、神楽のブレザーのボタンに手を伸ばした。
「何して……」
「脱ぐ気がないんだったら、脱がせてあげるわねぇ」
 神楽に反論させる隙を与えず、鈴は神楽のボタンを外し始める。
やがて上着を脱がせ終わると、水に濡れて透けたランニングシャ
ツが姿を現した。
「どこまで男の子のふりをするつもりなの?」真っ白でしみ一つ
ないシャツを、ゆっくりと鈴が脱がす。
「鈴っ、それ以上はやめてって……」
「久しぶりなのよね、神楽の身体を見るの」
 ひとつひとつ丁寧にボタンを外す鈴の手を、神楽が払いのけた。
ぴっ、と音を立てる勢いで水が散る。神楽の顔にかかった。
「やめてっ」
「……うるさいわねぇっ」
 下の方からボタンの外されているシャツを、鈴は一気に上にま
くり上げた。ランニングシャツと、全く無いと言っても等しい胸
が露になる。
「僕のを見るなっ」
「……ずいぶん小さいわねぇ」
 ひたりと、鈴は神楽の胸にランニング越しで手を這わす。手の
ひらが乳首に当たるたびに、神楽は息を詰めた。
「……っは、やめ……」
「ぺったんこなのに乳首だけ勃ってる。淫乱ねぇ」
 びくりと神楽が身体を震わした。確かに平坦な胸板にぴょこり
と突き出た二つの先端は、かなり目立っている。真っ白なランニ
ングシャツでも、淡いピンク色は隠しきれていない。


「今バストは何センチあるの?」
「……ろ……じ……っ」
「ろ? ろだけじゃ意味がわからないわ。教えて」
「六十……七……」
 とぎれとぎれに神楽が言うたびに、鈴はにやりと目を細めた。
 今までひたひたと這わせていただけの手を、ランニングシャツ
の中に差し込む。濡れた手で触っていたので多少湿っていた。
 鈴は神楽の乳首を手でつねる。神楽は「あ」と小さく声を上げ
ると、必死で声を食いしばって耐えていた。
「……あ……っ」
「痛い? 痛いでしょうねぇ。けど、大きくしてあげるわねぇ」
 胸の事なのか乳首の事なのかよく理解が出来ないが、確かに鈴
はそう言って、神楽の無い胸を揉み始めた。神楽はいたそうに顔
をしかめる。
「……う、いっつ……」
「大きくなあれ、神楽のおっぱい、大きくなあれっ」
 まじないのような言葉を口ずさみながら、鈴は一心不乱に神楽
の胸を揉む。
「あぅ、いた……」
「そろそろかしらねぇ」そう言うと、鈴は神楽の身体を支えて浴
槽のはしに腰掛けさせる。神楽は痛みでぼーっとしていたのか、
あまり抵抗していなかった。
「ぴらーんっ」
 鈴はそう言うと、神楽のランニングを乳首の丁度上まで引き上
げる。男子の胸板と言っても過言でない胸と、ぴんと勃った乳首
が姿を現した。先ほど鈴が揉んだせいか、ところどころに赤い痕
が見られる。
「……小さいわぁ、私の妹にしては」不満げに呟くと、神楽の乳
首をつんと指ではじいた。


「あっ」
 神楽は身をよじらせて、必死に快楽に耐える。痛みも混じって
いるのだろうが、鈴はそんな事を殆ど考えては居ない様子だ。
 つんつん、と何度も突っつくと、鈴は神楽の乳首を口にくわえ
た。
「あぁっ!? ……んっ、あ、やめて、り……」まるで母乳を飲
むかのように、吸い、噛み、なめと、鈴は乳首を責め立てる。神
楽の方も尋常の快楽ではないのか、身をくねくねとよじらせて必
死で耐えていた。――隣近所に声が聞こえないようにする為だろ
う、鈴は察する。
 片方の手で責められていない乳首をくにくにといじると、一層
神楽の喘ぎ声は甲高いものになった。面白そうにそれを見つめる
と、鈴はさらに責め立てる。
「う、あぁ……っ、やめ……あぅっ」神楽は半泣きになりながら
も責めに耐えようとしているのだが、全く意味はない。むしろ逆
効果だ。
 異様に神楽が股間を押さえているのに目を付けて、鈴は神楽の
ズボンを一気に脱がせた。
「あ、ちょっとっ」ズホンは浴室のタイルの上に放り投げられる。
後に残ったのは――男物のトランクスを身につけた神楽だった。
 恥ずかしそうに顔を赤らめて、神楽は我に帰ったかのように胸
と下着を隠そうとする。だが、鈴によってそれは阻止された。
「上のシャツも邪魔よねえ」鈴はおかまい無しにボタンを外し、
神楽のシャツを脱がした。残りはランニングシャツとトランクス
を身にまとっているだけなのだが――
「着衣のほうがいいわよねぇ。可愛らしくて」そう言った鈴の所
為で、残りの下着を脱がす事は無理と言う事になった。
「……トランクスなんて、生理が来たときにどうするつもりよ?」
「トランクスの下に……」手をもじもじさせて、神楽が答える。
「そういえばまだ始まってないのよねぇ」
「うん」
 神楽の顔は少なくとも真っ赤だった。姉にこんな事をされるな
んて、思っても見なかったせいだろう。


 鈴は神楽のトランクスの窓部分から手を差し込んだ。先ほどの
前戯のせいか、トランクスのなかからぐちゅぐちゅと音がする。
「あ、嫌だっ……やめ……あうぅ」鈴の手が敏感な部分に当たっ
ているのか、神楽が少し声を上げた。鈴は面白そうな顔をして、
今度はゆっくりとトランクスのなかを円を描くかのようになぞる。
「ひうっ」
「面白いわぁ。これをこねたらどうなるかしらねぇ」そう言って、
鈴は神楽のクリトリスをくにくにとこね始めた。神楽は間もなく
甲高い声を上げる。
「きゃぁあ……っ! やめ、ちょ、りんっ」
 あっ、と神楽が声を上げる。神楽の瞳には涙さえ見えた。――
しかし、鈴はやめようとしない。
「ああぁっ、あぅ」
「大きくなって来たわねぇ、だんだんと」
 目を細めつつも、鈴は神楽をさらに責める。神楽のトランクス
のなかから聞こえるぐちゅぐちゅという音が一層大きくなる。
 神楽の頬は赤く色づいていたが、その頬の色を薄くさせるかの
ように涙が伝っていた。乳首はぴんと立って、まだ触ってほしい
かのように主張していた。
「あぅ、あああっ……」
「あら? どうしたのー?」神楽の反応が急に無くなったので、
鈴は気になって手を止める。神楽が鈴の手を取って、トランクス
のさらに奥へと導いた。
「……や……」
「や?」
「いきそうなんだよっ、やめないで」涙と屈辱の混じった声を神
楽が発した。鈴はにやりと微笑んだが、まだトランクスの中の手
を動かそうとはしない。


「……たら」鈴が小さな声を出した。
「吹奏楽部に入るんだったら、この手を動かしてあげてもいいけ
 ど。入らないんだったらここでおしまいねぇ」
「意地が悪いね、鈴は」まだ神楽の息は荒いままだ。まだまだ足
りないのか、目にはまだ涙が溜まっている。
「入るの? 入らないの?」
「うぅ」――そういう漫画で良くあるシーンだけど、実際に自分
が体験しているとなるとこれはかなり屈辱だろう。神楽はそう考
えた。
 相変わらず意地の悪い笑みを浮かべた鈴は、神楽の返答を待ち
つづけている。もじもじと鈴から視線をそらす神楽は、鈴にとっ
てとてもおもしろい見物対象だ。汗なのか湯気なのかよくわから
ないもので湿った神楽の身体は、いつになく妖艶な雰囲気を醸し
出している。
「……入るよ、入るからいかせてっ!」
「了解っ」そういうと鈴は、待ち構えていたかのように一気に指
を膣の中に入れる。その瞬間、神楽の背が大きくのけぞった。
「ひあぁっ! んっ、あぅ……」鈴はぐちゅぐちゅと中をかき混
ぜながら、ふと疑問に思ったかのように神楽に問う。
「神楽って、処女じゃないのよねぇ。どうして?」
「あっ……それ、ん、は……ない、しょっ」
「内緒?」鈴の眉がぴくりと動く。それに対応するかのように中
に入れられていた指が三本へと増やされる。それぞればらばらに
ぐちゅぐちゅとかき混ぜると、神楽は大きい声を上げた。
「あぁあ、だめ、いっちゃう! うあああぁあんっ」
 甲高い声とともに達した神楽はぐったりとすると、浴槽に腰か
けていた身体を、湯船の中につけた。服を着たまま湯船に入って
いるということを、気にするそぶりも無い。
「……う、はうぅ……」
「それじゃ、体験入部してから入部届け出しましょうねぇ。……
 それにしても、内緒って?」少々怒りの混じった声で鈴が聞く。
「教えたらダメなんだ。鈴、とくにキミには」憂いを持った瞳で
神楽が言う。「そう」と納得したかのように言うと、鈴は俯いた。
「機会があったら教えて頂戴ね」鈴の言葉に、神楽は頷く。
「――にしても、風呂場でこんなことしないでよね。鈴にされた
 ことはなかったんだけど。莫迦だなぁ、鈴は」
「莫迦って何よぉ、まったく。……第二ラウンド開始っ」
「うわあぁ!?」
 双子の姉妹(特に妹)の受難はまだまだ終わらない。


 終わり(第二話へつづく)


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