Index(X) / Menu(M) / Prev(P) / Next(N)

こんなカタチの苦悩の終わり

暗愚丸氏

 篠原学園一年C組の若村雄一は空手部道場のど真ん中でただ一人座禅を組んでいた。
 二枚目半といった顔立ちが、眉間によった深いしわのせいで三枚目に変わっているが、それも詮無いことだった。
 何しろ雄一は、地獄の底の更に底を突きぬけるほどに深く悩んでいたからだ。
「……ふぅ」
 深い溜息をつきながら、閉じていた目を開く。
 ゆっくりと立ち上がって大きく体を伸ばす雄一。
 一七九センチという身長に、空手着の上からでも解る鍛え上げられた体。
 それが、年齢に似合わない強烈な威圧感を感じさせる。
 自然体で立った状態から、軽く息を吐きながら上段回し蹴りを放った。
 そのまま元の体勢に戻る。
 今度は、ろくに構えも取らず、手首のスナップを効かせるような打ち方で、顔面めがけて軽く正拳を放つ。
 通常の空手ならまず許されない行為なのだが、喧嘩の時はこの方が確実に相手をたたきのめすことが出来る。
 だが、そんな風に体を動かしたところで、悩みがはれるわけがない。
 悩みの原因自体は、思春期の少年少女なら誰でも一度は経験したことがある事。
 いわゆる恋の病と言うものだが、その相手が問題だったのだ。
「あれ、雄一? 今日は部活なしで上がるって言ってたよね?」
 不意に、ひょこっと道場の入り口から一人の少年が顔を覗かせた。
 雄一の同級生にして親友でもある篠原真雪(まさゆき)。
 ぱっちりとした大きな目にすっと通った鼻筋、愛らしい小さな唇と、どこから見ても美少女にしか見えない顔立ちで、肩くらいの長さの髪を後頭部の下側で一本にまとめた真雪を見た瞬間、心臓が高鳴った。
「あ、あぁ、他の連中が全員揃って、他校に遠征行って来るから留守番してくれって、顧問に言われたんだよ」
 声が上擦るのを抑えきれなくて、気づかれないように真雪から視線をそらす。
「あ、そうなんだ。じゃ久しぶりにあがらせてもらおっと」
 ひょいっと手早く道場に入ってくる真雪。
 一六〇センチ台と小柄な上に体も全体的に華奢で、ユニセックスな服を着れば確実に少女と間違われる。
 そんな雰囲気を持っている真雪が、とことこと雄一の正面まで歩いてきた。
 そのまま、雄一の隣に来ると粗野な態度で床に腰を下ろす。
 あぐらをかきながら見上げてくる真雪に、雄一もおとなしく床に座った。
 気づかれないよう深呼吸して、心を落ち着ける。
「いや〜、やっぱ畳の上ってのは安心するね〜」
「そりゃ、お前さんはそうだろうよ」
 篠原学園理事長の末っ子であり、この学園のある篠原町の大地主にして和風の大邸宅に住んでいる真雪なのだ。
 幾度か篠原邸にお邪魔させてもらったことのある身として、その言葉には共感できる。
 のだが、そう言いながら「んーっ」と背伸びをする真雪の仕草にまた胸が高鳴った。
 慌てて視線をそらす。
 自分にはそんな趣味はないのだと必死で言い聞かせるために。


 雄一と真雪の友人づきあいはまだせいぜい半年ほどのものでしかない。
 篠原学園入学式が終わった後、そろそろ絶滅危惧種な、見るからに不良と言った十人ほどの群れに連れて行かれる真雪を見かけたのだ。
 数にあかせて一人をいたぶるような連中は、吐き気がするほど嫌いな雄一だ。
 当然のようにその後を付けて、助けに入ろうとした。
 ……が、校舎裏の影に入った連中と真雪の後に続こうとした雄一の目の前を、不良の一人が空を舞って通り過ぎた。
 慌てて飛び込んだ流石に絶句した雄一。
 一呼吸の時間で、地面に叩き付けられたのが三人、投げ飛ばされたのが一人。
 結局、手助けする必要が欠片もなかったのだ。
 ただ、ソレが縁となって自然と連(つる)む様になった。
 あれからいつの間にか、真雪は雄一にとって数少ない親友になっている。
「雄一、最近変だよね?」
 ぽつりといきなり話しかけられて、慌てて真雪に視線を向ける雄一。
 少し伏し目がちの憂いを帯びた瞳に見つめられて、また頭に血が上ったことを自覚する。


「いや、そんなことないぞ?」
「何言ってるんだよ、そんなことあるぞ?」
 そう言っておどけてみせる真雪。
 その横顔に一瞬見とれてしまって、必死でその意識を押しのける。
「ボクたち友達だろ? 悩みがあるなら何でも聞くって。悩みって言うのは、人に言うだけでも大分軽くなるじゃないか」
 そう言って笑う真雪に、雄一は答えを返すことが出来ない。
 否、出来るはずがない。
 ……男が男に恋慕する。そんな異常な性癖は雄一にはないはずだったのに、気づけば真雪を好きになっている自分がいた。
 そんな悩みを当の真雪自身に言えるはずがない。
「あーだから何でもないって」
「む、なんかむかつく!」
 言った瞬間、真雪が立ち上がって背後からスリーパーホールドをかけてくる。
 首に回された細い腕の感触に、僅かに薫る甘い香りに、雄一の心がはぜそうになる。
「チョークチョーク!」
 慌ててぽんぽんとのど元に入っている真雪の腕を叩く。
 背中に感じる温もりがやばかった。
 体が反応しそうになる。
 ソレを必死で押さえて、雄一は何とか立ち上がった。
「お、おぉ?」
 背中で上がる真雪の驚きの声に応えず、何とか喉から真雪の腕を引きはがした。
「かはっ! ごほっごほっ! ……っはぁ。ったく、マジで入ってたぞ今」
 思わず文句を言いながら振り返る雄一。
 少し困ったような表情を浮かべる真雪が、手を伸ばしてきて喉に触れてきた。
「あーゴメン、ちょっとやりすぎたかな?」
「やりすぎたかな、じゃねぇだろ」
 そう言いながら、どくんと心臓の鼓動が強くなったことを、雄一は自覚した。
 のど元をさわさわとくすぐる細い指。
 心が折れそうになる。
「あとついちゃったね。ゴメン」
 そう言いながら軽く頭を下げる真雪。
 その細い首と白い項が見えた瞬間、ぷつんっと何かが切れる音がした。
「真雪」
「なに? っ!?」
 呼びかけに応えて真雪が顔を上げた瞬間、雄一は抱きしめながら唇を重ねていた。
 柔らかい感触に心が震えた。嫌われて早く抵抗して欲しい。軽蔑して欲しい。
 そんな雄一の思いとは裏腹に真雪の体からは力が抜けて、逆にぎゅっとしがみついてきた。
 理解できない。
 男にキスされているのに、抵抗するどころか受け入れようとする真雪の気持ちが理解できない。
 それでもその甘く柔らかい感触に心がとろけていく。
 どれだけそうしていたのか、ゆっくりと唇を離す。
 はふっ、と、真雪が名残惜しげな吐息を漏らして、自分の唇を右の人差し指でなぞる。
 その光景が異様なまでに淫靡に感じて、雄一は体の疼きを覚えた。
 だけど、その疼きよりも真雪の漏らした言葉の方が、雄一の動きを縛った。
「…………雄一、気づいてたんだ」
「あー、気づいてたって何がだよ」
 嫌われてもおかしくないはずなのに、嬉しそうに笑う真雪が理解できなかった。
 だから漏らした問いかけに、がくりと肩を落とす真雪。
「……え〜と、マジで気づいてないわけ?」
「だから、何が」
 どこか飄々とした真雪の様子に、わけもなくいらだってくる。
 そんな雄一を見つめてくる真雪が、どこか困ったような笑みを浮かべた。
「雄一って、もしかしてホモ?」
「違うっっ…………て言いたい、けど……お前に惚れてるのは事実だし…………そうなのかも」
 自分が異常な変態だと想ってしまった瞬間、心のどこかが折れる音がした。
 がくりと肩を落として雄一は畳を見つめる。


「じゃぁ、ボクは相手にならないよ?」
 そのどこか憂いを感じさせる声に、訝りながら顔を上げる雄一。
 少し下にある真雪の顔に、真剣な表情が浮かんでいることに気づいた。
「だって……、ボク女だから」
 …………オンナダカラ
 …………おんなだから
 …………女だから
 一瞬、頭の中でその言葉がリフレインした。
「……は?」
「家庭の事情でこんな格好してるけど、ボク、ホントは女なんだよ」
 僅かに潤んだ瞳で見上げられながらつぶやかれた言葉。
 その言葉の意味を理解した瞬間、雄一はがくんと膝を崩して畳にへたり込んだ。
「ちょっ、雄一!?」
 慌てた様子で見下ろしてくる真雪。
 ソレを見ながら、安堵の吐息と涙が零れた。
「あ、安心したら、腰が抜けた」
 真雪の顔を見上げながら雄一はぽつりとつぶやく。
「ぶっっ! ……っく…………」
 思わず吹き出してから慌てて笑みを堪えようとする真雪を、雄一はじろりとにらみつける。
「……何が可笑しいんだよ」
 声に険が籠もるのはどうしょうもないこと。
 そんな雄一を見つめてくる真雪はやっと笑いの発作を堪えたのか、口元に僅かに笑みを残したまま、それでも普段の口調で話しかけてくる。
「だってさ、雄一は一人で十数人相手に喧嘩するような無鉄砲じゃないか。ソレなのに、ボクが女だって知っただけで腰抜かすなんて、らしくないって」
 その言葉を聞いた瞬間、頭に血が上った。
「悪かったなっ! 言っとくけど本気で俺悩んでたんだぞ! 男なのに男を好きになったなんて異常すぎて洒落にならないって本気で凹みまくってたんだ!
 ソレこそ朝まで寝られないなんて事もざらだったんだぞ! なのに衝動的にキスしてしまったら女でした? 安心しすぎて腰が抜けてもおかしくないだろうが!!」
 一息でそれだけの言葉を吐き出して、げほげほと咳き込んでしまう雄一。
 そんな雄一の隣にぺたんと腰を下ろした真雪が、ぽんぽんと背中を叩いてくれる。
「あー、ゴメン。そりゃ確かにそうなってもおかしくないね……、ってか、マジゴメン。きっとボクのせいだね」
 何とか呼吸を整える雄一の耳に、どこか困ったような憂い声が聞こえてきた。
「真雪?」
「……きっと雄一がボクのこと好きになってくれたのって、ボクが雄一の事好きだったからだと想うんだ」
 その真剣な声に引っ張られるように慌てて隣に視線を向ける。
 真雪がじっとこちらを見つめていた。
「ボク自身気づかないうちに雄一に秋波を送ってたのかもしれないしね」
「あー、と」
 その言葉に、何となく自分が真雪を好きになったきっかけを、雄一は思い出す。
 梅雨入りしてすぐの頃だったと想う。
 たまたま傘を忘れた雄一は真雪の傘に入って帰っていた。
 ただそれだけだったのに、時々こちらを見上げて来る真雪の視線が妙にこそばゆくて、同じように隙を狙って横顔を見た時、心臓がとくんっと跳ねたのだ。
 その少し寂しげで構って欲しそうな横顔。
 そんな顔をさせたくない。そう想ったのが、きっと恋の始まり。
「で、もう一度最初から言っても良い? ボク、雄一のことが好きだよ。誰よりも何よりも大好きだ」
 そう言って、目を潤ませて見上げてくる真雪。
 鼓動がやけにやかましい。
 そんなことを想いながら、雄一も真雪をしっかりと見つめる。
「俺も……俺も真雪のこと好きだ。絶対に離したくない」
 そう言いながら、思わず真雪の肩に手を伸ばして胸元に抱き寄せる。
 その華奢な感触に暴走しそうになって、雄一は心を落ち着けさせて深呼吸する。
 真雪が嬉しそうに、だけど困ったような笑顔で見つめてくる。
「嬉しいんだけど、一つだけ言わせてくれる? ボクのホントの名前は『まさゆき』じゃなくて『まゆき』なんだ。そう呼んで欲しいな」


 その可愛らしい笑顔に、我慢できなくなる。
「真雪」
 不思議なほど、すぐに『まゆき』と呼びかけることが出来た自分に苦笑して、身をかがめるようにして口づけを交わす。
 甘い香りが鼻腔を擽り、触れ合った柔らかさが心を熱くする。
 しばらく触れ合うだけのキスを続けて、不意にぬるりとした感触を受けて、雄一は目を見張った。
 目を閉じたままの真雪が、唇を開いて舌をつきだしてきたのだ。
 そのことを理解するより早く、強引に唇を割って舌が入ってきた。
 歯列を舐めてあごを開けてと催促する舌に、抵抗するすべも知らずに雄一は口を開いた。
 間髪入れず入ってくる真雪の舌。
 ソレが頬の内側や歯と歯茎の裏側や口蓋部分を舐めてくる。
 その感触に背中を押された。
 おずおずと伸ばした舌が真雪のモノと触れ合う。
 もっとも弱い部位を互いに絡め合わせる感覚は、背筋にぴりぴりと来るほど気持ちよく、気がつけば夢中になっていた。
 最初は真雪からの攻撃だったが、いつの間にか雄一の方が真雪の口腔に舌を突き入れていた。
 思う存分に舐めしゃぶる。
 甘い唾液の味が広がり、頭がくらくらとしてくる。
 ふんふんっ、と必死に鼻で息をする真雪がとても可愛かった。
 雄一の方も呼吸が限界に近くて、名残惜しいけれどそっと離れる。
 ちゅぽんっと言う音と、つっと走った銀糸に、体が反応した。
 空手着の上から解るほど昂ぶる陽根。
 ソレを隠すように、真雪をそっと胸元から離した。
「その、なんだ。今日は帰るとするか」
 真雪の方には視線を向けずつぶやく雄一。
 はぁっと桃色の吐息をはいている真雪。その顔を見てしまえば、きっと止められなくなる。
 それが解っていたからこその言葉。
「……え〜、此処まで来てやめるなんて、男らしくないぞ〜」
 何故か非難の声を上げる真雪。
 あくまで視線はそっぽを向いたまま、雄一は溜息を漏らす。
「いや、男らしくないってのは、関係ないだろうがっ!? な、何してる!!」
 いきなりさわりと股間をなで上げられて、思わず真雪をにらみつける雄一。
 だが、当の真雪はにやにやとスケベな笑みを浮かべつつ、雄一の股間から手を離そうとしない。
「何ってさわってるだけ。いやー男のこれって、ホントに堅くなるんだね〜、なんか不思議だ〜」
 ……なぜかいつもと性格が変わってるように思えて、雄一の額に汗が浮かぶ。
「えと、真雪?」
「ん?」
 空手着の上からとはいえ、好きな相手にさわられている感触に、雄一の陽根は限界まで立ち上がっていた。
 ソレを愛おしそうになでている真雪が、どこかとろんとした瞳で見つめてくる。
「あー、そのなんだ、良いんだな?」
 何がと言わなくても伝わることくらい雄一にだって解っていた。
 こくんと頷いた真雪が、身をよじって雄一から離れる。
 そのまま音もなく立ち上がって、雄一の真正面に来る。
「それじゃ、脱いじゃうね」
 そう言いながら半袖シャツのボタンを一つ一つはずしていく真雪。
 ごくりと唾を飲み込みながら、雄一はじっとソレを見つめる。
 シャツの下に着込んでいるタンクトップ、その更に下に何かを着込んでいることに気づいて、雄一は口を開きかけた。
 だが、ソレよりも早く、真雪がタンクトップも脱ぎ捨てる。
 その下からチョッキに似た形の妙なモノが出てきた。
「……なんだソレ?」
 雄一が思わず漏らした疑問に、苦笑を浮かべた真雪がそのチョッキのようなものの、中心のファスナーに手を伸ばす。


「コレは和装ブラって奴だよ。普通の和装ブラだとカップがAくらいになるんだけど、コレは特注品で完全に平らになるようにしてるんだ。……でも、ボクの場合胸が結構大きくて、脇の方に肉が逃げてくるのがちょっと鬱陶しいんだよね」
「……ああ、そんなの付けてるから、体育とか水泳とかずっと休んでたのか」
「うん。ホントは体育くらいなら大丈夫だと想うけど、水泳は流石に、ねぇ?」
 意味不明な同意を求めてくる真雪に思わず苦笑を浮かべる雄一。
 だが、その苦笑はすぐに消えた。
 真雪がファスナーを下ろしきった瞬間。
 ぼろんっと言う擬音が似合いそうなほどの勢いで、かなり大きな胸がまろびでたのだ。
 目測で言えばCくらいだろうか。窮屈に押し込められていた状態から、急に解放されたせいか、ふるんと小さく震えた。
 真っ白なふくらみの先端に、そこだけぽつんと淡い桃色の色彩が乗っている。
 漫画や写真では幾度か見たことがあるとは言え、実際に目の前で見たソレに雄一は生唾を飲み込んだ。
 ……下手なAV女優なんかよりもつんと上を向いた綺麗な形をしていたのだ。
 ソレを今からさわることが出来る。そんな期待感を抑えることが出来ない。
「その……、胸見られるのって、やっぱ恥ずかしいね」
 僅かな羞恥に掠れた声を受けて、雄一は慌てて視線を上に向ける。
 同時に、ぞくりと背中が震えた。
 目尻に涙を溜めた真雪が、恥ずかしそうにしながら、それでも嬉しげな笑みを浮かべていたから。
 真雪がゆっくりとベルトに手をかけてズボンを下ろす。
 その下から覗いたのはブリーフくらいの裾丈のスパッツ。
 ぴったりと肌に張り付いているそれのおかげで、ほっそりと引き締まった太股や障害のいっさいないなめらかな下腹部と股間も、余すところなく雄一の目に収まった。
 お互い何も言わない。
 真雪がゆっくりとスパッツに指を入れて、少しだけ下ろす。
 真っ白な肌が雄一の目を焼いた。
 昂奮を必死で押さえようと何度となく唾を飲み込む。
 しばらくその体勢で止まっていた真雪が、一瞬だけこちらを見つめてきて、一息に全部脱ぎ捨てた。
 なだらかな股間をうっすらと陰毛が飾っている。
 その初めて見る部分から、とろりと蜜が零れた。
「……ぁ」
 一糸まとわず、体を隠そうともせず立っている真雪。
 その立ち姿はあまりにも美しすぎて、神々しささえ感じられた。
 同時に、その柔らかそうなふくらみの先端が堅くしこっていることも、内股をとろりと液体が伝うことも、淫靡さを感じさせて屹立が激しさをます。
「……えとさ、ボクばっかぬぐのって不公平だと想うけど?」
 だから、唇をとがらせる真雪の呟きに、雄一は慌てて立ち上がって空手着を脱ぎ捨てる。
 上も下も適当に投げ捨てて、真正面から向き合う。
「うわぁ、やっぱ本物って違うねぇ」
 そして、目をきらきらと輝かせて見つめてくる真雪に、思わず肩を落とした。
「あのなぁ、いくら何でももう少し恥じらいってもんを」
「それじゃ座ってくれる? 両足開いて背中そらし気味にしてさ」
「あ、あぁ」
 好奇心いっぱいといった様子の真雪に気圧されるように言われたとおり、座って大きく足を開く。
 手を後ろについて少し背中を反らす雄一の足の間に、ぺたんと座る真雪。
 かと想うと、不意に俯せになって……雄一のモノをその豊かな胸で挟み込んだのだ。
「っ!? な、何を! っく!」
 柔らかく暖かい固まりに余すところなく包み込まれる感覚は、漫画やビデオで見て創造していたモノとは比べモノにならないくらい気持ちよかった。
 あまり上下に動きはしないが、左右からぎゅっと圧迫される感触だけでも、かなり来るモノがあった。
「んっ……んっ…………こんなの、どう? れろっ」
「くっ! お、お前なぁ」
 先端を軽くなめ回された後、裏筋をちろちろとくすぐられ、雁首をゆっくりとなぞられる。
 ゾクゾクと背筋が震える程気持ちよくて、それでも何というか、あまりにも手慣れた様子の真雪に、違和感を感じた。


「んー――――ぷはっ! ……もしかして、ボクが初めてじゃないとか想ってたりする?」
 ほとんど間髪入れずに告げられた真雪の言葉に、冷や汗を浮かべつつ頷く雄一。
「ま、そう想われてもしょうがないけどさ。元はと言えば雄一のせいなんだからね」
「……俺のせいって、何でだよ」
 むすっとした表情で見上げてくる真雪。
 そんな表情も可愛いなと想いながら雄一は問い返す。
「……忘れたわけ? ボクにエロ漫画とかエロビデオとか貸してくれてたの雄一だろ」
 言われて、思わず口を閉ざす。
 確かにその通りだったから。
「最近の少女漫画だと結構Hシーンあるけど、やっぱ男性向けのエロ漫画とかの方が男が感じる場所ってかなりしっかり書いてるし、テクの参考にはなるんだよね」
 何というかあっけらかんとそう言われては、雄一にも返す言葉が見つからない。
「ソレに、雄一の趣味もよくわかったしね〜。雄一パイズリ好きだもん、ねぇ?」
 ……確かに、真雪に貸したことのある本やAVは巨乳モノが多く、当然パイズリが多かったのも事実。
 とはいえ、ソレを知られているという現状も流石にどうかと想いながら、雄一は真雪をじっと見下ろす。
「あー、だけどなぁ」
「いいじゃん、雄一のやりたいって想ってたことは全部出来るし、ボクだって雄一が感じてくれると嬉しいんだからさ」
 そこまで言いつのった真雪が、またぬろりと舐めあげてきた。
「っ! い、いや、確かに気持ちいいが……」
 何となく負けたような気分になりながら、雄一は左手に体重を預けて右手を自由にする。
 その自由になった右手で、優しく真雪の頭をなでた。
「んっ……んっ……ちゅっちゅぷ…………んんんっっっ」
 気がつけば、いつの間にか胸の谷間からぬちゃぬちゅと卑猥な音が聞こえ始めた。
 見るまでもなく、真雪の唾液が胸の谷間――と雄一自身――に絡んでいるのだと気づく。
 徐々に真雪の動きが早くなっていく。
「っっ! 真雪!」
 左右から圧迫されているだけだったのが、いつの間にかごしゅごしゅと上下にもこすられ始めていた。
 その柔らかさと温もりと粘つく感触に、悲鳴が上がりそうなほどの気持ちよさを雄一は覚えていた。
「んっっ…………れろっれろれろれろ…………」
 加えられた先端部分を激しく舐めあげられて、雄一は早くも限界に近づいていることを自覚する。
「まゆ、きっ! やばっ! やばい、もう俺!」
 頼むから離れてくれ。
 そう言おうとするよりも早く、真雪が更に激しく胸を動かして吸い上げてきた。
「ちゅっちゅっぢゅるるる…………」
「くっ! 悪い!」
 そう叫ぶのが雄一にとっての精一杯だった。
 びゅるっと真雪の口内へ精液を吐き出してしまう。
 普段の倍以上の勢いと早さで飛び出す液体を、真雪が舌で受け止めて口内にため込むのが解った。
 ゆっくりと真雪が股間から顔を上げた。
 口の端から白い液体がひとしずく垂れて、こくんっと喉が上下に動く。
「え、えへへ、いや〜ほんと変な味だね〜」
 じっと凝視していた雄一に気づいたのか、照れくさそうな笑顔を浮かべる真雪。
 垂れた雫も指ですくって口中に含む。
 その姿は淫靡そのもので、萎える間もなくまた堅くなるのを雄一は感じていた。
「でも……、雄一のだとおいしいって言う気もするかな?」
「……エロ漫画じゃないんだからそんな事言うな。恥ずかしいだろうが」
 そっぽを向きながら返した言葉に、真雪がにやりと笑ってみせる。
「何言ってるんだよ、その方が気持ちいいじゃない。ソレに雄一だって言われて嬉しいくせに。もうこんな堅くなってるよ?」
 また左右の胸が動き始めて、慌てて真雪の頭を軽く叩く。
 動きを止めて見つめてくる真雪。
 苦笑を浮かべて雄一は真雪を見つめた。


「今度は俺の番だろ、俺だってお前を気持ちよくさせたいんだぜ」
 そう言いながら雄一は真雪に笑いかける。
 同時に、顔を真っ赤にした真雪が見上げてきた。
「……うん、でもさ。準備はもうOKだから、一気に本番に行きたいな」
 その表情は反則的なほどのかわいらしさ。
 潤んだ瞳でじっと真雪が見つめてくる。
「前からと後ろからとボクが上に乗るのと、どれが一番いい? やっぱり上に乗る方が良いよね?」
 雄一の好みはと言えば、確かに騎乗位だった。たゆんたゆんと震える乳房を思う存分に見ることが出来る体勢だから。
 だけど、今は。
「そんなの前からに決まってるだろうが。ほら、俺の空手着下に引くからおとなしく横になれって」
「……えと」
 困ったように笑う真雪を無視して、立ち上がる雄一。脱ぎ捨てていた自分の空手着をシーツ代わりになるよう畳の上に引く。
 そのまま、すとんと空手着の横に腰を下ろして雄一は真雪を手招いた。
「でも、ホントにボクの事なんか気にしなくて良いよ? 雄一がやりたいようにやってくれたら」
 渋々立ち上がった真雪が空手着の上に寝そべる。
 畳の跡が僅かに残る腹や足をみて、それから非難の表情で見つめてくる真雪をにらみ返す。
 横になっても綺麗な形を保っている胸に一瞬視線を投げかけてから、雄一は深い溜息をついた。
「アホ」
 そして、投げ捨てた言葉に真雪が唇をとがらせる。
「俺ばっか気持ちよくても意味ないだろが。こういう事はどっちも気持ちよくならなきゃやる意味がないってんだよ」
 それだけを口にして、柔らかそうな左右の胸に優しく両手を乗せた。
 ふにゅっとした感触に暴走しそうになる意識を抑えて、雄一は出来るだけ優しく胸を揉み始める。
 最初は軽く触れた部分から震わせるように。
「……んっ! で、でもっ! ふぁっ!」
 まだ何か言いたげな真雪を無視して、少しずつ力を強くしていく。
 あまりにも柔らかく手のひらから逃げていく感触。
 雄一は壊れ物を扱うように優しく優しく手を動かす。
「んくっ! ひぁっ……あ、あのっ! あんっっ!」
 指の間を大きくあけて、わしづかみにする。その際、ソレまで避けていた桃色の乳首に、指先を走らせた。
「ふぁぁぁっっ!! や、そこ……ダメだ……ってばぁ」
 あっという間にとろけた表情を浮かべる真雪が、切なげな目で見つめてくる。
 その扇情的な表情に我慢など出来るはずがなかった。
 体を倒して真雪に覆い被さる雄一。
 右の乳首に吸い付いた。
「ひゃふっっ! ちょ、やだ、やだってば!」
 堅くしこった乳首に舌をはわせる。僅かな甘酸っぱさを感じて、激しく舐めしゃぶっていく。
「も、もう! バカ! ボクの事なんて、気にしなくて良いのに! あひっっ!?」
 まだ聞き分けのないことを言う真雪、左の乳首をぴんっと人差し指ではじいて甘い声を上げさせた。
 甘い薫りを放つ真雪の体を組み敷いている。愛している相手が自分の動きで甘い声を上げている。
 そう感じるだけで昂奮が増す。
「バカ……」
 真雪の悔しげな声が耳に届いて、次の瞬間雄一は動きを止めてしまった。
 体を浮かせた真雪の太股が、雄一の陽根に押しつけられたのだ。
 その滑らかな肌の感触と男にはあり得ない柔らかさに、背筋が震えた。
 だから、雄一は一度真雪の上から離れる。
「もう、来るの? っっ!? ダメ、ダメだよ雄一!!」
 一瞬不思議そうに問いかけてきた真雪が、雄一の動きを見て顔を真っ赤にする。


 その様子を無視した雄一は、真雪の足の間をわり開いて座り込んだ。
「バカ! バカバカバカ!! 見るな、そんなじっと見るなっ!!」
 今にも泣き出しそうな声でわめく真雪。
 ソレが可愛いなどと聞かれたら怒られそうなことを考えながら、じっと其処を見つめる。
 複雑なカタチの其処から、とぷんっと液体がこぼれ落ちるのが見えた。
「……本当は、見られて喜んでるんだろ?」
 ぽつりとつぶやいて、雄一は真雪をじっと見つめる。
 実際、口では文句を言いながら、真雪は足を閉じようとはしないのだ。
「〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
 何か言いたげな表情の真雪をじっと見つめたあと、雄一は右手を伸ばす。
 ぴくんっと全身を震わせた真雪が見つめてくる。
 ニヤリと口の端をあげて笑った雄一は、秘所に行くと見せ掛けた手をいきなり右膝の裏に当てて、ぐいっと押し上げた。
「ひゃっ!?」
 驚きの声を上げる真雪。その花弁が綻んで、また蜜を溢れさせる。
 間髪入れず体を倒した雄一は、左腕で真雪の左足を押さえ込んだまま、其処に口づけた。
「あんっっ! ちょ、雄一!?」
 生ぬるいスポーツドリンクのような味の蜜をなめとり、覆い隠している柔らかな唇に舌を差し入れる。
「ふゃっ! んーーー!! ヤダ! ヤダヤダ! あふっっ!」
 ふにふにとした柔らかな感触に心をたぎらせる。
 舌を伸ばして一番上の皮に包まれているクリトリスを舐めあげた。
「っっっ!!!」
 びくんっと足を突っ張らせる真雪。
 それが達した証拠なのだと雄一に理解できて、我慢できなくなる。
 今度は舌を堅くとがらして、真雪の中に差し入れた。
「やっ! イッてるの! ダメ、入って来ちゃダメ!! ひぐっ!」
 きゅっと舌が締め付けられる。その強さに中に入ったときの甘美さを想像して、雄一の背筋が震えた。
 だが、今はもっと真雪を感じさせたい。
 まだ殻を保ってる真雪の全部を自分の前にさらけ出させたい。
 その思いが強くなって、右手を大きく伸ばしながら真雪の膝を肩に担ぐ。
「ひゃんっ…………あぁっ……いいよぉ……気持ちいいよぉっっ!? そんな同時になんて、ふきゅっっ!」
 伸ばした右手で、真雪の豊かな胸をつかんだ。
 人差し指と中指の間で堅くしこっている乳首を刺激し、くにゅくにゅと強すぎず弱すぎない刺激を送り込んでいく。
 押し込めば簡単にカタチが崩れる程の柔らかさ、指の力を抜けば即座に押し返してくる張り。
 幸せを形にして手のひらにのせればこんな感じになるだろうかと、そんな他愛もないことを想いながら雄一は更に真雪を責め立てる。
「っ、うそっ! ボク、イッちゃう! 今イッたばっかりなのに、もうイッちゃうよ!」
 せっぱ詰まった真雪の声、きゅうきゅうと舌を締め付けてくる其処、気のせいか一回り大きくせり出した感のある乳房。
 確かに限界なのだと伝えてくる。
 だから、ソレまで遊ばせていた左手で、きゅにっとクリトリスをつまみあげた。
「っっ! っっぁぁぁ! ひぁぁぁああああああっっっっ!!」
 真雪が達した瞬間、ぷしゅっと舌を押しのけるほどの勢いで液体が飛び出してきた。
 明らかに愛液とは違う、無色無臭のさらりとした液体。
「……潮吹いてる」
 実際にその光景を目にして、雄一の昂奮は頂点に達する。
 すぐに何も言わず真雪を蹂躙したい。この中に自分のモノを押し込んでいきなり限界まで速度を上げて、思う存分中に吐き出したい。
 そんな事を想いながらも、雄一は顔を上げた。
 耳まで真っ赤にしている真雪と目があった。
「も、もう、良いよね? ……ねぇ、早く。早くちょうだい…………、ボクのおまんこに雄一のおちんちんはめて欲しいな」
 その身も蓋もないおねだりに抗することなど、雄一に出来るはずがなかった。


 ぬちゃりと先端にぬめりが走り、くっとはまった感覚があった。
「ここで、いいか?」
「うん、そこ」
 真雪の両足をM字状に開く。
 恥ずかしげな表情の真雪がとても可愛くて、心が震えた。
 少しだけ前に進める。先端が堅く閉ざされた入り口を開いていく。
「つっ!」
 それだけで、辛そうな声を上げる真雪。
 だが、雄一はその動きを止めようとしない。
 此処でやめたところで、いつかはやることに代わりはないのだ。
 下手に長引かせても意味がない。そう想った。
「真雪……、しっかり掴まってろ」
「うん」
 密着するほどに体を倒して真雪の耳元でささやく雄一。
 首に両腕を寄せて真雪が必死に縋り付いてくる。
 その様が愛おしさを増大させた。
「一気にいくぞ……、辛いかもしらんが、我慢してくれ」
「うん……ボクなら……大丈夫」
 苦しげに眉を顰めながらも、頷いてくれる真雪。
 その姿に内心で謝りながら、雄一は勢いを付けて一気に真雪の最奥まで自身を送り込んだ。
「っっっっっっっ!!」
 ぎゅぅっっ、と真雪が渾身の力で雄一の首に縋り付いてくる。
 痛いだろうに腰が引き気味になっているのに、両足を雄一の腰裏に回してくる。
 への字になっている口元が、閉じたまぶたからぽろぽろとこぼれ落ちる涙が、真雪の痛みを雄一に伝えてくる。
 それでも、雄一はゆっくりと動き始めた。
 動かないでいる方が真雪の体には良いのだと解っていた。
 それでも、動かないでいれば真雪の心には辛いと言うことも解っていたから。
「ぐっ! 痛っ! んふっ!」
 真雪の口から喘鳴が漏れる。
 まともに呼吸するのさえ辛いほどに痛みを感じているのだろう。
 なのに、一言もやめてと、動かないでと言わない真雪が愛おしい。
 余すところなく包まれる感触は、
 ぎゅうっっと強く締め付けられる感触は、
 先端がゴムの固まりの様なモノに触れる感触は、
 思わずよだれをこぼしてしまいそうなほどに気持ちよくて、だからこそ少し辛い。
 痛みを必死で堪えている真雪と違って、既に気持ちよさを感じている自分自身に、雄一は申し訳なささえ覚えていた。
「……真雪」
「ゆうい……ち?」
 痛みで意識がもうろうとしているのか、とろんとした目つきで見上げてくる真雪。
 委細構わず唇を落とした。
「んっっ!」
 そのまま舌で唇をわり開いて口内を蹂躙する。
 真雪の舌と自身のソレを絡め合わせる。
 空いた手で真雪の胸やその先端、クリトリスを愛撫しながら、腰を動かしていく。
 そんなことを続けている内、真雪の中の感触が少し変わった。
 ソレまでは強く締め付けてくるだけだった肉の隘路が、僅かに柔らかさをもって優しく締め上げてきたのだ。
 中の潤いが増したことも感じ取れた。
「っぷは。真雪、気持ちいいか?」
 だから直接ぶつけた素朴な疑問に、顔を赤くしながら真雪が頷く。
「う、うん、変だ、よね。初めて、なのに……、ボク、感じてる……、漫画だとよくあるけど……ひぁぁっっ!」
 真雪のその言葉を聞いた瞬間、雄一は真雪の最奥をノックした。
 それだけで背筋をのけぞらせる真雪。
「お……おなか、おく……あたって……いい」
 じっと潤みを帯びた瞳で見つめてくる真雪。
 口元が快楽に緩んでいるのが見えた。


 雄一のたががはずれてしまう。
「悪い、真雪」
 そう告げると同時、雄一は一気に腰を激しく動かし始めた。
「ひゃっ! ふぁっっ! ひぁぁぁぁああああっっっ!! ちょ!! 雄一!! ダメこんないきなりっっっひぐっっ!!」
 ぱんぱんと肉と肉がぶつかり合う音と、ぬちゃぬちゅと粘膜が絡み合う音が響き渡る。
「ああっっ! ひぁあぁっ! いいよ、雄一! 気持ちいいよぉ!!」
 とろけるような瞳で見つめてくる真雪。
 雄一の腰裏に足を絡めて自分で腰を揺さぶっている真雪。
 左手で必死に首に縋り付き、右手の人差し指を鉤状に曲げて唇を押さえる真雪。
 愛おしさで胸がいっぱいになる。
「真雪、真雪っ!」
「雄一、ゆういち、好き、好きぃっっ!!」
 ぎゅうっっと、また真雪が強く締め付けてくる。
「ひゃふぅっっ! や、うそ! ボクイく!? イッちゃう!?」
 びくびくと全身を痙攣させる真雪。
「あ、ああ、俺ももうすぐだ!」
「いっっ……しょに…………一緒に!!」
「ああ、解ってる!」
 本当はいつ達してもおかしくないことを、雄一自身解っていた。
 唇を噛んで堪えながら激しく腰を打ち付けていく。
 先端が最奥に当たるたび、腰をのの字に動かして膣壁をこすりあげるたび、甘い甘い声を上げる真雪。
 もう、我慢も限界に近い。
「はっ! んぐっ! ゆう……い……ちぃっっ!!!」
 今まで以上に激しく抱きついてきて、強く締め付けてきた。
「イ…………く………………イッちゃうっっっっっっっ!!!!!!!!」
「真雪ぃぃっっっ!!」
 真雪の背中に手を回して強く抱きしめながら、どくんっと中へ精を放った。
「……ぁ…………あつ……い」
 ぴくんぴくんっと注ぎ込むたびに小さく痙攣する真雪。
 愛おしさを伝えるために、雄一はその唇に触れるだけのキスをした。




「雄一〜〜」
「なんだよ」
 制服に着替えてきた雄一の隣に座る衣服を整えた真雪。
 その真雪が雄一の肩に頭を預けて甘い声で呼びかけてきた。
「ん〜〜、呼んだだけ」
 そう言いながら見上げてくる真雪の表情に、今まで感じたことのない女の艶の様なモノを感じて、どきんっと心臓が高鳴った。
「そういえばな」
「ん?」
 その表情を見ているとまた疼きそうで、視線をそらしたまま疑問に想っていたことを口にする雄一。
「何で真雪は男の格好なんてしてたんだ? ……あ、応えにくかったら別にいいけどさ」
 ちらりとみた真雪の表情が不満そうに歪んでいる事に気づいて、雄一は慌てて言葉を付け足す。
「ん、別に答えにくいって事はないけどね。……ウチって無駄に歴史だけはあるんだけどさ、先祖代々伝わる古武術があってね」
「……もしかして、ソレを受け継げるのは男だけで、真雪のところはみんな女だったからとか……、いやまぁそんなわけないよなぁ、あははは」
 思わずつっこみながら、そんな想像をした自分に笑ってしまう雄一。
 だが、苦笑を浮かべる真雪が頷いたのをみて凍り付いた。
「このご時世に何言ってんだって話だよね。でもまんまその通りなんだよねぇ」
「……マジかよ」
 流石に呆れながらの呟きに、真雪が不機嫌そうに唇をとがらせた。


「うん。で、ウチの古武術って基本的に家系伝承で外から門弟とかも取ってないんで、ボクにソレが押しつけられたんだ。一応、姉さん達が婿取りしてその相手に伝える事になったら女に戻って良いって言われてたんだよ」
 そのすねたような口ぶりに、雄一は思わず苦笑を浮かべていた。
 四姉弟……、いや四姉妹の末っ子の真雪。
 三人の姉は、上からプログラマー、考古学者、商社マンと結婚して家を出てると、聞いていた。
「全く姉さん達はボクのことなんてどうでもいいって想ってるんだよ」
 むーっとふくれっ面を浮かべる真雪の頭をぽんぽんと軽くなでる。
「そんな事言うなって、真雪だってお姉さん達好きなんだろ? お姉さん達もきっと一緒だよ」
「……まぁね」
 不意ににへらっと笑う真雪。
 なんだかんだで真雪が可愛がられていることは雄一だって知っているのだ。
「でもさ、ホントのこというと、ボクが一番ショックだったのは、自分が女だって解ったときかな」
 その何気ない一言に、雄一は呼吸を止めた。
 しばし何も言わず真雪を見つめる。
 いつの間にか視線をそらした真雪の横顔だけが視界に映る。
「ボク、子供の時から男として育てられてたんだ。だから、女だって解ったときは凄くショックだったんだよ。もう一週間くらい部屋に引きこもってたくらい」
「あーと、お姉さん達とかに聞いたことなかったのか?」
「うん、姉さん達もその話題には絶対に触れるなって、じいちゃんに釘さされたんだって」
 ふくれっ面のまま、あさっての方向を向いてる真雪。
 ソレが少し寂しくて、雄一は真雪の肩に腕を回した。
「あ…………、ま、そう言うことなんだよね。でも、自分がホントの意味でオンナだって気づかされたのって、実は雄一を好きなってからだったりするんだ」
 そう言いながら不意に顔を上げた真雪が嬉しそうに笑う。
 その笑顔は正直反則的なかわいらしさで、思わず顔が真っ赤になった。
「あ、ああ、そうなのか」
「うん。でも、雄一には迷惑かけることになっちゃうけど、平気?」
 どこか寂しげな声の真雪に、雄一はただ首をかしげる。
「ボクさ、気持ち隠せないよ。雄一の側にずっといたい、こうしてべたべたしていたい。けど、校内でそれすると雄一ホモ扱いされちゃうよ?」
「あ……、あーあー、確かにそうか」
 確かに周りから見ればそうなるなと、そんなことに今更気づく雄一。
「ボクはオンナだし、どういわれたって構わないけど、雄一辛くない?」
「アホ」
 つんっと空いてる手で真雪の眉間を軽く押した。
 不思議そうな表情で見つめてくる真雪に、雄一は笑顔を向ける。
「人にどう思われようが関係ないさ。確かに俺自身悩んでたのは事実だが、その原因がないんだから悩む必要もないし、周りなんて無視するさ」
 真雪のあごに指を当てて少し上向かせ、軽くキスする。
「……はふ……、んー、ま雄一がそう言うんならボクはソレで良いけどさ。あ、あと、ボクとつきあうって、ちゃんとボクのこともらってくれるんだよね?」
 その言葉が意味するところを読みとって、僅かに顔を赤らめながら頷く雄一。
 Hまでしておいてふったりするなんて、考えることすら出来ないほど古いのが雄一なのだ。
「でも、雄一空手できなくなるよ? ボクと一緒になるって事は、ウチの古武術継ぐことだし、ウチは基本的に試合とかそんなのもしちゃいけないんだよ。それでもホントに良いの?」
「当たり前だろうが」
 段こそ取ってないモノの、周囲からは期待の新星と呼ばれる雄一。
 真雪の心配はある意味当然のことで、だけどそれは雄一からすればあまりにも的はずれなもの。
「俺は、強くなりたかっただけで、たまたま近くにあったその手段が空手だっただけだ。だから空手と真雪を天秤にかけるなら、真雪の方が重くなるってもんだ」
「言っててハズカシくない?」
 頬を紅潮させて見つめてくる真雪。
「当然、ハズカシいに決まってるだろうが! そんなことより今日は帰ろうぜ」
 慌てて視線をそらしながら、真雪の肩から手をはずす雄一。


 そんな雄一を、じっと真雪が見つめてくる。
「今日はいつものゲーセンか喫茶店でもよってくか?」
 ひょいっと立ち上がって、真雪に向かって手を伸ばす。
 その手にすがって立ち上がった真雪が、苦笑を浮かべて首を左右に振った。
「あー、今日はパス。……なんて言うか、動きづらいし今日は早く帰りたいかも」
 すこしがに股状になっている真雪。
 その理由に思い至って顔を赤くする。
「何せ、珈琲缶くらいの太さのが股の間に入ってたんだからさ」
 あっけらかんとした真雪に、思わず苦笑が浮かぶ。
「ま、数こなせばなれるだろうけどな。じゃ、肩かしてやるから、今日はまっすぐ帰ろうぜ」
「うん、ありがと雄一……んっ」
 雄一の右肩に左手を乗せた真雪が、不意に背伸びをして頬にキスしてきた。
「じゃ、帰ろっ!」
 むやみやたらに元気な真雪に、苦笑しながら雄一は歩き出した。
 これから色々と騒がしい日常が始まる事に、僅かな不安と大きな期待を抱いて。


Index(X) / Menu(M) / / Next(N)