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一応、敲き台として 3

1_34氏

「あ、朱美さんの着ている服ですか!?」
「そうよ」
 こともなげに朱美は言う。潤が戸惑うのも無理はなかった。4号店の制服−
トロピカルタイプはおへそを出したセパレートタイプのものであり、露出度に
関してはPiaキャロット、いやファミリーレストラン業界でもダントツで一番と
いえるほどで、なにしろ肩のストールと腰のパレオを取ってしまえば大胆な
ビキニと大差のない代物であった。
「あっ、でも僕のサイズにあったものが・・・」
「う〜ん、ともみちゃんかナナちゃんのだったら・・・」
 乗り気な朱美とは対照的に潤の方は困っていた。
 男装でバイトをしていて周囲にバレなかった、あるいはさほど不自然でなかった
のは潤の演技力という点もあったが、女性にしては高い目の身長とそれに反比例
したかのような小ぶりな胸という点も大きかった。今ここにいる二人を比較すると、
身長は潤が165センチ、朱美は156センチと潤の方が9センチ高いのであったが、
バストになると潤が77センチ、朱美が86センチと今度は朱美の方が9センチ大きい
のであった。もし潤が朱美のようなスタイルであったら男装なんて演技以前の問題で
バレてしまうのは間違いなかった。
 トロピカルタイプのような制服は朱美のようなスタイルのいい女性が着ると映える
のであって、自分のような貧相なスタイルではみっともないだけだと潤は思い込んで
いた。だから2号店のメイドタイプの服は着れても4号店のトロピカルタイプやもう
一つのフローラルミントタイプを着るのはとても恥ずかしいものであった。
 無論、朱美の方に悪意はなかった。むしろ、潤の考えていることがある程度把握した
うえで、この制服の良さと自分のスタイルに自信を持って欲しいという考えがあった。
「そうね、最終日には着て入ってもらおうかしら」
「えっ・・・でも・・・・・・」
「恥ずかしがってはいけないわ。女優だったら何でも着れないと」
 どうやら本気で潤に着させようと思っているようだった。
「ぼ、ぼく、裏口の方を見てきます!」
 返答に窮した潤はそう言って裏口のほうに向かった。


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