34 手を繋ぐ








 夕食が近づいても姿の見えない十代を捜しに出たヨハンは、海に面した大木のふもとで眠る十代を見つけてしばらくその寝顔を見下ろしていた。今日の夕焼けはいつにも増して鮮やかだ。十代の髪を顔を、赤い制服もオレンジに染めて十代は少し眩しそうだ。
 あどけない寝顔は、ヨハンの胸の深いところにやわらかく落ちていった。
 最初、十代の印象は、凝縮された曇りガラスの色だった。赤だとか茶だとか彼自身を彩るカラーではなく、白く仄かに薄青を帯びた残像が、初対面のときからヨハンの瞳に積もり続けている。それはデュエル時に楽しそうにきらめく眼差しや底抜けに明るい彼の笑顔や、普段の十代を知っていっても変わらなかった。それが不思議で、ヨハンはこの頃十代をよく見るようになった。
 それにしても今日の十代は、懐かしいような。穏やかに十代の胸が上下するのを見ているのは心地よかった。何となくヨハンは十代の頭のそばに膝をつき、何となく髪に手を伸ばした。
 あと少しで触れるところで、塩気を含んだ風が不意に強く吹き抜けた。
 寝ていたら肌寒いだろう、ヨハンは慌てて我に返り、十代を揺さぶった。服越しにも体温の高さが伝わって、少し驚く。
「十代起きろ、」
「……ん、…?」
 ぼんやりと目を開いた十代からは子供の匂いがした。
「もうすぐ夕飯だよ」
「いっけね〜!!うっかり寝ちまったぜ!あ、もしかしてヨハンさがしにきてくれたのか?サンキュな!」
 軽々と飛び起きた十代はもう、普段と何も変わらない。早く帰ろうぜ、と笑って歩き出したその背はやはり、いつものガラス色をまとっている。
 掴みかけたものがすっかり掌から零れ落ちてしまった気がして、ヨハンは少し落胆した。
何かを引き留めるように呼べば、
「……ヨハン?変なカオしてるぜ」
振り返った十代は、まだ沈みかけの夕陽に何もかもを染めている。ああ、赤だと思った途端胸の奥がぎゅうと引き攣れた。
「何でもないさ、」
 早く早くと自分を急かす十代の隣でヨハンもその赤に染まった。






初gx。十代に夢があるので難しい…(憧れるほど攻ではないところがまた)。


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