「―――あ、ああ!携帯!!」
 玄関で靴を取った瞬間、思い出した。いつもならカッターシャツの胸ポケットに入っていて、靴を地面に下ろす時は、落ちないように慎重に下ろすのが日課で。大事な、大事な携帯ちゃん。多分自分の教室の机の中。
 取りだした靴を下駄箱に無造作に突っ込んで、教室まで後戻り。時計はまだ四時、本来なら部活をしている時間だったりする。でも今日は違った。たった今、退部してきた所だったりする。うん、やったね、わたし!
「あっれ…、、かな?」
 自分の教室に向かう時には必ず通る、隣の教室。はそんな隣のクラスの男子で、ロッカーの上に座って、一人携帯を弄っていた。何やってんだろう。
 そのまま自分の教室に行って携帯ちゃんを助け出した。胸ポケットに入れる。重みを感じる。ああ、いつもの感じだ。教室を出た。
ー」
 隣のクラスの前を通りがかると、ロッカーの上から声がした。手招きをしているが見える。
「なーに」
「ちょっと来い」
 手招きをしていたは、ピョンとロッカーから下りた。弄っていた携帯を、自分の胸ポケットにしまう。
「はいはい、何でしょう…って、痛!」
 の前まで来たら、デコピンが飛んできた。バチンと景気の良い音がして、すぐにじんじんと痛くなる。その一点が、熱い。わたしのこころも何もかも。
「バァーカ」
「いったいなー…。デコピンするためだけに呼んだの?」
「ん?そ」
 ヘラッとは笑った。ああ、何か小動物みたい。
と話したかったからさー」
「あたしもー」
 照れて言ったは、あたしの言葉に面食らったようだった。でもすぐに嬉しそうにまたヘラッと笑う。あたしも同じように笑った。
「部活は?」
「今さっき、辞めた」
「そっか」
 あたしの額にの手が触れた。それからぺしっと優しく叩く。
「お疲れ」
「うん」
「つらかった?」
「…うん」
「頑張ったね」
「――…うん」
 胸の奥にじんわり沁みた。心がぎゅっと痛くなる。
「泣きたい?」
「ううん、笑いたい。…と」
 包み込むように一度ぎゅっと抱き締められた。鼓動と呼吸の音が重なる。すごく、心地が良い音。

「――さて、帰るか!」
「うん!」
 から差し出された手を取って、あたし達は教室を出た。何での隣はこんなにも安らぐんだろう?
「んじゃ、の退部祝いに何か奢ってやりますか!」
「やった!じゃあ服と、あと靴も欲しいな」
「コラコラ、た・か・す・ぎ!」
「缶ジュースでいいよ」
「じゃあペットボトルで行きますかー」
 手から伝わる熱が、こんなにも、こんなにも愛しい。たまに触れる方が、こんなにも、ほら、ドキドキするんだ。
「ありがとね、
「いえいえ、礼には及びませんって」
 時間が止まればいい、なんてね!
YOU