「――あれ?」
「え?」
さんじゃん」
「…誰?」
「俺?じゃあ、アズサって呼んで」
「……アズサ?」
 昨日、ずっと付き合っていた彼氏と別れた。他校の子が好きなんだって言って、もう付き合えないと言った。誰も来ないと思って屋上で一人泣いていたのに、「アズサ」という人が来た。一年間過ごしてて、一回も会ったことがなかった男子。金に染めた髪は、灰色のカラコンをした瞳は、絶対に目立つはずなのに。

「ねえ、。アズサって人知ってる?何組?」
「アズサ?さあ…知らない、つかこの学校にいないし」
「ええ!?いないのっ!?」
 じゃあ、昨日のアズサは誰だったの?幽霊でも見てたの?え、ちょっと、違うでしょ?
「アイツじゃね?」
「アイツ?」
 小説を読みながら話に参加しているは、眼鏡を鼻の上に戻しながら呟いた。
、金髪に灰色のカラコンの奴だろ?」
「そうそう!」
だよ、。アイツに会うとか凄いな」
 小説から目を離そうとしないから、あたしは本を取り上げた。がイラつきながらも、やっとあたし達の方に目を向ける。
…」
「何で凄いの?ね、ね、何でそのって人に会うと凄いの?」
「何で…ってアイツ最低出席日数しか学校に来ないし、来ても保健室か屋上にいるから」
 最低出席日数は…百日だったっけ?そう思うとつくづく緩い学校だな、と思う。
「奇跡だよ、そんな奴に会うなんて。しかもアイツ色々名前変えてるらしいし」
「名前を変えてる?」
「そ、アズサ、レツヤ、ショウゴ、カツオ…え――、オリバーとか勘左衛門とか」
「なんじゃそりゃ」
 「あれは放浪癖があるから」とが言った。
「ふーん。放浪癖ねえ…」
「でもアイツはモテるからな。つっても、噂だけで惚れる奴がほとんどだけど」
「噂だけって…どんだけ軽いんだ」
「ま…俺もそう思う。本返して、
 また、屋上に行ってみよう。また、会いたいな。…その前に、何で百日しか来ない奴に名前覚えられてるの、あたし?

「ぷあー!気持ちいい〜」
 やっぱり屋上が一番落ち着く。青い空も見れるし、白雲も見れるし、心も晴れるし。
「…また来た」
「え?」
「俺、アズサ」
「知ってるよ、って言うんでしょ?」
 そう言うと「アズサ」は驚いたような顔をした。知らない、と思ってたみたい。
「誰だよー、俺の存在バラしたの」
だよ」
?…知らんなあ」
 友達、とかいるのかな?いなさそうだよね、百日しか来ないんだし。
「友達だったら、あたしがなってあげよっか?」
「は?」
「だって、作れなさそうだし」
 ぷはっ、と吹き出した「君」。笑うと、結構可愛いんだな。
「んじゃ、お願いしようかな」
「じゃ、よろしくー」
「ついでに、俺のモノにもなってよ」
「はい?」
 飛ぶように歩きながら、こっちにやって来る。傍から見た君は、遠くから見るよりとってもカッコ良かった。背、意外と高い。
「俺のモノになってよ」
「あたしは物じゃない」
「じゃ、俺だけのになってよ」
 真面目な顔して見つめられると…ヤバイなあ、目を見れないよ。
「ねえ」
「………」
「何か言わないと、喰うよ?」
「くっ!?」
「全部喰うよ。それでもいいの?」
 なななな何か、言葉が意味ありげなんですけど?
「いや、喰われたくはない、かな?」
「んじゃ、唾付けとく」
 目の前がいきなり暗くなって、目を細める。唇に生暖かい感触、そしてそれが君の唇だって分かるのに、時間はかからなかった。
「…なっ!」
「完了」
「何がっ!」
「何って、これでは俺のモノ」
 笑った君の顔は、逆光でよく見えなかったよ。君の笑顔が太陽より眩しすぎて、よく見えなかったよ。
Who are you?