好きなんです、あなたが大好きなんです。でも、ずっとずっと答えてあげられなくて、ごめんね。
「あれ、髪型変えた?」
あたしの前の席の男の子、くん。いきなり朝声かけられて、ちょっとびっくりちょっと嬉しい。
「今日はちょっと髪を結ぶ時間がなくって」
「俺は髪の毛結ばずに、めがねを取ったさんのほうが、好きだな」
「あ、そう?」
好き、だなんて、軽々しく言わないで。調子に乗っちゃうから、勘違いしちゃうから。あなたの傍に、あたしはいられないのに。
「学生証見せてー」
「やーだ、変な顔だもん」
「俺のも見せるからさー」
その言葉で、あたしは彼に学生証を見せる。「あなた」が見たかったから、ただそれだけのことなのに。「…じゃあ、はい」とあたしは学生証を手渡した。
「お、やった」
「笑わないでよー」
「笑わんって。…あ、何でめがね取ってないんだよ。そっちのほうが断然いいのに」
また、やめてよ。舞い上がっちゃうじゃない、そんなこと言われたら。
「ま、いいけど」
「くんかっこいいねー」
「お世辞言うない」
「お世辞なんかじゃないよ。凄くかっこいい…」
「さんのほうが可愛いよ」
あたしが、一生かかっても傍にいることができないのに。可愛い、なんて言わないで。好きだ、なんていわないで。虚しくなっちゃうから、あたしを見ないでください。
「…何で泣いてるの?俺、変なこと言った?褒めたじゃん」
「褒めないでよー…」
「へ?」
「だったあたし可愛くないもん。可愛くないのに可愛いって言われても、全然嬉しくないもん…」
「…何で?可愛いじゃん。俺滅多に言わないよ、女の子に可愛いなんて」
「本当のことだよ。俺は可愛いと思ってるもん」とくんは真面目な目をする。可愛いなんて、言われたことないもん。
「だって…」
「俺が可愛いって言ってるからいいの。俺にだけ可愛くなればいいの」
「…くんに、だけ?」
「他の奴に、お前の可愛さを見つけて欲しくないの、俺は」
何であたし何かに構うの?クラスでもいい意味でも悪い意味でも浮いているわけじゃないし、存在感なんてあったもんじゃない。のに、何で「俺にだけ」何て言うの?
「くんには…好きな人いないの?」
「いるよ」
「だったら何であたしに構うの?その人のところに行けばいいじゃん」
「あのね…現にいるじゃん。俺は積極的なところが取り柄なの、知ってるでしょ?」
「それくらい知ってるよ。どこにいるの、好きな人」
「……おま、鈍感すぎだろ…。俺の目の前にいるじゃん。さん、お前だよ」
「はい?」と声にならない声。それって…告白ですか?何だか、無性に恥ずかしくなって来たんですけど。
「あ、赤くなんなよ。恥ずかしーだろ」
「あ、たしも…好き」
「…え?何って?」
「好きです」
「聞こえない、もう1回」
くすくすと笑うくん。意地悪、絶対聞こえてるくせに!あたしは窓の傍まで行くと、グラウンドに向かって大声で言った。
「あたしはっ…!が大好きだ―――――っ!!!」
「ちょっ!マジ恥ずかしーって、嬉しいけど、やめろっ」
「…これなら、聞こえるでしょっ」
「…俺は―――!が俺を好きな気持よりもを愛してる―――――――っ!!!!」
その後、あたし達は学校公認のカップルになった。あたしもちょっとだけ、クラスに馴染めたかな。
好きだな。