不器用に、恋
俺と同じクラス。
席はまぁまぁ近めのところ。
そこにいるのが君。
気がつけばいつのまにか5年間も同じクラスになってたりする。
高校だって打ち合わせたわけでもなんでもないのに
同じになってしかもクラスも一緒。
いわゆるクサレ縁みたいなもんだ。
それだけ一緒だったら嫌でも仲良くなる。
だから俺と一番仲いい女子だと思う。
いつから好きになったのか覚えてないけど
気がつけば君の行動一つひとつがすごい可愛く見えたり
なにげない仕草にドキッとしたり。
でもそういうのを彼女に気づかれたくなくて
ついつい意地悪しちゃったり。
「!今日私たち日直だって。」
俺が友達とトランプをしていると後ろから可愛い声。
「マジ?めんどくせー。」
「日誌書くのと黒板消すのどっちがいい?」
「はどっちがいいの?」
俺はのほうに振り返って逆に質問をする。
「んー日誌がいい…
「じゃ、俺日誌ー!」
が言い終える前にわざと意見をかぶらせる。
「えー、ずるいよ!じゃんけんでしょ?」
「いいけど、俺に勝てんの?」
俺がにやりと笑ってそう言えばが頬を膨らませる。
「む、勝てるもん!…多分。」
「よーし、終わってから三回勝負、とか言うなよ?」
「そっちこそ!」
「「最初はグー」」
二人で声を揃えてジャンケンのお決まりの台詞を言う。
「「じゃーんけん、ポン!」
二人の視線がお互いの手元に移る。
俺の手はグー、
の手はチョキ。
要するに俺の勝ちってワケ。
「ほらなー、やっぱ勝てねぇじゃん!」
「うっ・・・い、今のはたまたまだもん!」
「へぇ…たまたま…ねぇ?」
俺が軽く口の端を上げてニヤッと笑えば
はそれ以上なにも言い返せなくなったらしく
すこし俯いてしまった。
「じゃぁ、ちゃんと日誌書いとけよ?」
俺は俺を無視してトランプを続けている友達の方に
向き直り、に背を向けたままそう言った。
「ぅえ?何で…だって私負けたし。」
「ホントは黒板がやりたかったんだよ!
じゃんけんに勝ったら好きなほう選べるんだろ?」
「う、うん。そうだよ。ホントにイイの?」
「良いっつってんじゃん。それとも黒板にする?」
「いいですっ!日誌書きます!」
はピシッと背筋を伸ばして敬礼をする。
「ははっ、よろしい。」
俺はのほうから顔を逸らして
気にせずトランプを続けている周りの奴らに
「俺も混ぜろよ!」と言って男たちの輪に入り込んだ。
「、日誌書けたか?」
放課後、みんなが教室から出て行く中、
一人席に座ったままのに声をかける。
「あ…。一応…終わったぁ…」
俺のほうに顔を向けたの顔は妙に青ざめていた。
いつものの笑顔も無い。
「どうした?。めっちゃ顔色悪いぜ?」
「わかんない…すっごい寒くて…頭痛いの。」
「それ、思いっきり風邪じゃねぇかよ。
早く家帰れよ!」
「でも、これ先生に出さなきゃ…」
は日誌を手に持ってそう言った。
「馬鹿っ!そんなの俺が持ってくからいいよ。
はさっさと帰って寝ろ。」
「むー…馬鹿じゃないもん…」
「今はそういうこと言ってる場合じゃねぇから。
ほら、早く帰れ。」
「うん…」
俺はが帰る準備をしたのを見届けてから
日誌を先生のところへ持っていこうと教室から出た。
その時、教室の中からガタッという物音が聞こえた。
俺はちょっと気になったので数歩戻って
教室の中を覗いた。
「っ?!」
教室の中を覗いたらは机と机の間にうずくまっている。
というよりもう、倒れた、といった方が近いかもしれない。
「あれ…、帰ったんじゃなかったの…?」
「馬鹿!それどこじゃねぇだろ。ったく…」
「ごめん。もう大丈夫…だよ」
「ん家近かったよな?ほら、行くぞ。」
俺はの目の前にしゃがむ。
「え…?」
「早く乗れって。この体勢辛いんだよ。」
「無理だよ…いいよ、帰って。」
「早く。」
そういうとはしぶしぶ俺の肩に手をかけて
背中に乗った。
「ごめんね…重いよね。」
「めっちゃ重い。」
こんなのカナリの嘘。
は乗っているのを忘れてしまうくらい軽い。
でもつい意地悪言っちゃう。
素直になれたらいいのにな。
本当は日誌を出して行かないとだけど
こんな状態で職員室なんか行けないし。
明日でいっか、とそのまま下駄箱へと向かう。
「ん家、どこ?」
「ここ、ずっとまっすぐー…」
「あっそ、じゃぁ家に着いたら言えよ?」
「うん。」
の家に着くまで俺たちはひと言も喋らなかった。
は多分、辛かったんだろうけど、
俺は
をおんぶしていると思うと恥ずかしくてろくに喋れなかった。
「あ、ここ。」
「ホントに近いな。」
「ありがと、もう大丈夫だから…」
「中入っても大丈夫か?」
多分"降ろして"って言おうとした
の言葉を遮るように言葉を発する。
「ここで大丈夫だよぅ…」
具合が悪いからなのか
の声はか弱くて小さい。
「また倒れられたら俺も困るし。で、大丈夫?」
「うん…」
あー、なんで素直に"が心配"って言えないんだろう。
頭の中では言おうって思っているのに
いざ言葉にするとひねくれた言葉しか出ない。
俺はをおぶったままから受け取った鍵で扉を開ける。
そしてに聞いた
の部屋までいく。
さすがに女の子の部屋に入るのはまずいかな。
だけどここまで来たんだからどうせだったら
布団まで運んでやりたい。
「部屋、入っても平気かー?」
「平気…汚いけど。」
「部屋は持ち主の性格表すって言うもんなー。」
「むー、どういう意味よぉ…」
多分ふくれっ面をしているんだろうけど
弱々しくて迫力なんか微塵も無い。
こうやっての部屋に入るなんてなんか彼氏みたいだ。
本当にそうなれたらいいのに。
はどう思ってる?
俺のこと少しは意識してくれてんのか?
きっと鈍感な
のことだから、
俺の気持ちなんか全く気がついてないんだろうな。
「ほら、さっさと布団入れ。」
の部屋に入りベッドの横にしゃがむ。
するとゆっくりと
玲奈の体温が離れていく。
布団に入り込んだのを確認して立ち上がる。
「じゃー、俺帰るから。さっさと治せよ?」
そう言ってに背を向けて歩き出そうとした。
…でも出来なかった。
後ろから軽くツンと制服を引っ張られたから。
振り向けばの細い指が俺の制服を掴んでいる。
「…何?なんかあんのか?」
「風邪引くとなんか弱るんだね…心細くなっちゃった…
だからもうちょっとだけここにいて…?」
熱の所為なのかの頬は紅く染まり、
瞳は少し潤んでいる。
もともと可愛いのそんな顔を見たらなんか急に恥ずかしくなって
に背を向けたままベッドの横にどかっと腰を下ろした。
「仕方ねぇな、あと少しだけだぞ?」
ホントは頼られて嬉しいって思ってるのに。
なんでこんな気持ちを上手く伝えられねぇんだよ。
「うん…ありがと…」
いつもなら言葉が出るのに
今日は何を喋っていいのか分からない。
ていうかかなり緊張してる、俺。
しばらくすると背中から規則正しい小さな寝息が聞こえてくる。
体を反転させて
のほうに向き直れば
無防備な、可愛い寝顔をして
が眠っている。
なんでそんなに無防備なんだよ。
これでも一応俺は男だぞ?
少しは意識しろっつうの。
「可愛い顔しやがって…襲っちまうぞ…」
の髪の毛を優しく撫でながらそう呟く。
すると
が少し声を出した。
俺はびっくりしての頭に置いていた手を咄嗟に避ける。
しかし寝言だったらしく
は再び小さな寝息を立て始めた。
これ以上いたら流石に我慢が出来なくなりそうだったから
俺は帰ろうと思って立ち上がる。
「…」
ドアノブに手をかけたとき後ろから小さい声で名前を呼ばれた。
起きちゃったのかと思って近くに寄る。
「どうした?…」
「好き…だよ。」
本当に小さな声。
聞こえるか聞こえないか位のかすかな声。
でも聞き間違いなんかじゃないよな?
"好き"って言ったよな?
は俺の心臓の音を無視して
すやすやと眠っている。
多分寝言だったんだろう。
でもその言葉、俺は信じてもいいよな?
「俺も好きだよ、。」
の耳元でそっと囁く。
俺の言葉、聞こえた?
元気になったらもう一度
ちゃんと君に伝えよう。
不器用なこの恋を。
藍緒さんに頂きました!ありがとうございます!