受験生だから、という理由で行っていた塾に、大好きな人がいました。
「ここどうやるの?」
「何だ、お前。まだできねーのか?」
 先生です。下の名前は知らない。
「苦手なのー!さん教えてー」
「この前教えたろ!?はマンツーマンじゃねえとできねーのか?あ?」
「うう…。ごめんなさい」
 ドSで暴力まがいなことしてきて、ちっとも先生には見えない人。だけど誰からも信頼されて頼もしい人。
 好きになっちゃいけないと分かってた。学校でも塾でも先生は先生で、教える立場にいることには変わりはない。だけど、好きになってしまったんだ。こんなことなら、何でもっと早く塾に入らなかったんだろう?と、何度後悔したことか。
 受験もとっくに終わり、もう一年が経とうとしてる。塾にも行っていない今となっては、会いたいと願っても無理だ。それに塾に遊びに行っても、もうあの人はいない。どこか遠くへ行ってしまった。今どこにいるの?塾長になんか聞けるはずがないよ。
 だけど新しい土地でも、あたしの面影を探しててほしい。忘れないでほしい。こんな奴もいたってこと。
 ありがとう、先生。大好きでした、先生。

「塾長!」
「あ、ちゃん久しぶりー。先月先生が遊びに来てたよ」
「うわあ、懐かしい!」
「エクセル教えてもらったんだけど、やっぱりちゃんの方が教え上手だなーって思っちゃった」
「じゃ、今度来たら役立たず、って言っておいて!」
 そして、あたしは元気だよ、と。
 ね、先生。
先生