分厚い制服からカッターシャツに変わり、女子たちの胸元は大きく開く。日焼け止めを塗る姿、混ざりに混ざった制汗スプレーの香り。熱気の漂った教室、下じきやうちわや扇子で仰ぐ姿。
考えてみたら少なかった、夏を迎える回数。当たり前のようで、一年間のうちに夏は一回しか来ないんだ。と過ごす三年間のうちで、一緒の夏を迎えるのはたった三回なんだ。
知ってるか?どれだけ俺がお前のこと見てると思ってんだ?
「それ貸して」
「え?やだ」
「五秒だけでいいから」
「じゃ、五秒だけ」
そう言ってから半分奪い取るように借りた、桃色の扇子。はぶつくさ言いながら、俺に向かって言った。
「いちにさんしーご!もう五秒経ったよっ」
「はえーって、お前」
「もう五秒経ったってば!」
「もーらった」
「ちょっとっ!!」
俺の名前を呼んでほしくて。だからわざと名前を呼んでもらえるように仕向けてる。こんな俺って、本当に素直じゃないよな。本当に呆れるくらいひねくれてるよな。
「返してー」
「はいはい」
それでもやっぱり、の嫌がる顔は見たくないから。すぐに返しちゃう、俺。こんなことやらずにもっとと喋ればいんだけど、それが無理なんだよな。
「も買えばいいじゃん」
「そうするよー」
「は青ね。そしたらおそろっぽいじゃん?」
何て君は無邪気なんだろう?
「あ、でも桃色の反対は水色かなー?」
最後の夏が、始まった。
この夏だけは君と共に