ちょんちょんと横から肩を叩かれてそちらを見ると、通路一つ分空いた向こう側から、両手を合わせて頼むようにしてあたしを見るが目に入った。
「何だ何だ?」
「プリント見せてください」
そうやっては深く頭を下げた。あたしは思い付いたように笑って、国語の授業用のプリントを目の前ではヒラヒラはためかせながら言った。
「お菓子ちょうだいね」
「…う、考えときます」
プリントを半ばあたしから奪い取るようにして取ったを尻目に、あたしは古語辞典のページを適当に捲った。
プリントは右隣ののもとに出張中だし、ただでさえ教室の左後ろの端っこに位置しているあたしで、前の子は今日も休みで多分明日も休みだろうと思われる休学中の子。の前の席の子とは一回も会話をしたことがない。唯一話せるは今プリントに集中しているしで、そんなんだからあたしは古語辞典に目を通す羽目になる。
またちょんちょんと肩を叩かれた。
「ありがとー」
「じゃがりこがいいな」
「は?甘えんじゃねーよ」
「どっちが」
からプリントを強引に奪い取って、「じゃあもう何も見せてやんない」と言うと、はすぐさま「ごめんなさい」と謝った。そこであたしはもう1回ニヤッと笑う。
「見せて欲しかったらお菓子ちょうだいよー」
「菓子くらい自分で買え」
「やだ、めんどい」
「めんどいって…コンビニ寄るだけだろ」
「それがめんどいんだって」
あたしがそうやってわざと膨れっ面をすると、は押し黙って何かを考えていた。そして溜息を漏らして何かを決心したようにガッツポーズをした。
「じゃがりこだな?」
「え、買ってくれるの!?」
「あ、嘘だったの?じゃあいいや別にいらないよね」
「嘘じゃないです本当です。ありがと!」
はあたしを見て呆れたように笑った。
「子供だな、お前」
そのどこか嬉しそうに笑う顔が、いつまででも頭から離れなかったよ。
授業中風景