は卒業だなー」
 休み時間、前の席のがふとそんな言葉を漏らした。何が卒業なんだと思って携帯を触る手を止める。送りかけのメールごとページを閉じずに携帯を閉めた。
「何のこと?」
「これからはの時代な」
「あたしの時代?」
「名前だよ、なーまーえ!」
 あたしは「ああ、そゆこと」と小さく呟いた。やっと言葉の意味を理解できた。は今まであたしのことを苗字で呼んでた。それをこれからは名前で呼ぼうと笑った。前後の席になって急激に仲良くなったあたしたち。
「あーそう言えばさ、お前英検の準二持ってたよな?」
「うん。あ、受けるんだったよね?頑張ってよー」
「でさテキストとか持ってない?」
「あるよー。買ったけど真っ白なやつが」
 千円もしたけど、結局一、二ページで断念した。途中で面倒臭くなって、何でこんなことしてるんだろうと思った。でもそれでも受かったんだからまあいっか、ってホコリ被ったまま置いてある。
「明日持ってきてー。で貸して欲しいなあ」
「あげるよ。どうせ使わないし」
「マジ!?うわーありがと、すっげ助かる!」
 前後の席になって、だんだんとに惹かれているあたし。それはあたし自身も自覚してる。まだまだ恋や愛にはなってないけど、結局の所アンタのことが好きなんだよ。別に気付いて欲しいなんて思ってなくて、できるなら気付かずにそのまま生活していきたい、なんて思ってる。
「明日持って来いよなー」
「何が奢ってね」
「ジュース一本ならいいよ」
「よろしく。百五十円のね」
「…了解致しましたー」
 今度はあたしからを卒業して、って呼ぶから。
graduation