あたしと、君と君と、ちゃんは一緒の掃除場所。ほとんど誰も通らない廊下に面した、技術室。先生も滅多に見回りに来ない。だって優等生のくんとちゃんがいるから。だからくんは、いつも掃除をサボって寝てるんだ。そんな彼のこと、あたしは大好き。
「さん」
「ん?」
「はい、鍵」
「へ?」
君からいきなり渡された、技術室の鍵。鍵をいつも持っていて、開けるのも閉めるのもするのはいつもくんの仕事。
「え…くん?何で?」
「俺先生に呼び出されてるから、鍵閉めて返してきて」
「あ…うん。いいけど」
「ありがと。…あ、起こしてからかけてね」
…起こすのあたしの仕事?え、マジですか!?
「えっえっえっ、ちょっと!」
「じゃ、よろしく!」
そう言って君はいなくなった。ちゃんは、風邪でお休み。つまりあたしと君の二人きり。…こんなの、耐えれるわけがない。
「ふえ〜」
起こすのかー、と嫌々ながらに君に近付く。掃除道具入れにもたれて、彼は幸せそうに寝ていた。起こしたくないなあ…。
「君、起きますよ」
「…くー…くー」
「くーん、ドア閉めるよ?」
「………」
いっこうに起きようとしない。どうやって起こそう?いや、でも顔見てるのも悪くない…けど、君に言われてるしなー。
「デコピンで起きるかな…」
君の額に向かって、軽くデコピンした。
「つっ」
「あ、起きた」
「痛――」
「…そんなに痛かった?」
額を手でさすりながら「当たり前」と答える。
「痛ーよ」
「わっ」
彼の拳があたしの額へと飛んでくる。軽くこつんと当たった。
「あれ、は?」
「あ、先生に呼び出されたって、出てったけど…」
「ふーん」
それにしても…その、拳は何だったんでしょう?何だか嬉しくて笑ってしまいそうなあたしがいる。
「それにしてもお前なー、デコピンはないだろ」
「え、だってそれしか方法なかったし…」
「バーカ」
「バカ!?」
そう言ってくんはあたしの額にデコピンをした。
「たっ」
「デコピンしていいのは、俺からだけ」
「…何が?」
「お前に手出していいのは、俺だけ」
その日最大のハプニング。
FIST