「はい、もしもし」
「誰?」
「は?」
 電話かけてきて「誰?」ってことはないだろう。そんなことを思った。聞くくらいなら自分から名乗れ、とね。
「えっと、
「ぶはっ!フルネームで来た!」
「あ――!何よー、電話かけるのへたくそっ」
「うるせ」
 声で分かった、電話の主はだって。でもいきなり何なんだろ?電話番号教えた事もないし、つい最近話すようになっただけなのに。
「映画見たいなー」
「一人で行って来い」
「あー?そんなの寂しい奴みたいじゃん」
「あ、何?一緒に見ようって?」
 冗談で言っただけだった。だけどくんは一瞬静かになって、「おう」と答えた。
「明日振り替え休日だろ」
「うん」
「お前暇?」
「うん、暇」
「見に行こ」
 突然のお誘い。断るわけ、ないじゃん。あたしはくんのことが好きだから。
「いーよ」
「お、やりー!」
「あたしじゃなくて、もっと他の子を誘えばいいものを…」
「え、何で?」
 「あたしとあんたはつり合わない」なんて、言えなかったけど。「もっと可愛い子いっぱいいるし」と、口を尖らせて言った。「はあ?」と電話の向こうで呆れた声がする。
「お前馬鹿か」
「馬鹿!?」
「あのなあ…、好きな奴誘っちゃ悪いかよ。好きじゃない奴誘っても、全然楽しくねーだろ!?」
「…うそ」
 「お前鈍感…」顔が見えなくても分かる、恥ずかしそうに俯いていること。ただ、鈍感って言う言葉が気に入らなかったけどね。
「クラスのほとんどが気づいてんだよ」
「えっ、嘘だ!!」
「だー!!こんの鈍感野郎!!」
「や、野郎じゃないもん!」
 ごほん、と咳払いする音。急に静かになるあたしと、くん。
「…気を取り直して。俺は、お前が好き。付き合ってください」
「はい!」
「……うわ、恥ずかしー」
 明日は、初デート。
"Yes, hello"