神様、仏様、あたしって最低な人間なんでしょうか?悪い人なんでしょうか。人間やめた方がいいんでしょうか。腹黒いと言われても否定できやしない。ごめん、ごめんね。
ー」
「あいよー」
「英語教えろー。したら数学教えてやるから」
「よっしゃ」
 廊下側の後ろから二番目、あたしの席の後ろには座った。手には彼の大嫌いな英語のワークブックが握られてる。あたしは英語の教科書を手にして、後ろを向いてと向き合った。
「シャーペン」
「はい」
「消しゴム」
「はい」
「赤ペン」
「はい」
「よろしく先生ー」
 隣の隣の隣の隣のクラスにの彼女はいる。とっても可愛くて、何でこんなにもいい子なのってくらいいい子で、最高な女の子のちゃん。ちゃんの「」は、世界中で一番可愛い名前だって思えてしまうくらい。
「で、ここのカッコにはaが入って」
「なあー」
「んー?」
「昨日に『距離置こう』って言ったんだけどさ…」
「うん、友達が言ってた。最低だね、アンタ」
 そうあたしが言うと、は文字を書く手を止めてもう片方の手で頭を掻いた。
「だよなあ…俺やっぱ最低だよな。つーか、俺に対してアイツはいい子すぎんだよ。俺はもっとギャルっぽい奴でいいの。『えーそんな事言ったっけ?』みたいな奴でいいんだよ、全く」
「あ、そうなの」
 また英語のワークブックと睨み合う。そうか、本当に「距離置こう」って言ったんだ。友達が言うには、ちゃん…結構なほど落ち込んでたらしい。精神的ショックだね。
「距離置いたらお互いの大切さが分かるかなーって思って」
「で、分かった?」
「いや、全然」
「最っっ低!」
「別れようかなー」
「酷すぎる」
 ちゃんとは友達の友達ってことで、ちゃんのクラスに言ってはよく喋る。「バイバイ」だってするよ。大事な友達だから。
 でもね、「別れてくれたらいい」なんてたまに思っちゃうのは、何でだろう。彼女の相談にはいつも乗ってるし、決して「別れて欲しい」なんて思ってるのは本心じゃない。そんなの分かってる。からの相談も聞くけど、その時はちゃんを庇ってる。は酷いんだもん。
 だけど…二人の中が拗れる度に「早く別れてしまえ」って思ってる。よりあたしの方がほっぽど最低な人間だ。ごめん、ちゃん。ごめん、。ごめんね。
 でも、「別れて欲しくない」って思うのも本当だよ。矛盾してるけど、あたしは二人が幸せならそれでいいって思ってる。嘘じゃないよ。嘘じゃない。
 だって。そんなこと言ってるけど、ちゃんことを喋ってる時ほど楽しそうな表情してる時はないよ。そんな真っ赤な顔をするのは、ちゃんのことを話してる時だけだよ。
「で、は誰だったっけ、君だったっけ?どうなったの?」
「…そんな何回も言うな、知ってるくせに」
「あ、そうでしたあー。ごめんね、忘れてたっ!」
 そんな満面の笑みで笑わないで。あたしのことを見て欲しいって思っちゃうじゃない。駄目だよ、ちゃんのものなんだから。ちゃんが呼ぶ「」を盗っちゃいけないんだ。
「ありがと。今度数学教えてやるから、また英語教えろよ」
 あたしは、あなたに惚れた何十人といる内の一人にすぎない存在。
貴方が幸せなら(でも裏腹に。)