「ッ馬鹿野郎…!」
 逃げて来た。止まると自分の息の荒さに気付く。電柱に凭れかかって、そのコンクリートを一度殴る。痛かった。拳に血が滲む。拳も喉も胸も何もかもが痛かった。ポタリ、涙が零れる。地面に吸い込まれるように黒く滲んで消えた。もう一度小さく呟いた、馬鹿野郎。
 「友達、じゃ駄目なのか?」
 ついさっき言われたトモダチって響きが、こんなにも残酷だとは思わなかった。いつも振る時に使って来た。友達から始めよう。友達としか見れない。平気で使って来た。だけど、今日になってやっと気付かされた。こんなにも、胸に重く、ズシンと残る。今までの自分がいかに残酷だったか。同時に同じことを言われた自分に対して嫌気が指した。
 「この関係、壊したくねェんだ」
 保育園から一緒、小学校も、中学校も、高校さえも一緒のお隣さん。ずっとずっと一緒だった彼を好きにならない理由なんて、どこにもなかった。保育園の頃から気付いてたの、この恋心。、アンタとの未来を描かなかった日なんて、一度もなかったんだよ。以外を男として見た記憶もない。以外と付き合いたいと思ったこともない。
 この想いはお互い一緒だってなぜだか思ってた。だけど、そんなの私だけだったんだね。
 「は、大切だから」
 胸に熱いものが込み上げる。何をもってして大切だと言い切るの?漠然としすぎていて、その先には何も見えてこない。の表情はいつもと変わらなかった。少し歪んでるように見えた表情は他人行儀。こう言う時にはこの表情をしなければいけないような感覚。もう体に染みついていたのかも。
 「傷付けたくねェ」
 その言葉に酷く傷付いた。の気持ちの裏側が見えたような気がした。見ちゃいけないものを見てしまった。その言葉には、感情が込められていなかった。ああ、そう、私なら何でも赦してくれるって思ってるんだ。
 「ごめんな」
 長年秘めていた想いを、やっと言えたと心の中でガッツポーズをした。何となく、経験からしてオーケー貰えるんじゃないかって、心のどこかで思ってた。自意識過剰だった自分が、今じゃ凄く恥ずかしい。
「馬鹿、馬鹿、馬鹿野郎…!」
 何度も何度も電柱に拳を打ち付ける。もう、壊れてしまって構わないと思った。貴方が手に入らないのなら、好きになって貰えないのなら、この感情に意味はない。言ったでしょ?以外とは付き合いたくないの。以外は嫌、じゃなきゃ駄目なのに。
 は、私じゃ駄目なんだね。
「…ふ…うっ、う…」
 自分の嗚咽ほど、聞いて嫌になるものはない。もう、このまま消えてしまいたい。嫌いになりたかった。このまま嫌いになれたらどれだけ楽になるんだとう。だけど零れる涙は止まらなかった。それが全てを物語ってる。
 振られたって好き。この想いは止まってくれない。どんだけ傷付けられても、どんだけ泣かされても、じゃなきゃ、嫌なんだ。
縋りつく