いつも見てるだけだった。話し掛けたいのは山々だけど、私は臆病な性格だからそんなことは無理なの。あまり可愛くもないし、話し下手で声も小さいし、運動音痴だし、特に勉強ができる訳じゃないし、影薄いし、こんな私のことをあの人は存在すら知らないんだろうな。
「さん?」
私の名前呼ぶの珍しいな、誰だろ?なんて、思って顔をあげると、聞いたことある声だと思った。ずっとずっと見ていた大好きな人。
「あ…は、はい」
「シャーペン、さんのでしょ?」
「え?あ、違い、ますけど」
「じゃ、誰のだろ?知ってる?」
首を横に振る。やだ、喋っちゃった。何だか夢みたい、こんなにもくんの声って心地いいんだね。
「さん」
「は、はいッ」
面食らったように噴出す彼。笑顔もかっこいいな。
「あのシャーペンさ」
「はい?」
「実は俺の」
「えッ?」
にこっとはにかむように笑った。
「さんと話す、口実作りたかっただけ」
「私と、話す口実?」
「そ。だってさん人形みたいでさ、綺麗な子だなーって思ってたから」
「えと、それは日本人形?」
また噴出して笑った。そんなに笑えるようなこと言ったかな。
「それよりその後の言葉聞いててくれよ」
「えッ」
「綺麗な子だなって思ったの」
「冗談、お世辞上手いね」
「冗談で受け止めてもいいよ。だけど、俺はマジで思ったからね」
「あ、はい、どうも」
何て答えたらいいんだろう?素直に「ありがとう」なんて言えないし。
「あはッ、嘘だよ」
「はい?」
「そ。あ、傷付いた?ショック?」
「や、別に」
ズキッって心に釘がささったみたいに、痛い。何だ、嘘なんだ。だったら言わないでよ。
「傷付いてんじゃん?」
「違います」
「図星」
「ッいいから。構わないで下さい」
「じゃ、そうしようかな」
何だ、こういう人だったんだ。私に話しかけてくるなんて珍しいと思ったら、そんなこと。
「嘘だよ」
「え?」
「さん、綺麗だよ」
照れくさそうに笑ったくんの顔は少し赤かった。なんだ、素直じゃないだけなんだ。気持ちの表現が極端なんだ。
「変な人」
愛しい人