隣の席の男の子。クラスで一人だけいない男の子。ずっと大好きだった人。
「さ、もし俺がいなくなったらどうする?」
「何さ、いきなり」
「べっつにー」
昨日会話した中で、一番心に残った言葉。いきなり「いなくなったら」って、そんなの考えられるわけないじゃない。その時は本気で「が」いなくなるなんて、思ってもいなかったんだから。
昨日の夕方五時頃、空は薄気味悪かったと思う。何だか妙に、気持ち悪いくらい黄色っぽいオレンジ色で、嫌な汗が流れたんだ。空を見たあと、あたしの携帯が鈍いブザー音を立てて、メールが来たことを教えた。
『ごめん』
あたしはその時、本当に本当に嫌な予感がした。
「――!!君のお母さんから電話よ――」
そう呼ばれた言葉に、酷く鼓動が激しくて、ぎゅっ、と握った掌が震えていた。
「もしもし、変わりました。…はい、はい……え?………びょう、いん?」
「おばさんっ!」
「……あ…ちゃん」
「あの、っ!…何が……?」
「交通事故に、あってね。道路に飛び出した男の子…助けたの」
「え…、が?」
おばさんの声は震えている。ハンカチで口と鼻を押さえながら、一生懸命…「生きて」と願っているんだ。
「は…昔それで助けられたんだよ」
「おじさん…」
「キックボードしてて、路上に飛び出して…乗用車に撥ねられそうになった」
「近所の子が、助けてくれたの…その時、亡くなっちゃったけど……」
「その罪滅ぼしか…今回路上に飛び出した子と、自分を重ねて見てたのか」
おじさんも目が赤く腫れ上がっていて、おばさんの肩を抱いている。手術室のランプは、まだ赤く点っている。
「…生きてて……」
ランプが消えたのは、その時だった。中から手術を担当した先生が出てきて、首を…横に振った。
「―――そんな、先せっ…」
「…真に残念ですが…ご臨終という結果に…」
「…」
「私どもも最善を尽くしましたが、君の頭蓋に致命傷があって…」
泣き崩れるおばさん…懸命に励ますおじさん。いつの間にか、お母さんも加わって、おばさんを支えていた。
「………嘘だ」
「…?」
「だって、だよ?死ぬわけないじゃん!だって…」
だって、あのだよ?いつも元気で素行が良くないと評判ので、後輩に先輩に同級生に先生にも人気がある。
「だって…だもん。だもん。こんなことじゃ死なないもん」
生きてるもん。
「何で…こんなことで死ぬんだよう…」
ねえ、?何で最後に言った言葉が「俺がいなくなったらどうする?」で。最後に来たメールが「ごめん」なの?あんまりだよ、。
……「さよなら」なんて、言いたくないのに…。
「さよなら」