「ねえ、さん」
「なーに?」
「サイダーのCMの曲知ってる?」
「あ――――…自転車で爆走してる奴?」
 「そう、それ!」と君は大袈裟に指を鳴らした。それの表情がまた嬉しそうで、とても嬉しそうで。
「あ、じゃ歌ってる人知ってる?」
「知らない」
「ね――、そんな突き放したように言うなってー」
 「だって、知らないものは知らないもん」と言うと、「ちえ」と口を尖らせていた。誰の曲だったっけ?耳に残るあのメロディー、あの歌詞、あの歌声。
「…あっ」
「どした?君」
「あ――!!分かった分かった!!分かったよ、「We'll go!」だっ」
「題名?」
「そう!ROSEMARYだ!!」
 「ROSEMARYかあー」とあたしは項垂れた。あたしの方が先に思い出すんだと思ってたのに。先、越されたなあ。
「へっへーん。これで頭のモヤモヤはなくなった」
「あ、じゃードラマのさ、「甘いレモン」の主題歌は何?あの曲良くない?」
「あーYETの「first love」だろ?いいよなー、誰かCD持ってないかな?」
「知らない」
「お前…知らないばっか」
 知らないものは知らないの。ただ、知ろうとしないだけかもしれないけど。
さん」
「ん?」
「俺の好きな人、知ってる?」
「知らない」
「知りたくないの?」
「うん。別に知らなくてもいい」
 本当よ。
「俺は、知ってほしいけど」
「…知らない」
「はははっ、顔真っ赤だよ、どうしたの?」
「し、知らない!」
 知らないんだから。
知らない