目に見える傷は、いつかは癒える。だけど…、目に見えない傷は…癒えるのには時間がかかるんだ。特に、心の傷なんか。
 まだ、傷跡が痛む。まだ、鮮烈に残る。昨日の放課後のことだった。誰もいない教室で、くんと学校一綺麗だって噂の…さんが……抱き合ってた。
 あれ?、って、私の「彼氏」だよね?間違って、ないよね?
 鮮烈に、まだ色鮮やかに残る。鮮やか過ぎて、目を瞑りたくなるよ。でも、現実逃避は、いけない。
「……
 誰もいなかった教室、ここで色鮮やかな行為が、昨日行われたって言うのに。今は、静かで、とても静かで。くんの、はっきりした声が響いたんだ。
「…何」
「誤解を…解こうと思ってな」
「…何の」
 本当は、分かってる。くんだって自分からしたことじゃないって。でも、その証拠だけ見せられたって、何かが。何かが、足りない。足りないんだ。
「昨日の、見てただろ?」
「…うん。だから?」
「傷ついてんだろ?」
「うん」
 そんなの、見れば当たり前じゃない。誰だって嫌だよ。
「俺の好きな奴は、お前だけだから」
「……知ってる。で?」
!」
 あたしの態度が悪かったのもある。くんはいきなり声を出した。だって、あなたの目を見て話していないもの、あたし。
「話…聞けよ」
 くんはあたしに近づいて、嫌がるあたしを無理矢理自分の方に向けた。くんの瞳は、哀しみと怒りを帯びていた。
「…
「…離してよっ…!」
「嫌だ」
「……だって、あんなっ、あんな…っ」
 無情にも涙は頬を伝って、肩を支えているくんの腕に落ちる。
「誰だって…避けたくもなるよ」
 静か過ぎる教室に、静か過ぎるあたしの声が響く。震えていた。
「知ってたんなら、あたしがいるって分かってたんなら、何でその日にメールでも電話でもしてくれないの!」
 なおも震える声で叫んだ。
「何で追いかけてくれないの!…そんなの、心配にだってなるじゃんか…」
「…」
「あたしより…さんがいいのかな、って。もうあたしなんか嫌いになったのかな…って…」
「…あれは、向こうから告白して来たんだ。そしたらさんが椅子に足引っかけて…」
 ……信じたいよ。信じたいけど、今のあたしでは、無理。
「もう…やだ…。嫌だ、嫌だ…っ。いいよ、言い訳なんて…」
「言い訳なんかじゃねーよ!!」
 ぎゅっ、とキツく抱きしめられた。あたしよりずっと肩幅が広くて、あたしなんかすっぽりくんの中に納まってしまう。
「離して…離してよ…!!」
「絶対に嫌だ。死んでも離さねー」
 くんの声と言葉は、強さと決意に満ち溢れていた。泣きたくなった。
「泣けよ」
「……ふっ…う、ひっ…く」
「大好きだよ、
 傷跡なんか、癒えてしまえ。
傷跡