ふかくいきを吸いこめば
歯車と心臓の音が聞こえてくる
窓の外で動き始めた暴風を
その身に受け止め、やっと意識は浮上していく

褪せた空気を肺にながし
ケージの柵を強く掴む
指先は恐れを喪ったかのように
終には細かくふるえることをやめた

真白な廃墟をかきわけて漂流する船は
至高へ、ここに眠る果てへ、届くことはない
美しい機甲の表面は、かすかな滴りに洗われて
暗闇となり、あらたな宙を映しはじめている
冠を手にとり、呼吸を止め、わたしを殺してしまう
いつかは恵むだろうか、今日までも

鉛の爪と静けさで造られた身体を
ばらの花が、いつも柔らかな瞳で抱きとめるのを
うつむいた面差しの植物は、とおくから眺めていた
時間を止められたかのように、黒い瞳を見開いたまま

手繰られた声に縋りついて
その意味だけは閉じこめている
連綿と続いていく感情に
終りを告げられない、それだけのために

ふかくふかくへ沈んでいく棺を、雲の塔がかくす
朽ちた海に花片を撒きながら、わたしを置き去りにする
緩慢に加速していく、もうひとつの棺のなか
椅子に座れば、もうにどとは還っては来られない
浮遊しはじめた感触に、身をまかせ、ただ正面に瞳を凝らす
そっと葬られた灯を、腕に抱き