ハシバミの目のなか
昨日までの私は、ついに見つからないまま
家路を外れ、暗闇に紛れて、疲れたあとは
こうして足首が海に溺れていくのを眺めている

だから思うのだろう
こんなにも、火傷と泥でよごれた爪先で立ち
骨の折れた傘を差し、錆びの浮いた羽根を持ち

もう、ここまでだと知っているから
どうか連れ出してくださいと言ったことが
間違っているはずもないと、両目をかたく閉じた
その表面を、なにかが通り過ぎる
羽ばたきだけをのこして

クルミの殻のなか
辺りを見渡せば、殺しそこなったものたちばかり
星彩に照らされた海岸までの道を、騒がしく飾る
さいごまで、そうであれ
あなたたちだけなら、許されるはず

いつも願うことがある
物語が終わったあとも、鳥かごには捕まるな
空と廻れ、歌を続け、夜を射て、奥でささめけ

また、ここで会える日が来るのなら
きっと幾らでも捨てて、そして差しあげられますと
鍵をかけた腕で言う、両耳を強くふさげば
この肩先に、だれが休んでいたのか
その羽音にも気づかずに

ここに居場所などないと、信じて