欠けた窓辺に日当たりのよい私がちぢこまり座っている
どこまで行ってしまったのかわからないあなたの、両目から墜ちてくる水の粒の一つ一つ
怪しく透通るそのすべてには私が事もなげなように映っている
レンズを隔てたその向こうへ、正直でない膜をのりこえた向こうへ、あなたは不意にやってくる

洗髪剤の匂いに酩酊じみたものを感じられるようになったら楽だろう
骨と、肉と、皮と、それらじゃない他のものと、を合わせた目の前のもの
あなたに加えられた余計なものに興味を惹かれさえしなければもっと楽だったことを、私はたなにあげて膝を抱える
カーテンがはためく燦々の通り道を、荒れはてた夜中のベランダを、あなたは私から取りあげる

日々に組み込まれるようになった不眠、浮遊感の理由を人のせいにはしない
愚直ではないあの人が安易に自己を犠牲にする、庇護のひもを取り払ったばかりの私がそれに眉を顰める
闇に葬るべきものをかなぐり捨てたはずのあなたの細い指の間に翳りがちらついて、私がそれを気にも留めずに笑う理由はなんだろう
手首の裏で押さえこまれた脈動も、頬の赤みに釈然としない理性も、あなたは止めて見せかける

ひどく鳴る心臓が痛むのは、ぜんぶがまやかしじゃないかと知っているくせに疑うから
あからさまな玩弄まじりの嘲りでこんなに痛めつけられても、戻らないから

嬉しいのは、喜ぶのは
けれどあなただけでない