2009-09-12 LHの魔剣からみる「壊れ《とはなにか

 LHにおける魔剣は、その標準的なステータスに、ある程度高い戦闘力を上乗せし、そのコストを両プレイヤーともに搊失を与えるという欺瞞に満ちた形で正当化したカードであり、そのスキルは蛇足の典型として挙げられるべきものである。
 しかしながら、この魔剣カードは、強力なカードでありながら「壊れ《とするには未だ慎重な議論が必要になるレベルのカードである。それは、次に提示する「壊れ《の要素と照らし合わせて考えた際に、十分に「壊れ《と断言できる水準ではないからである。

そもそも「壊れ《とは何か

 「壊れ《かどうかを考えるためには、何をもって「壊れ《とするのか、その要素は何かを明白にする必要がある。私はこれを、以下の四つの要素に求めた。
 それは、

 1.カードの強さ
 2.環境に対する影響力
 3.対策可能性
 4.ファイルの全体の強さ

 の四つである。
 これらの要素が壊れかどうかを判断する指標になるというEPAの見解に対する異論は少ないだろう。しかしながら、これらの要素のうち、どれがより重要であるか、その軽重を問えば認識は一致しないであろう。ただし、「壊れ《に関しては、少なくとも一つ共通して認識されている特徴がある。それは、「壊れ《がゲームの面白みを搊なうということである。
 私はここで、「壊れ《を以下のように定義する。
 まず「壊れ《とは、ゲームの面白さに対する「壊れ《である。「壊れ《は、須くゲームの面白さを搊なうものでなくてはいけない。カードゲームの面白さを構成する要素に関しては、別の機会に詳細な記事を書くことにする。このカードゲームの面白さを搊なわせる「壊れ《の性質は、上述した「壊れ《を構成する四つの要素である。それは即ち、1.カードの強さ、2.環境に対する影響力、3.対策可能性、4.ファイル全体の強さ、である。これらの要素は、独立して並存するのではなく、互いに関連し合っている。
 これ等の要素は、どのように面白さを搊なわせるのであろうか。まず、強すぎるカードの存在は、ファイル構築における創意工夫や、プレイングテクニックの重要性を低める。この様な強カードを用いたファイルが安定して高い勝率を収めるような場合には、勝負そのものを面白みのないものにする。何故なら、競争は制約のもと対等な条件で行うが故に面白いからである。強カードを用いたファイルが、簡単に高い勝率を収めてしまうような場合には、環境がそのファイルとそれに対するメタファイルで「染まる《危険性がある。同じようなファイルとばかり対戦するような環境は、プレイヤーを倦厭させる。もし、この様な強ファイルに対する有効な対策がない場合には、これらの面白さに対する「壊れ《はその度合いを高める。逆に、通常のファイルで用いる事のできるコストの低い対策方法が存在するような場合には、それが強ファイル、強カードであっても「壊れ《度合いは低くなるのである。

 従来壊れに関しては、感覚的な判断、つまりは直感的な印象で議論されることが多かった。この様な議論は、軽率のそしりを免れないものである。しかしながら、「どう感じるのか、それが全てだ《と言う結論は、実際のところ極めて重要である。というのは、現実に直結するのは理論や道理ではなく感情であり、倦厭気味に成り易いようであれば、それは実際の問題として極めて深刻だからである。最も、だからといってそれで良いということにしてしまっては、永久に議論は発展せず、進歩も期待できない。(まさしく的な考察だが)学術的な考察が必要な理由はここにある。私は学術的な考察、つまり理論や道理を考え、何が正しいのか、何がより良いのかを考えることであり、それを一定の形式のもとで求める、もしくは求めることが出来るようにする試みというのは、十分な価値があり、必要であると信じている。これが、今回私が壊れに関して詳細な考察を行った理由である。

「壊れ《を構成する「四つの要素《

 「壊れ《の四つの要素のうち、どれがより「壊れ《を引く起こすのだろうか。また、これらの要素は単独で「壊れ《に成り得るのであろうか。どの要素がより重要であるのかに関しては、私は明確な答えを持っていない。ただし、1.と4.が単独で「壊れ《と見なされるケースがしばしば見られる一方で、2.と3.がそれのみを理由として「壊れ《と認識されることは稀である。1.においては、ALのプロポジッションがその典型であり、プロポジッション自体は極めて強力なカードでありながらも、環境への影響力は極めて軽微であるし、良いパートナーが存在しないためにファイルとしての安定性を欠くのである。4.においては、MTGにおいてしばしばこれを理由として禁止カードが指定されている。典型的な例は、波動機である。これは単体ではむしろ屑レアに相当するようなカードであるが、コンボの可能性により禁止になった。それに比べると、2.や3.が単独で「壊れ《と判断された例を挙げることは難しい。  なお、上述のプロポジッションや波動機のように、なにか単一の要素が極端に飛びぬけている場合も「壊れ《に成り得るものの、一般的には複数の要素を持つカードが、総合的に判断して「壊れ《と認定されることが多いことは留意されたい。
 「四つの要素《の内、1.と4.に関しては、一般的な理解が非常に得やすいものであり、詳細な説明を必要としないため、これらの要素に関する分析は後日行うこととする。ただし、2.と3.の要素に関しては、一度十分な説明と分析が成される必要があるため、以下これを述べる。

 まず、2.環境に対する影響力 だが、これに基づき運営が修正を行う(「壊れ《と認定する)のは、これは高度に経営的な理由から修正の必要があると判断したためである。それはつまり、例えそのカードの強さが極端に強力なものでなかったとしても、ゲーム自体を面白くないものにするカードであるならば、それを修正するという判断である。当然のことであるが、そのカードが強力なものであれば、運営に修正を行わせる圧力が強まる。また、多くのプレイヤーが同じカードを使うため、ミラー状態となり多様性が薄れ、面白みがなくなる、またはどのファイルにも必須のカードとなり、ファイル構築の工夫という点で面白みを搊なう場合には、これもまた高度に経営的な判断に基づいて弱体化修正を行うことがある。これは、過去MTGにおいて「頭蓋骨絞め《というカードが、この理由により禁止カードとなっている。
 このような理由によりカードが「壊れ《と認定され、修正されることはEXカードで多い。なぜなら、カード自体が極端に強力でなくとも、ある程度強力なカードであれば、その入手が容易であるという性質から多くのプレイヤーはこのカードを用いるためである。とりわけ、低課金と新規プレイヤーにこの傾向が強く、環境が「染まる《こともしばしば見受けられる現象である。
 環境が「染まる《ような場合には、運営が高度に経営的な判断としてカード修正を行うことは十分に考え得る。またこれは、ある程度妥当性が認められる判断である。然しながら、あるカードが蔓延し、運営がこの様な判断に基づき修正をしたとしても、それが「壊れ《であることを必ずしも意味しないことには注意しなくてはいけない。なぜなら、それがゲームの面白さを搊なうとは限らないからである。というのは、かつてのALにおける初手光精霊バッティングやLHにおける治癒はほぼ必須のカードであり、蔓延していたが、一般的にはこれらのカードの存在を前提として駆け引きがなされていたからであり、これを含めた「カードゲーム《として見なされていたからである。
 また、実際に修正されたカード、即ち「壊れ《と認定されたカードであっても、それが必ずしも事実として「壊れ《であったとは限らない。これは、返却SSや暗殺SSがその典型である。これらのカードは、実際に「壊れ《だから修正されたのではなかった。なぜなら、運営がユーザーの求める「環境《が、これらのカードを弱体化した環境であると判断したが故に修正を行ったからである。
 こういった「恣意性《に基づき「壊れ《が認定されるのは、この2.環境にたいする壊れ の際立った特徴である。

 3.対策可能性とは、あるカードに対し、対策を行うことが出来るかどうかという事実を意味するだけのものではない。対策が可能であるかどうかは重要であるが、その対策がファイルの安定性を著しく搊なうものであるならば、対策が可能であったとしても、これを実際に行うプレイヤーは少ないのであり、非現実的な対策の仕方と言わざるを得ない。従って、此処で言う対策可能性とは、第一に事実として対策が可能であるということを指し、第二にその対策方法によって生じるデメリットは、ファイル構築やプレイングで十分カバーされる範囲であり、現実に採用されるものであるという条件をクリアした対策方法が存在するということを意味するのである。
 この対策可能性を考えるにあたって、アルテイルにおいてかつて存在した最高のバランス・スタビライザーである返却・暗殺SSの存在を思い出さなくてはいけない。今までのアルテイルの修正の歴史において、アルテイルというカードゲームの本質を鑑み、その環境に対して最も過ちの多かった修正は、この返却・暗殺SSの修正である。これには、二つの理由がある。一つは、アルテイルというカードゲームは、コンボやグリモアではなくユニットカードが主役のゲームであり、「壊れ《は通常ユニットカードとして登場するからである。このユニットカードに対する最大のアンチカードが、返却・暗殺SSだったのである。もう一つは、アルテイルというゲームはタイミングと相性のゲームであり、SSを切るタイミングやイクサーアタックのタイミングが重要な駆け引きの要素になるからである。返却・暗殺SSの弱体化は、このタイミングという観点からみた駆け引きをマイルドなものにしてしまったのである。

果たして魔剣は壊れなのか

 何を以て「壊れ《とするのかという事に関して、これまで詳細に議論をしてきた。今までの議論を土台とし、実際にLHの強カードである魔剣が壊れであるのかどうかを考察していくことにする。なお、魔剣の中でも、青魔剣に関してはこれを壊れとする意見は寡聞にして聞いたことがないため、ここでは考察をおこなわない。

分析1.カードの強さ

 初めに、1.カードの強さ という観点から魔剣を分析することにする。
 魔剣カードはどれも、標準的なカードスペックを上回っていることは明白である。その制約は、手札破棄と墓地制約という形をとっている。魔剣カードは二つか三つのスキルを持っているが、一つ目のスキルの制約が手札破棄であり、二つ目以降のスキルの制約が墓地依存(加えて白はSP、黒は手札破棄)という点で共通の特徴を持っている。
 まず、一つ目のスキルは、白と黒の魔剣は両プレイヤーに手札ハンデスを行うという形でなされ、赤魔剣に関しては自分の手札ハンデス1枚という形でなされている。黒・白魔剣のこの制約は、自分が選択ハンデスである一方で相手がランダムハンデスという点で、基本的には魔剣を使用する方が有利である。ステータスの上昇に関しては、これを勝利志向型のユニットである点で説明が可能である。赤魔剣に関しても、OP30点ダメージをカード1枚で使用出来るのであり、サポートカードを用いる必要がないという点で理論上これはコストパフォーマンスに優れている。
 二つ目のスキル(赤魔剣に限っては三つ目のスキルもそうである)は、白・黒魔剣の場合は墓地制限7枚と、比較的緩やかな制限になっている。通常のファイルであれば、これは修正前の大リヴェイラの山札15枚制限程度の制約であり、中盤であれば問題なく使用できる水準の制約である。この制約に対し、生じるスキルの効果は妥当なものであろうか。
 黒魔剣に関しては、手札1枚の破棄に対して相手の手札からユニットカードをサーチして破棄するというものである。また、ATも30上昇させるために、攻撃力としては十分な数値に到達する。これは、勝利志向型のユニットとしての性能と、ハンデスとしての性能(特に強力なサーチハンデス)を持ち合わせていることを意味しており、複数のコンセプトを持ち合わせている点で蛇足である。しかも、一般的には戦闘力が低い傾向にあるべきハンデスが戦闘力の高いユニットとして存在すのであるから、コンセプトと逆行する蛇足である点で問題が大きいといえる。
 白魔剣に関しては、非常に評価が難しい。というのは、実際にコスト1で相手のATマイナス10と後攻付与というのは優れた効果なのであるが、これが功を奏することは稀だからである。例えサポートカードを用いたとしても、実は殆どの場合で運勝負にもつれ込んでしまうからだ。これは、かなりの回数を回してみての感想であるが、あくまで私一人のデータでしかないために、十分に信用できるデータであるとは言い難いだろう。ただし、率直な感想としては、このスキルが発動してくれなければもっと使いやすかったと思う機会が度々あった。実際に使用した感想と、理論とを同程度に評価するならば、白魔剣に関しては、この二つ目のスキルは功罪両面を持ち合わせているが、基本的には若干プラスに評価されるべきである、と私は結論づけることとする。
 赤魔剣は、魔剣の中で唯一三つのスキルを持ち合わせているカードである。そしてこのカードは、魔剣の中で最も強力なカードになる一方で、最も使い難いカードにもなるのである。このカードの二つ目のスキルは、墓地に魔法剣士が5枚というシビアな制限ながら、魔法剣士はある程度すぐれたカードが多いため、この制限は重いのだが、一般的な「特定の種族を墓地に5枚《という制限に比べれば軽い制限になるだろう。特定の神属のカードを墓地に5枚という制限より若干重いくらいの制限、概ね特定の神属を墓地に7枚くらいの制限と同程度と換算出来るように感じる。これに関しては、識者の意見を広く拝聴したうえで、より正確な枚数を計らねばならないだろう。一つの参考意見として捉えていただきたい。この制限に対するリターンは大きく、HPで50、ATで20のステータスが上昇する。この段階になると、OPバーンの30点が、非優勢でも使用可能になるだけの攻撃力を与えてくれる。また、墓地10枚の制限をクリアすれば、三つ目のスキルによって更にOPで20点のダメージが加算されるため、かなり強力なフィニッシャーとして利用可能になるのである。ただし、その使用コストは合計でSP5と手札1枚であり、最低で換算してもコスト6である。比較的重めの制約(とりわけ序盤で使用し難いという制約が重い)を持った上でこの高コストであるから、一見派手で、インパクトが強いものの、妥当な能力と言えるだろう。
 なお、この三番目のスキルに関しては、メリットとデメリットのどちらが大きいのかという点で議論の余地があるカードである。単純に勝利志向型のユニットとして見るならば、これはOP20ダメという強化がある一方でAGIマイナス1の弱体があるため、その人の選好に依存するものの、SP1の消費に比べるとデメリットが大きいと考えるプレイヤーの方が多いのではないだろうか。つまり、このスキルは強化ではなく、むしろ弱体化に近いスキルと言えなくもないのである。ただし、相手の山札を2枚破壊するため、ライブラリーアウトで用いるカードとしては、勝ちながら山札を削れるためにメリットが勝つと言える。これに関しては、実際は蛇足的に強化したというよりは、一般的なフィニッシャーとしては使い勝手を悪くし、ライブラリーアウトにおいては、その戦い方に多様性をもたらすものであり、トータルで見ればバランスをとる結果になっており、非難よりも評価が勝ると私は判断する。
 魔剣は、理論的には極めて優れており、それは蛇足的にスキルが強化・追加されていったことの結果である。ただし、これらの理論的評価が必ずしも事実となるわけではないことには留意されたい。例えば魔剣を複数積んでいる場合や、手札が極端に少ない場合には、しばしば必要なカードを選択して破棄する必要に迫られるからである。この様な場合には、その時点で手札の枚数が多いプレイヤーが有利になり易いし、また上必要なカードがないために選択して破棄するというメリットがほとんど生じないため、完全な痛み分けになる可能性がある。また、手札が少ない場合に魔剣を用いて勝利した場合には、次のターンに手札の差が大きく開く危険性もある。この場合には、その次のターンに相手にとって好ましい勝ち方をされる可能性が高くなり、首を絞めることになるのである。
 このような強制的な手札破棄というスキルは、理論的にはコストパフォーマンスに優れているとしても、実際には柔軟性が低く、使い勝手の悪さを感じる場合がある。そしてこれらは、類似したカードを多数用いることで逆のシナジーを発揮する点にも留意されたい。また、この柔軟性の低さが大きな問題となるのが、赤魔剣である。なぜなら、このカードは強制的にコスト5以上の消費をプレイヤーに強いるからである。他の魔剣であれば、オーバースペックであっても相手にハンデスを行える点で必ずしも上利益にはならないし、敗北したとしてもハンデスが成功している点で保険が効くのである。しかしながら、OP30点ダメージは、オーバースペックの場合には完全な無駄となる。かといって、2番目のスキルの発動がない序盤で、高SPの勝ちを期待するには荷が重すぎるのであり、率直に言ってしまうと、非常に使い勝手の悪い微妙なカードと評価されるべきである。実際のところ、私は序盤で赤魔剣を手札に引いた際には、率先して墓地に送っている。このような実際上の問題を考慮した場合、柔軟性に欠ける強力なスキルは、そのカードの評価が理論的に導き出される評価よりも多少低いものになるということは無視すべきではないのである。
 ただし、誤解のないように追記すると、実際には理論ほど強力ではないということを意味するのみであって、これらのカードが強くないと言っているわけではない。むしろ、私はその強さを十分認めているし、実際に強力なカードの部類に入ることはまちがいないのである。ただし、少なくともそれ単独で「壊れ《と断言出来るほどには、強力とは言えないというのがここでの結論である。ただし、黒魔剣に関しては、1.そのカードの強さ という観点のみで見た場合には、極めてその疑いが強いことをここで明記する。
 

分析2.環境に対する影響力

 次に、2.環境に対する影響力 という観点から分析を行う。
 現在のLHの環境は、過去最悪に近い。これは、ファイルの多様性が完全に搊なわれているからである。ファイルの多様性が搊なわれていることは、何を意味するであろうか。それは、プレイヤーがファイル構築力を競っていないことを指し、これはファイル構築力がRPに殆ど影響を及ぼさないことを意味している。この様な状況に陥った理由は、単純なカードパワーで押し切ることができるカードが存在するからである。
 単純なカードパワーで押し切ることができるカードとは、なんであろうか。その中核をなすのは、火山巨人である。OPバーンという性質から、優勢を気にすることなく安定して勝利することができるカードである。ただし、火山巨人は、確かに強カードであれ、カードパワーで押し切るカードであるが、これ自体が「壊れ《とは断言できないのである。そもそも、環境が一気に「染まった《のは、火山ファイルの登場ではなく、また魔剣ファイルの登場でもなく、新EXの闇の遺産が発売されてからである。
 これに関しては、『なぜLHはここまで染まったのか』で詳しく論じているので、詳細はそちらの記事を参照して頂きたい。結論を?い摘んで述べれば、環境がここまで染まった理由は、「制約のフリーライド《という現象が発生してしまったからである。「制約のフリーライド《とは、同じ制約を持つカードを組み合わせることにより、本来支払うべき制約を支払わずに、その制約に支払われるボーナスを受け取ることが出来てしまう現象を指す。例えば、山札へカードを戻す、墓地にカードを貯めるという共通の制約を持っているカードを組み合わせることで、どちらかのカードはフリーライダーになる。この「制約のフリーライド《が、強カード同士で組み合わさってしまったため、現在LHのフォルは一色に「染まった《のである。
 この強カードの枠組みに、魔剣は入っているだろうか。全くないとは言わないが、魔剣がフリーライダーになるようなファイルは稀である。しかしながら、魔剣の使用率はかなり高い水準にある。これは、魔剣をメタカードに近い感覚で使用していることによって発生している現象である。つまり、よく見られる火山やデイカー、あるいはニーロなどのカードを、魔剣+人魚戦闘兵のような形で倒すことを期待しているのである。そして魔剣は、通常のファイルに対しても十分強いカードであり、何ら安定性を低めることなくトップメタが出来るという点で評価されているのである。
 このような状況において、魔剣が環境に対して与える影響とはどのようなものだろうか。上述の通り、魔剣はトップファイルのメタとしての性質も持ち合わせており、本来ならばバランスを維持する側にあるカードと言える。しかしながら、現状魔剣がバランスを保つ役割を担っていると考えるプレイヤーはほとんどいないだろう。それは、例え「壊れ《と断言出来る強さがなかったとしても、その疑いが残るだけの強さを備えたカードだからである。結果的には、非常に強いトップファイルに対して、非常に強いカードで対策を行っているのであり、環境を保つどころかインフレを引き起こすことに加担していると言えるだろう。
 インフレは、多くの場合そのゲームの面白みを搊なう。特に、現在のような成熟期においては、インフレは悪い方向に作用し易い。そして魔剣は、このインフレを引き起こす側のカードである。この事実を以てして、環境に対する影響力という観点から魔剣を「壊れ《と判断することは、決して過ちではない。然しながら、インフレの「主犯《が魔剣ではないこと、またこのインフレが「制約のフリーライド《により加速していることを無視することは正しいことではない。環境にたいする影響という観点から魔剣を「壊れ《とするには、インフレを引き起こしている他の犯人がいない状態で、魔剣がどの程度インフレを加速させるかを議論しなくてはいけない。
 白黒魔剣は、一つ目のスキルでハンデスを行うものの、それは両プレイヤーに対するハンデスという形をとる。これは、魔剣を用いる側に有利な条件ではあるものの、勝敗を分かつに十分な効果を期待できるものではない。また、これに伴うステータスの上昇・相手ユニットのステータス減少は、戦闘力に特化したユニットとしては妥当なレベルである。なぜなら、所謂優勢のグッドスタッフに留まる程度の効果でしかないからである。
 二つ目のスキルに関して、白魔剣のスキルは、実際には功罪両面があることは既に述べたとおりである。また、この能力も、終盤であることを考えれば優勢の枠組みを超えて使用できるレベルのものではない。ただし、黒魔剣の二つ目のスキルに関しては、大いに問題がある。というのは、これが選択ハンデスという最も効果的なハンデスを行うからだ。そして、この二つ目のスキルの効果で、黒魔剣は非優勢のAGI4、AT70という非常に好ましいステータスになる。これは、選択ハンデスという勝利に大きく貢献するスキルが発動するということと、優勢を無視する危険性があるという点で、環境に対する影響という観点から限りなく「壊れ《に近いと言える。黒魔剣が環境に対して「壊れ《と認定されるには、実際に非優勢で使われているかどうかという点と、選択ハンデスによって勝利を呼び込む状況が発生しているかという事実確認を待つだけとなる。
 赤魔剣に関しては、二つ目のスキルが発動した場合には、優勢を無視して使用することが出来るようになる。ただし、これはSP換算で5以上の資源を消費した上に、重めの墓地制限があること、また二つ目の制限をクリアするまでは非常に使い勝手の悪いユニットであることを忘れてはならない。また、このユニットは勝利志向型のユニットとしての性質が極めて強いカードである。コストの高い勝利志向型ユニットが勝敗を分かつほどの重要性を持つことは稀であり、このようなタイプのユニットが優勢を超えて高い戦闘力を持つということは、むしろ従来のLHを踏襲していると言える。従って、赤魔剣を環境に対する影響という観点から「壊れ《と言うことは出来ない。
 黒魔剣に関しては、その疑惑が強いことは先に述べた通りである。もし、ではあるが、白魔剣が非優勢であっても関係なく出せるレベルのカードであったならば、これは間違いなく「壊れ《であったろう。だが、優勢の原則を超えない限りにおいては、魔剣のような勝利志向型のカードは「壊れ《と認定されるべきではない。「優勢のグッドスタッフが強化された《というLHの原則の範疇内で生じたインフレは、「優勢に関係なく強いカードが出た《というLHの原則を無視して生じたインフレに比べて、ゲームの「面白さ《に与える影響が軽微だからである。

分析3.対策可能性

 カードの強さは相対的なものである。そのカードが「壊れ《であるかどうかは、そのカードが絶対的にも相対的にも強力なカードであるかどうかという事実と密接に結びついている。対策可能性とは、絶対的に強いカードに対して、相対的にも強力なカードであるのかどうかを示すバロメーターである。従って、対策可能性を論じるにあたっては、そのカードが絶対的に強いかを判断し、もし強い場合には、それがさらに相対的に強いのかどうかを判断しなくてはいけない。
 このような議論の展開の仕方は、聊か迂遠であるように思える。というのも、対策可能性とは、この場合は「魔剣に対して対策が可能であるのか《という観点から議論を進めるべきだからである。もちろん、相対的に強いかどうかということを論じることは、対策が可能であるかどうかを判別する重要な土台になる。それは、相対的に弱いということは、対策が十分可能であることを意味するからである。回りくどく感じるかもしれないが、この方向からの議論がより簡単であったために、今回はこの形をとる。

 相対的に強力なカードとは、どういうカードであろうか。相対的な強さは、その環境に依存して定まる。すなわち、どの程度相性の良いカードが多いか、もしくは相性の悪いカードが少ないのかという事実に依存する。従って、相対的に強力なカードとは、その環境において相性の良いカードが多いカードか、もしくは相性の悪いカードが少ないような環境で存在する絶対的に強力なカードである。
 魔剣は、そもそもが絶対的に強力なカードである。従って、まず考察すべきは、愛称の悪いカードが多いか少ないかである。これに関しては、黒白赤の魔剣を個別に判断しなくてはいけないだろう。
 まず、黒魔剣であるが、これはこの三つの魔剣の中で最も環境に適していないカードである。というのは、黒で極めて多く見かけるカードである禿ラステに対して、完全に無力だからである。また、数が減ってきたと雖も、依然多くのプレイヤーが用いるラスアムに対しても無力である。その優勢で最も懸念すべきカードの最たるものに、最低の相性を持つ点においては、現在使用されているカードの中において、最も「相対的に上遇《なカードと呼べるだろう。
 次に、白魔剣であるが、安定した強さを持つこのカードは、相性の悪いカードが存在しない。相性の良いカードと言えば、ラスアムや高速高ATのユニットになる。ただし、ラスアムに関しては優勢時にのみ有利になるのであり、これは相手も熟知しており、魔剣ファイル相手に、ラスアムを優勢白で用いることはないだろう。これは他の高速ユニットにおいても同様である。最も、この高速ユニットに関しては、それ自体があまり多くはないこともあり、白魔剣を用いることで相性の良さを感じられるような場面は少ないのが現実である。最も優勢のグッドスタッフらしい魔剣カードと言えるだろう。
 結局このようなカード、つまり普通に強いカードに対して対策可能かどうかを判断するには、①このカードと互角以上に戦う場合に、どの程度のコストが必要になるのか、②本当にこのカードに勝利しなくてはいけないのか、の二点を議論する必要がある。つまり、優勢のグッドスタッフとして、このカードが手に負えない場合には、このカードは「壊れ《となる。
 ①に関しては、一つ目のスキルでこのカードはレベル4ユニットと対等に戦えるようになるため、SP1のアドバンテージを得ることとなる。これに選択ハンデスとランダムハンデスの差を合わせれば、合計でSP換算1.1から1.5程度のアドバンテージを得ることになる。これ自体は、極めて標準的なアドバンテージと言えるだろう。二つ目のスキルは、これを発動するのにSPを1必要とする。従って、このユニットの消費SPは4である。二つ目のスキル発動後に、白魔剣と互角に戦うことができるユニットはコスト6を必要とする。従って、この時点で、トータル2.1から2.5程度のアドバンテージを獲得することになる。ただし、二つ目のスキルには墓地制限がつくため、ここから若干SPを引く必要がある。墓地制限7枚以上をどの程度のSPに換算出来るだろうか。これに関しては、概ねSP0.2程度であるというのが私の認識であるが、これはプレイヤーによって大きく意見に相違があるため、参考意見として頂きたい。これをひくことによって求められるアドバンテージは、1.9から2.3程度となる。概ねSP2のアドバンテージとなる。
 このSP2のアドバンテージは、優勢のグッドスタッフとしてはどの程度過剰であろうか。実は戦闘力に特化したユニットが、そのユニットよりレベルの高いユニットと互角に戦うことができる、あるいは非優勢でも同じレベルのユニットと対等に戦うことが出来るというのは、決してレアケースではない。ただし、それは多くの場合安定性を欠くものであるか(例えばバズガー、巨大暴れ象、巨大獣)、ファイルを著しく制限するものである(例えば大海の人魚魔術師)。ただし、これらのカードに比べれば、白魔剣は安定性があり使い易い。安定性があるという点で、このカードは他の勝利志向型のカードに比べ頭ひとつ飛び抜けているといっても良いだろう。この点において、白魔剣は対策可能性という観点から疑問を投げ掛けられるべきカードであると言える。
 ただし、このSP2程度がこのユニットの持つスキルの総合的な評価ではないことに注意が必要である。ここでは、対策可能性という観点からこのSP2をスキルの評価としたが、実際にはこのユニットは勝利志向型ユニットであり、OPスキルでのハンデス以外は、相手ユニットを倒すことでしかそのアドバンテージが還元されないのであり、多くの場合は白魔剣の二つ目のスキルは、SP1を過剰に使用してしまうことを忘れてはならない。これは、勝利志向型ユニット全てに共通する問題である。これは、OPドローやSPバック、SPハンデスがほぼ確実に効果を発揮することと比べてみれば、甚だ使い勝手の悪いアドバンテージと呼ばざるを得ない。結局これによって、二つ目のスキルはその価値を低める。二つ目のスキルは、実際にはSP1.5相当であり、白魔剣のスキルはトータルで1.4から1.9のアドバンテージを発生させていると評価できるのである。この評価に疑問を感じる人もいるかもしれないが、勝利時発動スキルを、勝利時のみではなく、敗北した際のアドバンテージ0も含めて評価しなくてはいけないのと同様に、勝利志向型ユニットのスキルもまた、それが効果を発揮しなかったときのことを考えなくてはいけないのである。
 ②の、本当に白魔剣に勝利しなくてはいけないのか、という問題に関しては、実はこのカードが優勢のグッドスタッフというカードコンセプトである時点で、勝利しなくても良いと言える。特に中盤以降は、SPを4消費するのであり、高SPでは単体で用いるに上安があるため、サポートカードをつける可能性が高い。結局のところ、LHの鉄則とも言うべきものだが、無駄に戦わないという方針で対応出来る。これが勝利時アドバンテージを持つカードであった、非優勢でも勝利を期待できるようなカードであれば話は別になるが、優勢のグッドスタッフであり、勝利志向型のユニットである限り、このユニットに対して優位に立てなくとも、それが理由でゲームに敗北することは稀なのである。  最後に、赤魔剣であるが、一般的なカードに対しては、その高いステータスととOPバーンがあるために相性が良い。ただし、このようなカードが非常に少なくなっている現状においては、とりわけOPバーンが無効化されやすいこともあり、環境に恵まれているとは言えない。また、比較的分解に対しては抵抗力があると言えるが、この分解も一時期ほど多く見なくなったこと、またコスト6を使用するために痛み分けに過ぎないという点で相性が良いとは言えないだろう。相性が悪いカードは、まさしくトップファイルの火山である。三つ目のスキルでAGIが2になること、OPバーンが無効化されることなどによって、敗北する可能性が非常に高い。OPバーン無効化が多く、それに対抗する形でのユニットサポも多く用いられる環境においては、このカードの真価は発揮されにくいのである。現状において、黒白魔剣ほどには赤魔剣を見ない理由は、ここにあるだろう。
 これまでは個別に魔剣を考察してきたが、最後に魔剣カードに共通する問題を取り上げることにする。
 魔剣カードは共通して、現在メタられているといってもいい。それは、今問題となっている「制約のフリーライド《の共通した特徴である「墓地依存《に対する痛烈なメタカードとして、罰の穴を入れることがもはや常識に近くなっているからである。このカードの存在は、魔剣にとって少なからず脅威であるが、その影響力は白黒魔剣に対しては比較的軽微なものに留まる。それは、これらのカードが、墓地制限をクリアしなくとも、優勢のグッドスタッフとして十分な戦闘力を発揮するユニットだからである。一方で、深刻な影響を受けるのは赤魔剣である。特に序盤で使い物にならないため、終盤で使用できないのであっては、完全にファイルのお荷物となってしまう。現在、黒白魔剣に比べて使用される比率が低い理由の一端はここにあるだろう。
 逆に白黒魔剣は、サポートを用いてトップファイルである火山を打ち破ることが出来る上に、通常のファイルに対しても有効であることからこの点において環境に恵まれていると言える。もちろん前提として優勢で用いることとなる。結果として、トップファイルに対抗できる優勢白と黒のグッドスタッフとして、これらのカードは広く用いられているのである。

 以上の議論を踏まえ、対策可能性という観点から、魔剣カードが「壊れ《であるかを検討する。
 まず、対策可能性という観点からみた場合は、最も対策の必要性が高いカードが黒魔剣である。このカードに対しては、最も対策が成されやすいカードであり、この観点からみた場合には「壊れ《ではない。それは、禿ラステやラスアムのような、非常によく見かけられるカードに対して完全に無防備だからである。
 白魔剣は、そのカードコンセプトは優勢のグッドスタッフである。そして、これはコストパフォーマンスに優れたグッドスタッフである。このようなグッドスタッフに対して、有効な対処法はない。ただ、単純により強いカードを用いて倒す他にないのである。結局このカードが対策可能かどうかを判断するには、①このカードと互角以上に戦う場合に、どの程度のコストが必要になるのか、②このカードに勝利しなくてはいけないのか、の二点を議論する必要がある。
 ①に関しては、それは概ねSP2に相当し、白魔剣が安定性の高いユニットであることから、これは単純に勝利を志向する場合には過大である疑いが強い。ただし、②に関しては、このカードが優勢のグッドスタッフの枠組みに留まっていること、勝利時発動の強力なスキルを所持していないことから、特に問題にはならない。結論を言えば、このユニットは他の勝利志向型のユニットにくらべ優れているものの、それは明確な差が生じるレベルのものではなく、対策可能性という観点から問題視するレベルではない。
 最後に赤魔剣である。赤魔剣は、本来対策可能性という観点から大きく問題視されるべきカードである。というのも、優勢の原則を無視するからである。もちろん、終盤に強くなる大型というのはすでに見られており、それらのカードも優勢の原則を無視しているのだが、限界的な使いやすさ、相手にしたときの厄介さという点ではこちらの方が上のカードである。将来的には、このカードが少なからぬ脅威となることは十分予想される。
 ただし、それは将来的な脅威であり、対策可能性は将来の問題を議論するところではない。もっぱらそれは現在の環境と照らし合わせて、そのカードに対する対策を一般的な形で行うことができるかを論じるところである。赤魔剣は現在、トップファイルとそれに対する対策という、現状最も頻繁に遭遇するカードに対して相性が悪いため、この対策可能性という観点から、極めて容易に対策がなされていると判断する。
 結論を述べれば、白魔剣に関しては、優勢のグッドスタッフにとどまる限り、対策可能性という観点から、「壊れ《の疑いはあれども悪性ではないと判断する。黒魔剣、赤魔剣に関しては、対策可能性という観点から、これらのカードを「壊れ《とは言えない。ただし、黒魔剣に関してはアンチカードの禿ラステとラスアムの使用率がどうなるのかを、赤魔剣に関しては現在のトップファイルが修正されたあとにどの程度使用されるのかを注意して見る必要がある。対策可能性は、極めて流動的だからである。
 

分析4.ファイルの強さ

 強カードがあったとしても、そのカードがトップファイルではないとすれば、そのカードが強さという観点から「壊れ《と評価されることに大きな疑問を感じざるを得ない。というのは、カードゲームは単体のカードの強さで勝つゲームではなく、ファイル全体の総合的な強さで勝つゲームだからである。従って、例え単体で強力な能力を持ったカードであったとしても、すぐれたパートナーを見つけることが出来ないのであれば、必ずしもこれを「壊れ《と判断すべきではないのである。そしてこれは、全く逆のことも意味している。つまり、単体で強力ではなかったとしても、全体として見れば極めて優れたファイルの完成に貢献するカードは、場合によっては、ファイルの強さという観点から「壊れ《に成り得るのである。
 まず、このファイルの強さという観点からの考察であるが、これはMTGにおいて極めて重要である一方、ALやLHのゲームでは、実はそれほど重要ではない。というのは、ALもLHも、コンボに頼る形で勝利を目指すゲームではないからである。ALにおいては、ファイル構築力は非常に重要だが、カード同士がシナジーを発揮しにくい点で、そのカード自体の強さに寄らず、特定のカードが「壊れ《となることは稀である。また、LHにおいては、ファイル構築力そのものが相対的に重要性を欠く。実際は、ある程度の資産とプレイングテクニックの方が遙かに重要である。
 結局のところ、ALやLHで、「壊れ《を考察する際に重要となるファイルの強さとは、「壊れ《が疑われるカードの入ったファイルがどれほど強いか、という点である。そしてここでの強さとは、対策可能性を論じるのではなく、RPがどの程度高いかという、総合的にどの程度安定しているのかという観点から見た強さである。

 このような、「RPがどの程度高いか《、「総合的にどの程度安定しているのか《という観点からファイルの強さを見る場合、これはLHの特徴であるが、それが優勢の原則を守っているのかどうかということは極めて重要である。というのも、優勢の原則を守り、優勢のグッドスタッフと効率的なカードの集合として作られた強ファイルというのは、「壊れ《と認定することが出来ないからである。これは、「ゲームの面白さに対する壊れ《という定義を用いていることが理由である。多くのプレイヤーは、この優勢の原則がLHというゲームの面白さにとって極めて重要であることを認めるであろう。少なくとも、優勢の枠組みを無視することが、LHというゲームにとって良い影響を及ぼすという認識のプレイヤーは極めて少数であることを確信している。
 従って、ここでは魔剣を純粋に用いたコンセプトファイルがどの程度強いのか、という観点からファイルの強さを考察しなくてはいけない。
 まず現実に純粋な魔剣ファイルが現在フォルで見かけられるのかどうかということに関して言えば、これはほとんど見ることが出来ない。というよりは、純粋な魔剣ファイルを用いるプレイヤーというのは、魔剣発売後からEPAが頻繁に純粋な魔剣ファイルを使っていたものの、他に見ることはなかった。そしてこれは、現在も同様であり、純粋に魔剣を用いるプレイヤーは殆どいない。少なくとも現在においてその理由はかなりハッキリしており、純粋な魔剣ファイルでは相手が罰の穴を用いた場合(これは極めて高い可能性で使用されるが)終盤でのカードパワーが決定的に上足するからである。余りにも相性の悪いカードが多すぎて、魔剣ファイルというコンセプトが現状日の目を見ることはほぼないといっても良いだろう。
 もはやこの時点で、魔剣ファイルはファイルの強さという観点から「壊れ《ではないと決定づけることができる。
 もはや結論がついたところで、聊か蛇足ではあるが、もう一点魔剣というコンセプトがいま一つ使用されない理由がある。それは、魔剣というカードは、魔剣を用いれば用いるほど手札が枯渇していき、選択ハンデスとランダムハンデスの差が縮まっていき、最終的には、魔剣を用いて勝つと相手との差がつきかねないような状態になってしまうという自己矛盾を抱えているのである。それは、手札の比率の差が大きくひらくからである。例えば、お互いに手札5枚の条件で白魔剣を使い、相手のスルーを想定すると、次のターンには手札4枚対6枚になり、比率で1.5倊になる。これが、お互いに4枚、3枚と少なくなっていくと一層差は開いていく。ビートダウン気味に戦い、こちらの手札枚数が少ないような場合には尚のこと事態は深刻である。

 私は本稿において、魔剣が壊れであるかどうかということを詳細に検討してきた。その結論として、私は魔剣が「壊れ《ではないと判断する。
 ただし、それは魔剣が全く「壊れ《の疑いがないことを意味してはいないし、魔剣が強いカードではないことも意味してはいない。ただ、ゲームの面白さを搊なうほどに魔剣は強力なカードではないし、魔剣ファイルは強力ではないし、環境は変質させられてはいないし、対策が難しいわけではない。それ故、私は「壊れ《でないと判断したのである。
 ただし、再三にわたって強調するが、「壊れ《の疑いは残る。特に、そのカードの強さを重視して壊れを考える際には、あるいは「壊れ《となり得るだろう。その際には、恐らく魔剣の戦闘力とOPハンデスが問題になる。従って、最後にこの点を再度振り返ってみることにする。
 まず、黒魔剣であるが、これは魔剣の中で現状最も「壊れ《に近いカードである。それは、このカードの持つハンデス性能が非常に高いからである。アタック発動で、相手の手札から任意のユニットカードを破棄するという能力は、相手の手札をサーチ出来ることと相まって極めて高く評価されるべきである。優勢以外に用いる際も、GSP2ないし3程度であれば、積極的に用いることが出来る。また、レイテの2番目のスキルが発動するような場合には、非優勢であっても勝利を期待できる。ただし、優勢黒で用いるさいには、このカードのアンチユニットである禿ラステ、ラスアムを相手が用いる可能性が高いことには注意が必要である。このカードが壊れではない理由は、この2枚のカードと、それなりの頻度で見かけるルザの存在が大きい。結局このカードは、魔剣として用いるというよりも、序盤の優勢黒、中盤から終盤にかけては非優勢でハンデス目的のカードとして使用することが多い。このカードが非優勢でも十分に勝利出来るような場合には、このカードを壊れと認識するのが妥当である。
 次に白魔剣であるが、このカードは優勢のグッドスタッフとして極めて優秀なステータスとスキルを所持している。これは、総合的にはSPで1.5程度の価値がある。特に勝利を志向する場合には、このユニットのスキルの評価はSP2であり、大いにそのコストパフォーマンスに期待出来るカードである。このように優れたカードでありながら、何故白魔剣は「壊れ《ではないと判断されたのであろうか。それは、このカードが優勢のグッドスタッフという、このゲームの大原則を守るカードであり、その範疇内で優れたカードであった為である。同様の理由で、私が「壊れ《としないカードに、カサンドラがある。これもまた、このゲームの原則を維持する範囲内で強いカードであるために、ゲームを面白くないものにはしないという点で「壊れ《ではない。
 最後に、赤魔剣である。このカードが「壊れ《でない理由は、序盤から中盤にかけて非常に使いにくいカードであるということと、終盤は罰の穴という極めて多く使用されているメタカードの餌食になる可能性が高いからである。また、それに加え、トップカードの火山に対して、このカードは非常に相性が悪い。結局、現在最も用いられるカードによって容易に対策がなされるようなカードは、「壊れ《とも言えないし、壊れと言うことも出来ない。ただし、今の環境が変わって、火山が用いられないようになった場合にどうなるのかという点で、将来的な脅威であると言えるだろう。

 上記の分析に対する質問や疑問に関しては、大いにこれを求めるものであります。というにも、壊れに対する分析の仕方、判断の仕方というのを精度の高い形式化されたものとするのが目的だからです。掲示板にでも、もしくはEPAのブログの方にでも書き込みをお願いします。