魔法少女リリカルすずか
「なって見せます! 一度っきりの魔法少女」
ここは月村家のオープンテラス。
中庭でテーブルを囲んで優雅にお茶の一時をしているなのは、フェイト、はやて、アリサ、すずかの5人がいる。
月村家は猫屋敷とも呼ばれており、五匹ほどの猫が思い思いの場所で寛いでいて、
そのうち2匹はなのはとはやての膝の上で気持ちよさそうに眠っていた。
「私、魔法少女になりたい」
そうすずかが口にした瞬間、なのはとはやては仔猫を撫でていた手が止まり、
フェイトは信じられないものを見るかのような瞳ですずかを見詰め、アリサは飲
んでいた紅茶を盛大に噴き出した。
「えほっ、けほっ……す、すずかあんたいきなり何を言い出すのよ!」
「アリサちゃん、私真剣だよ」
気道に入ったのか、咽ながら怒鳴るアリサに対し、すずかは極めて冷静に返す。
「私ね、なのはちゃん達が羨ましいんだ。主役だし目立ってるし女の子の憧れの魔法少女だし出番多いし存在感あるし」
「すずか、本音入ってるって」と、アリサのツッコミ。
「兎に角、私も魔法少女になりたいの。アリサちゃんなんかバーニングアリサとして目立っているじゃない。
だったら私も、何か目立つようなことしたいの!」
「すずかだって目立っていると思うよ」
すずかの方を見ながらフェイトが言った。
「え?」
「ほら、よく出てるじゃない。漫画の柱の間とかに、すずかの一口メモとして」
「あ……あれはまた別なの。私だってこう、柱4段ぶち抜き出来るような目立つことをしたいのよ!」
すずかは性格上、大人しくて引っ込み思案である。
決して自分からは意見しない子だったのだが、1年の時にアリサに苛められ、
なのはと出逢ってから、少しずつだが自分の意見を口にするようになった。
そして今、すずかは魔法少女になりたいと言う。言い分はどうあれそれぞれスポットを浴びている他の4人が羨ましかったのだろう。
「せやけど、魔法少女になったすずかちゃんの絵やSSを書いている人はおるはずちゃう?」
と、今まで黙って成り行きを見守っていたはやてが口を開いた。もっとも、今再起動したと言っても良い。
「そうだよすずかちゃん。そんな無理して魔法少女にならなくても良いよ」
「そうだよすずか。それに、魔導師の仕事って結構大変だよ?」
「違うよフェイトちゃん。私は皆に夢と愛と平和を与える可愛い魔法少女になりたいの。
可愛いヒラヒラの服に素敵なステッキを持って、可愛いマスコットと一
緒に悪と戦うのよ」
駄目だこいつ、早くなんとかしないと……。そう思うフェイトであった。
「んー、せやったらマリーさんに頼んですずかちゃん専用の可愛らしい杖、作ってもろたらええんちゃう?」
なんであんたそんなに乗り気なのよ……と心の中で突っ込むアリサ。
なのははもう、止めても無駄かも、と諦めかけていた。
そんなこんなで。
一同は時空管理局に赴き、エイミィとマリー、そしてクロノにすずかを魔法少女にして欲しいと頼みにやってきた。
もっとも乗り気なのはすずかとはやてだけであるのだが。
話を聞いたエイミィとマリーは当然の如くやる気になり、クロノはこめかみを抑えて唸りだした。無理も無い。
「全く、君達は……」
「ごめんね、クロノくん……」
詫びるなのはだが、クロノは「まぁ、良いけどな」と苦笑と共に溜息を吐く。
「それにしても魔法少女になりたいかぁー。すずかちゃんも思い切ったこと言うね!」
「ええ、全くです」
「それでマリーさん、私に似合うデバイスってありますか?」
「そうだねぇ……すずかちゃんはなんとなく銃が似合いそうだよね。
今新しく銃型のストレージデバイス開発中なんだけど、使ってみる?」
「本当ですか!?」
マリーの申し出にすずかは目をキラキラ輝かせて身を乗り出す。
「勿論、これが成功したらインテリジェントデバイスにも組み込もうって話になっているから」
「是非、使わせて頂きます!」
「おし。それじゃー可愛いバリアジャケットも用意しないとね。すずかちゃん、こっちに来て」
エイミィに呼ばれ、すずかは元気良く返事をするとそのまま彼女に着いて部屋を後にしようとした。
「ちょっと待てエイミィ!」
が、クロノに呼び止められ、足を止める。
「どうしたの、クロノくん?」
「どうしたもあるか。あのデバイスはまだ試験的な物だろう。何があるか解ったものじゃない。そんな危険なことに、一般人を巻き込むな」
「大丈夫だって。訓練室でやるし。実弾って訳じゃないんだからさ」
「私もクロノくんと同じで反対です。もしすずかちゃんの身に何か起こったら……」
「私も、なのはやお兄ちゃんと同じ意見」
三人に反対意見を出され、流石のエイミィも難色を示す。
しかし、はやてはいつもの笑顔でさらりと凄いことを言い始めた。
「まぁ、何かあったらその時はその時やって。なんならうちらがサポートとして一緒におったらええ。そやろ?」
「は、はやてちゃん……」
「はやて、あんたねぇ!」
「アリサ」
喰って掛ろうとしたアリサだが、フェイトに制され渋々踏み止まる。
「……解った。万が一の為にフェイト、なのは、サポートに回ってくれ」
「解った」
「了解」
そしてすずかはエイミィに連れられ、今度こそ部屋を後にした。なのはとフェイトは先に訓練室に行き、デバイスの準備を開始する。
「あーあー。すっかりエイミィさん達もノリノリね」
両手を後ろの首筋に当てながら、アリサが言う。
「それにしても、はやてがあんなに薄情だとは思わなかったわよ。あんた、すずかがどうなっても良いの?」
「そやったら、アリサちゃんはすずかちゃんや皆が信じられへんの?」
いきなりの問い返しに、アリサは思わず口を噤んだ。
「実験段階のデバイス言うても、本物のピストル扱うわけやない。弾にしても、
元から篭められている魔力で出来た弾丸を撃ち出すだけや。せやろ、マリーさ
ん?」
「もち!」
「それに、誰かと戦うわけでも、ましてや命のやり取りをすることでもあらへん。なのはちゃんとフェイトちゃんがついとるんや。
それやったら、すずかちゃん
を信じて見守るのが友達とちゃうかな?
頭ごなしに危険だからって相手の夢を妨げたら、それは友達ちゃうと思う」
「だ、だけど……」
「わかっとる。けど、すずかちゃんは意外と頑固やろ?」
「? ええ、そうね」
確かにすずかは頑固だ。自分の意見をあまり口にしない分、一度こうと決めたら何が何でも貫き通す。
「魔法少女になりたいんやったら、一度やらせればええ。それで無理だと解ったら……すずかちゃんも諦めるやろ?」
それを聞いて、アリサの顔に呆れが生じる。
終始笑顔のはやてだが、頭の中ではそこまで見越していたのだ。
「なかなかに策士ね、あんた。けど、すずかは一度の失敗じゃ諦めないと思うわよ?」
「そうやねー。まぁ、まだ成功も失敗も無いんやけどな」
「すずかちゃん、来たよ」
マリーの言葉にアリサとはやてはモニターに注目する。
そこには、青いバリアジャケットを身に纏ったすずかの姿があった。
いや、バリアジャケットなのだろうか?
青のブレザーっぽい服に赤いネクタイ、チェックの入った紺の膝丈スカート。
肩からマントを羽織っている辺りはギリギリバリアジャケットっぽいが。
「マリーさん、あれ……バリアジャケット(防護服)?」
「勿論ですよ。魔法少女っぽさをイメージしました♪」
どこからどうみてもただの女子学生がマントを着たようにしか見えない。
『それじゃ始めるよ。マリー、準備は良い?』
マイク越しにエイミィの言葉が聞こえてくる。
「おっけーです先輩。すずかちゃん、ストレージデバイスを起動させて」
『はい!』
頷くと、すずかはスカートのポケットから一枚の青色のカードを取り出した。
そしてそれを上空に投げるとカードが光り、次の瞬間には一丁の銃の形になる。
それをキャッチすると、すずかは正面にある的に向かって銃口を向けた。
「良いすずかちゃん? 危険は無いと思うけど、万が一に備えて用心してね」
『了解です!』
この時、訓練室ですずかの背後でレイジングハートを構えていたなのはは、あることに気づいた。
それは彼女の隣でバルディッシュを構えたフェイトも同じようで、二人は互いの視線を見詰めながら、
アイコンタクトのように心の中で会話する。
(ねぇ、フェイトちゃん)
(うん、なのは)
(すずかちゃんって、可愛い魔法少女になりたいんだよね?)
(そ、そうだね)
(銃って魔法少女ってイメージじゃないよね……)
(そうだね……。すずかに言う、なのは?)
(で、でもすずかちゃんなんだかうれしそうだし……)
(どうしようか)
二人の心配は他所に、すずかは銃型のストレージデバイスを構えて嬉しそうにしている。
『それじゃ、行きます!』
キッと標的である的を見据え、それに向かって、思いっきりトリガーを引いた。
後に、その実験の成功が元で銃型のインテリジェントデバイスが完成する。
だが、そのあまりの破壊力に今だ生産数は少ない。
なお、実験終了後、月村すずかはこう語っている。
「やっぱり私は魔法少女は向いてないみたいです♪」
「あれだけ散々引っ掻き回しておいてこのオチかぁ――――!!!」
おしまい
【あとがき】
と言うわけで、魔法少女リリカルすずかをお送りしました。
所々ネタがあります。blackgate様、ryu-minBS様、申し訳御座いませんでした。
今回はまぁ、ほとんどノリと勢いと言うか、お風呂で思い浮かんだネタをそのままというか。
だから後半のなのはとフェイトのアイコンタクトはある意味、このSSの最初と途中の矛盾を代弁しています。
そう言えば魔法少女リリカルすずかをぐーぐるで検索するとうちのブログが最初に来る……なんで?
因みに、読みやすい位置で改行も施してあります。SSだしね。