「恋する闇の魔導師:第7話」



その2日後―
突然、アルルがしばらくの間魔導学校を休むと言い出し、旅に出た。
理由は12年前に失踪し、行方をくらましていた自分の父親の手掛かりと情報を得たかもしれないからとアルルはそう言っていた。
アルルはルルー達を始めとする皆はもちろん、俺にも旅立つ前に挨拶をし、その次の日には本当に旅立った。
詳しい詳細は色々とワケありで皆には打ち明けず、アルルはカーバンクルを連れて1人で旅立ち、皆の前から姿を消した。

シェゾの迷宮にて―
ここは俺の住処であり、かつて俺はアルルの魔力をじっくり吸収しようとここの地下牢に拉致監禁したことがあった。
この場所の存在はウィッチ以外には誰にも教えておらず、今は俺とウィッチだけの秘密の場所だ。
簡単に言ってしまえば俺とウィッチの愛の巣だと思う。
あのノー天気なアルルのことだから、ここの場所のことなど覚えていないだろうし、とっくに忘れている頃だろう。
でも、ウィッチがここに来るのは今日が始めてで、俺は今日のこの日が特別な日のように感じていた。
今日は互いに今日一日の仕事が終ったら、ここで過す約束をしていた。
ウィッチをこの迷宮の俺の部屋へと案内し、今日は2人でゆっくりとしていた。
今、俺達は2人ともこの部屋のベッドの上に腰をかけている。
「俺、少しはいい男になれたか?」
「いきなり何をおっしゃってるんですの?」
俺がウィッチの顔を見て冗談抜きで真面目に質問すると、ウィッチの口調はコイツは一体何を言っているんだろう的な感じの喋り方になる。
馬鹿にしたような感じではなく、ハテナマークが付いたような一体どうしたのだろうと言う感じの声と表情で。
「だから、前よりはいい男になれたかと聞いているんだ。」
彼女は高級人形のような端麗な容姿の美少女だけど、俺は美形でも不細工でもない普通の男。
ブ男まではいってはいないが、俺とウィッチとでは客観的に見て美女と野獣くらいの差がある。
「これ以上格好良くなってどうするつもりですの?」
恋する女が綺麗になれるのならば、恋する男だって格好良くなれるのではないかと思う。
自分の容姿はコレだから、容姿の方では世の中のイケメン達に負けていたとしても、それ以外の面では自分を磨いている。
好きな娘の為に少しでもイイ男になりたくて、キキーモラの元で花婿修行していることも打ち明けたのだが、今の彼女の言葉は俺にとって意外なセリフだった。
「シェゾは今のままでも十分カッコイイんだから、その必要はありませんわよ。」
俺の場合は決してモテるようなタイプではなかった。
魔導学校に通っていた頃、一時的に女子にモテた時期はあったが、それは当時の俺が成績優秀な生徒だったからおだてに出たと言うだけ。
アルルの言う「そんなに根暗だと、せっかくの美形が台無しだよ?」あのセリフもそれと同様に人をからかっているだけだろう。
今のウィッチの喋り方は冗談まじりな口調ではく、ごく普通の喋り方で顔も普段通りの何気ない表情だった。
と言うことは、ウィッチ視点での俺は美形に見えているってことだろうか?
サタンの野郎にしてもあれのドコが美形なのか俺には理解出来ないが、ルルー視点でのサタンが美形に見えるのと同じで、一応俺もウィッチ視点での美形と言う意味なのだろうか?
「私から見たシェゾは容姿的には、髪を切ったシェリーさんに男物の服を着せて男装させたようなカンジですもの。」
髪を切ったシェリーの男装・・・?
その衝撃の一言に一瞬俺は言葉を無した。
「シェリーさんと言うのは、あのメインの町の美少女コンテストの時にアルルさん達と一緒にいた、ルルーさんの幼馴染の女性のことですの。」
そう言えばウィッチもあの時の美少女コンテストに参加していたんだよな・・・。
ウィッチが言うにシェリーとは180cm超のモデル体型の長身美人、俺はファッションや流行とやらには疎いからそう言うことはよくはわらないが、ファッション誌に載っているモデルは180cm超の長身の女なんて珍しくはないだとか。
ウィッチは何食わぬ顔でニッコリと微笑ましく笑って、シェリーのことを話し出す。
「ああ言う女性程、男装すると普通の男性よりも格好良くなるってよく言いますもの。」
とりあえず俺が女装して(正確には無理矢理やらされたのだが)シェリーになったことは彼女にはバレていないらしい。
「私が男性に生まれていたら、自分の嫁にしていたところかしら。」
解釈させてもらうとウィッチからすればシェリーはモデル体型の長身美人、俺の容姿はそのシェリーの男体化のような美男。
ウィッチ的にシェリーの容姿は高評価、いくら正体がバレていないとは言え色々と複雑な気分だった。
「どうかしたんですの?」
ウィッチはキョトンとした顔で色々な意味で複雑な顔をした俺の顔色を覗き込む。
あれは俺にとっては人生最大の悪夢であり、2度と思い出したくない思い出・・・。
「いや、何でもない。」
俺が気だるそうな顔をしながら疲れたような声で言うと、ウィッチは一体どうしたのだろうと言う顔をする。
「と、とにかく俺、一生懸命花婿修行してお前の最高の夫になってみせるぜ!」
俺はベットから立ち上がり、拳をグっと握り締めガッツポーズを決めて捲し立てる。
とにかくシェリー(女装)のことに関してはこれ以上は聞きたくないし、表向きはごく普通の何食ぬ顔を見せるも内心では冷や汗を掻き、話題をそっちからずらす為とにかくここは誤魔化すのみ。
「明日は休みですし、たまにはのんびりしません?」
「そうだな・・・。」
無邪気な笑顔でそう言われると、俺もつられて無邪気に笑う。
無防備な笑顔を曝け出すウィッチを出来ることならこのままさらってしまいたいと思う。
でも、ウィッチ達の一族には色々と掟があり、彼女が1人前と認められるその日まではそれは出来ない。
ウィッチにだって立場があるし、ウィッチには帰る場所もあり、ウィッチを大切にしている者達だっているから・・・。
とりあえず今はただ彼女の魔女としての成長を待ち、彼女を俺の手元へさらうのは機が熟した時にしよう。
この時、俺は恋愛感情と同時に独占欲と言う名の感情を覚えた。






8話へ続く





コメント
保存シリーズはまだ続きますが8話からは18禁です(UPの際は裏ページにお願い致します)。
よく考えたら今回の7話も短かかったので、引き続き8話(18禁)も連投します。
「クールなのに熱い男」、「カッコウィグィィ」と言ってもらえるなんて投稿した本人も驚きです。
「細かい設定まで練りこんでいる」と言われても、あれは細かいと言うよりは色んな要素がごちゃまぜなだけですが(笑)。
シェゾにとっては悪夢でも、私達を始めとするシェゾ厨にとっては萌え(今だにシェリーちゃん中毒です)。
真・魔導のシェリーちゃんの可愛さは相変わらずパネェ(私を萌え殺す気ですか織田さん!!)。
自分の容姿に無自覚なシェゾは世の中のイケメン達に負けまいと一生懸命です(シェゾは十分美形だよ)。
しぐれさんが書くようなカッコウィグィィはもちろん、カワウィグィィも書ければいいなぁと思います。
しぐれさんが書かれるシェゾはカッコウィグィィだったり、カワウィグィィだったり。
私的にしぐれさんが書かれるシェゾは「クールなんだけれどもカッコ可愛いシェゾ」と言うイメージですv
この後シェゾにイロイロなコトされます。
欲情したシェゾに美味しく食べられちゃいます。


★主催者より★
7話のアップが大変遅くなりまして申し訳ありません;;;
甘甘ラブラブな二人に読んでいる間中にやにやしておりましたvvv
リリアさんが書かれる二人の雰囲気、大好きです(*´∀`*)