「恋する闇の魔導師:第6話」



意外な形であっさりと決着はついた。
今の俺は闇の魔導師だけれども普通の人間だ。
闇の魔導を継承し、闇の力を自分のモノにした以上、これから先は何をするのも自分の自由。
闇の力によって自身が滅びを迎えることももうないだろう。
普通に年老いて普通に寿命を迎える、以前のように死んでまた蘇生することはないそうだ。
このまま普通に年老いて寿命を迎えるか、ウィッシュのように魔力で若さと寿命を保つかは自身の自由だ。
俺としては生きる時も死ぬ時もウィッチと一緒がいい。
そして、何かあった時は自分の命に代えても守りたいと思っている。
今の俺なら自由に彼女の元へと行けるし、俺が触れることで彼女の身に災いが降り注ぐこともない。
こんな風に心の底から笑ったのはもう何年ぶりの話だろう。
ウィッチは相変わらず修行中、以前と比較して魔力も相当パワーUPしている。
魔力だけでなく精神的な面でも色々な方向で成長し、上手くいけば年内には一人前の魔女として認められるかもしれないくらいに。
あのダークマター事件のダメージのせいで、自分の寿命は思っていた程長くはないかもしれないとウィッチのいない場所でウィッシュに打ち明けられた。
もしも、ウィッチが一人前の魔女になる前に自分が死んでしまった時は、俺が自分の代わりにウィッチを一人前の魔女に成長させて名前を付けてやって欲しいとまで言われた。
彼女達魔法使いの一族は一人前になるまでは名前は与えられず、それまでの間は男は「ウィザード」、女は「ウィッチ」と称される。
ウィッシュがそこまで言ったってことは、それだけ俺は信頼されていると言うことであり、自分の大事な孫を任せられると言うことだ。
俺はようやく彼女と手を繋ぎ、口付けを交わして、ついに念願の2人きりの初デートを果した。
あの頃は互いに意地を張り合い、時には喧嘩もしたけれども、本当の恋人同士になってからの今の俺達は普通の男女だ。
今の俺は魔女の修行と店の経営に明け暮れる彼女をただ見守る日々を送っている。
成長して変っていく彼女と成長しても変らぬままの彼女、時間がある時は俺が頻繁に顔を出しているから男が寄って来ることもない。
あの頃の俺なら噂にされるのは恥しいと思っていたけれども、今の俺はこのまま見せつけてやればいいと思っている。
こうすれば変な虫は寄って来ないし、コイツはもう俺だけのモノだと周囲の連中にも十分思い知らせてやれる。
せっかく変態の汚名も無事に返上し、その誤解も解けたんだし、俺とウィッチの仲を引き裂こうと考える奴は誰1人としていなかった。
闇の魔導師としての人生を送りながらも、昔と同じ可もなければ不可もないごく普通の日々を送っていた。
今の俺とアルル達はもう敵同士ではないし、奴らとはもう二度と戦うことはないだろう。
その後、アルル達とは「昨日の敵は明日の友」その言葉通りに友達になってはいないが、付かず離れずの奇妙な関係と言ったところ。
あいつらのことは決して嫌いではないけれども、これまでのことを振り返るとロクな目に遭った覚えがないので、俺は今でも距離を置いているつもりだ。
一応、生活資金も必要なので今はルシファーの屋敷で執事として住込みで働いている。
独り暮らしの長い俺は家事全般と節約は人並みには出来るけれども、キキーモラの元で花婿修行をする為に。
女心のわからない男は愛想を尽かされるって言葉はよく聞くし、将来結婚した時は亭主関白な夫よりも妻子を支えられる良い夫になりたいと思っているから。
仕事もするけれども、子供が出来たら一緒に育てて主夫も勤まるような最高の婿になりたくて、キキーモラに相談話を持ちかけたら快く協力してくれた。
こう言うことに関してはキキーモラが適しているだろうし、キキーモラの元で男を磨けば100%間違いないだろう。
キキーモラからは家事全般はもちろん、社交ダンスから上流階級マナー、さらには服の着こなし方まで男の手本とやらを俺は色々と学んでいる。
あと、乙女心と言うのはどう言うものなのか等に関しても様々なアドバイスを元に色々と勉強中だ。
魔法薬・マジックアイテムの製造や研究もしているルシファーはその仕事に適している助手を欲しがっており、ある日俺を執事兼魔法薬等の助手として起用したいと言い出してきた。
もちろんその分の給料も支払われ、手当て等も付けると言う話で俺は奴の執事兼魔法薬の助手として働いている。
俺があの時フったキキーモラの後輩のメイドは今は別の男と交際中、相手はルルーの亡き母親の親友夫婦の息子だとか。

ルシファーの屋敷にて―
今日の自分のノルマを終えた俺はこの屋敷の自分の部屋の中にいた。
部屋の明かりを消し、ベッドの中で布団をかけた状態で就寝に入ろうとしていた。
「まさかな、この俺がルシファーの野郎の元で執事をやるなんてな・・・。」
世の中は本当にわからないものだと俺はそう思う。
「まぁ、人生ってのは先がわからないからこそ面白いんだ。」
そう、先のわかりきった人生なんてあの頃の退屈な人生と同じだ。
「明日は早いし、もう寝るか。」
明日は俺の執事としての仕事はないが、ルシファーの魔法薬・マジックアイテム等の研究の助手としての仕事がある。
しかも、明日に限ってはあの格闘機械魔導師のシュテルンも来るとか言っていたな。
俺は眠りに就き、明日を迎えた。






7話へ続く




★リリア様より★
保存シリーズはまだ続きます。
2年以上も前に書いて保存してそのままと言っても、実は何回か追記修正とかしたので、もしかしたら本当にコレを書いたのはそれよりももっと前かもしれません(ウロ覚え)。
ルシファー先生と同じく山本版魔導のオリキャラのシュテルン博士ですが、サタン様達と同じく上級魔族で魔導学校の教師です。
ルシファー先生とは付合いの長い友人同士で「ハゲ親父」は禁句(笑)、旧友と言うか腐れ縁と言うかそんな関係。
好きな女の子の為に花婿修行を決意するシェゾ、キキちゃんはシェゾの目から見てもマトモな人に映っていたんだと思う(ちなみにキキーモラは人ではなく精霊ですが)。
アルルと出会って以降、女難に見舞われたせいか自分の周りにはロクな女がいないと思っているシェゾ。
シェゾ視点でのウィッチ以外の女性陣は「アルル=童顔で色気ゼロのチンクシャ魔導師」、「ルルー=頭よりも身体の方が働く筋肉ゴリラ女」、「セリリ=被害妄想の人魚でこの手のタイプは苦手」、「ハーピー=歩く超絶殺人音痴」、ドラコやキキちゃんは多分空気なんだと思う。
恋する闇の魔導師と言うワケで今回はウィッチの為に花婿修行するシェゾ、私もしぐれさんのサイトの小説のようなカッコウィグィィが書けたらいいなぁと思ってます。
自分では魔導師の塔のようなイケメンシェゾとヒロインウィッチを目指したつもりなのですが、周囲のシェウィファンの方々にもそれらしく見えることを祈ります。


★主催者より★
ウィッチのことを想うシェゾに悶えました。本気で悶え死にそうになりましたvvv
シェゾが執事!!執事服とかめっちゃ似合いそうだな、とかによによしながら読ませて頂きました♪
リリアさんの書かれるシェゾは「クールだけど熱い男!!」というイメージですヽ(*´∀`)ノ正にカッコウィグィィvvv
次回も期待しております☆彡