「恋する闇の魔導師:第3話」



俺が背負ってきたものを知ったウィッチは、悲しげな表情で俺を見る。
「アルルの次はサタンやルシファーも、それが俺の使命だと今までそう信じ続けてきた。
そう、それがルーンロードの呪縛を打ち砕くための手段だと・・・。」
「なら、アルルさんの魔力を狙わなくなったのはなぜですの?」
ウィッチはこんなこと聞いていいことなのだろうかと戸惑いながらも、俺に問う。
その表情は、彼女の心は不安に揺れているのだろう。
「だが、それが逆にルーンロードの思う壷だったんだ。
俺が他人の魔力に執着心を抱くようになったのは、俺自身の意思ではなかった。
この衝動に駆られたのも全てはルーンロードの呪縛によるものだったと、つい最近になって気付いたんだよ。」
と言うことは、俺は長い年月もの間ずっと奴にいいように踊らされていたことになる。
それが悔しくて、腹が立って、自分の拳をぐっと握り締めた。
「シェゾ・・・。」
今の俺にかける言葉が見つからなくて、ウィッチはどうしたらいいのかわからなくなっている。
顔では、彼女の前では笑顔で捲し立てて見せても、自分の声には怒りと憎しみが篭っていたからだろうか?
彼女はそんな俺の心境を察してか、流石にそこには普段見せる笑顔はなかった。
俺は引き続き話を再開させる。
「だから、これまで吸収してきた魔力は元の持ち主に返したんだ。
適当な理由を付けて詫びておいたから、そいつらの中には誰も俺を恨んでる奴はいない。」
とりあえず、ここは彼女を安心させるためにそれを先に言っておかないと。
もちろん、今のその言葉に嘘偽りはない。
「それで貴方は全てをリセットして、振り出しからやり直す決意をした。
今は誰の魔力も吸収する気はないけれど、貴方にはまだやるべきことがある?」
ウィッシュの問いかけに俺は真剣な顔で2人にその意を示す。
「ルーンロードの呪縛を自らの手で断ち切るための、俺自身の本当の戦いは始まったばかりだ。
今度こそルーンロードの呪縛を断ち切り、自分の闇の魔導を継承してみせる。
運命に抗う力と、自分自身が望む幸せな未来を手に入れるために。」
するとウィッシュは普段通りの穏かな顔をする。
「さっきはごめんなさい。」
「何がだ?」
「さっきの、この娘の心が貴方から離れていくのも時間の問題だと言うのは嘘です。」
「ああ、そのことか。」
真面目な顔して言うものだから、てっきり本当かと思って一瞬不安になったんだけど・・・。
だから自分自身の話をこの場で全て打ち明かしたんだけど・・・。
「なんて顔してるのですか?」
クスクスと苦笑いするウィッシュに対して、俺はムっとしているかホっとしているのかわからない複雑な心境に駆られる。
一方、ウィッチは祖母であるウィッシュが俺に自分のことを、何をどんな風に吹き込んだのか気になって仕方がないと言う顔だった。
「さっきのは恨むぞ。
・・・だが、今までのことを話すことが出来て少しホっとしているところだ。」
機会が出来たら、どの道ウィッチには自分のことを全て打ち明けるつもりだったから。
このまま時が止まってしまえばいい。
「えっ?
ちょっと、シェゾ・・・。」
俺の胸に顔をうずめている状態のウィッチ。
無意識の内に俺は彼女を自分の腕の中へと抱いていた。
ギュっと俺に抱き締められてウィッチは一体何が起こったのか、俺の胸に顔をうずめながらもこの状態に少し戸惑っている様子。
少し恥しいのかウィッチの顔は下を俯いている。
「今だけ、今だけこうさせてくれ。」
せっかくだから、今ぐらいはこうしていても罰は当たらないよな?
そう、自分と自分の中の闇に言い聞かせて、このまま彼女の温もりを身体ごと抱き締めた。
「いっ、今だけって・・・?」
ウィッチは少し緊張しながらも、俺を払いのけようとはしなかった。
「お前のこと半人前だなんて言ったけど、俺だって本当は完璧な闇の魔導師じゃない。
俺はまだ、闇の魔導を完全に継承しきれていなんだ。」
自分が闇の魔導を継承する日は、自分が闇の力をモノに出来る日はいつになるかわからない。
それが100年先なのかも、1000年先なのかもそれさえも・・・。
「俺はずっと今までお前のこと散々からかってきたよな?
それは、俺のこと忘れないで欲しかったからだ。」
その理由は闇の魔導を継承する日が何年先になるかわからないからだった。
それまでの間の自分は多分、不老不死みたいなものだから・・・。
こうでもしないとウィッチは俺のことなんて気にかけてくれないと思っていたから・・・。
「ウィッチ・・・。」
愛しい者を求めるように少し艶のある声で俺はその名を呼んだ。




4話へ続く




★リリア様より★
4話もあります(保存シリーズが)。
最初は自分をからかうシェゾをウザイと思っていたウィッチだけど、振り回されていく内に次第に惹かれていく。
でも、中々素直になれなくて、ウィッチはつい意地を張ってしまうツンデレ。
ウィッチの強がりもわかっているけれども、内心ではヤキモキしているシェゾ(色んな意味でジェラシーを感じている)。
顔では余裕の笑みで紳士ぶっていたけれども、本当に余裕がなかったのはウィッチ以上にシェゾの方です。
自分がそうしている間に自分のことを忘れてほしくなくて、ウィッチをおちょくることで遠回しにアタックしてたんだよね。


★主催者より★
ラブシーン到来!!!シェゾがウィッチを抱きしめるシーンで一気にテンション上がりました!!!
照れてるウィッチ、すっごく可愛いです(#^▽^#)