「恋する闇の魔導師:11話」



ルルー達の黄昏−
シェゾとルナのいない所でルルー達は黄昏ていた。
ルルー達は今、魔導村の墓地にあるアルルとカーバンクルの墓の前に居た。
今ここに居るのはルルー、サタン、ラグナス、ルシファーとその他大勢。
「私もアンタの言うように、本当のシェゾがどんな奴だったのか気になっていたのよ。」
ルルーの言う本当のシェゾとはルシファーの話を聞き、ルーンロードがシェゾの心に蒔いた闇の種ことを意味する。
闇の種には人格更新の作用があり、闇の種を心に植付けられた者は自動的に性格が曲ると言われている。
「あの時は本当に嫌味でムカつく奴だと思ったし、破岩掌の1発や2発くらいじゃ足りないと思っていたけどね・・・。」
自分達の知っている限りのシェゾは本来ならば目的の為なら手段を問わないハードでコワ〜イお兄さんだった。
けれども、敵ではない者に対しては危害を加えなかったし、自分達が思っている程悪い人間ではなかった。
「今はさ、今までのことは全部水に流して、アイツと友達として一緒に居てみたいと思うの。」
ルルーはここにはいないアルルに向かって語りかける。
アルルいわく「昨日の敵は明日の友達」その言葉通りにルルーはルーンロードの呪縛から解放された今のシェゾに興味を持っていた。
なぜなら、初めてアルルと出会った最初の頃のルルーは恋愛の妨げとなるアルルを本気で殺すつもりでいたからだ。
そのつもりが、気付けばいつの間にかアルルと友達になっていたから。
いや、もしかするとウィッチと一緒に居る時の自分達には決して見せることのないシェゾの一面を見て、シェゾと言う人間に興味を持ったからなのかもしれない。
「そうだな、アイツ、闇の魔導師とは言っても完全に闇に支配されているようには思えなかったな。」
金色の鎧を身に纏った黒髪の美青年ラグナスもそう口にした。
「俺が思うに、きっとアイツ自身の精神は自分の中に寄生したルーンロードの欠片と色々と戦ってきたんだよ。
完全にルーンロードの野望通りの闇には染まらかったからこそ、悪になりきれなかったんじゃなかったのかな?」
「そうね、私も最初はシェゾとも友達になりたいと言い出してきたアルルに断固として反対したけどね。」
ラグナスがそう言うと、ラグナスの横でルルーが穏かな表情で微笑む。
ルルーからしてみればシェゾは死んでも友達になりたくない相手だったハズなのに、今は不思議と自分の方からシェゾと仲良くしたいと思っている自分がいる。
「シェゾを闇の魔導に導いた責任は俺にもあるし。
俺があの時ルーンロードを仕留め損ねたが為に、シェゾの人生の歯車を歪めてしまったんだ。」
苦悩を思わせるような表情を見せ、自分を責めるような口調で話すラグナスの肩にルシファーが優しく両手を置いた。
「あれはラグナス君のせいではないさ。」
あの時、ルーンロードをラーナの遺跡へ封印した伝説の勇者が剣士ベルナードであろうとラグナスであろうと、どの道シェゾが166年前にルーンロードの手により闇の魔導に導かれると言う運命は変えられなかったのだからとルシファーは優しくラグナスにそう諭した。
「そうだ、だからお前が気に病むことはないぞ。」
ルシファーにつられてサタンも優しく微笑み、ラグナスにそう言う。
最初の頃はアルルを妃候補としていたサタンはカーバンクル至上主義者であり、サタン自身は「アルル=アルルはカーバンクルちゃんの嫁」と言う理由でアルルを自分の妃候補から除名した。
それはサタンがカーバンクルがアルルに恋愛感情を抱いていると勘違いし、そう解釈したからだった。
そのハズのサタンがラグナスをアルルの婿として認めた理由は、カーバンクルが自分と一緒に居るよりもラグナスと一緒の方がアルルを幸せに出来るのではと、アルルの幸せを考えてカーバンクルがアルルをラグナスに譲ったものだと勘違いしていたからだった。
「・・・・・・。」
「そんな顔してると、せっかくのイイ男が台無しだよ。」
下を俯き黙り込むラグナスの背後から緑色のショートヘアの髪の女の子が、中世的な顔立ちとドラゴンの翼と尻尾を持つ美少女ドラコがニッコリと笑い、カツを入れようと彼の背中をバシっと叩く。
「ああ、今度はシェゾじゃなくてアルルのことだよ・・・。」
ラグナスは今の勢いで少しよろめきながらも体勢を整え、ドラコに突っ込まれるよりも先に口を開く。
「俺の本当の初恋の相手はティアラではなく、アルルだったと今頃になって気付いたんだ。」
ラグナスは時の女神エルドラの使命により現在・過去・未来とあらゆる時代と世界を往復し、旅を続ける者。
ラグナスがルーンロードと戦ったあの時代で出会った初恋の少女パティ、実は彼女の正体は前世のアルルだったと言う事実。
元の時代に帰還した時はルーンロードによってあの時代での出来事に関する記憶を消去されていたから、パティのことも忘れて自分の初恋の相手はティアラだと思っていたとラグナスは真面目な顔をして話し出す。
だからあの時の自分は名前以外の記憶を失っていたのだと・・・。
「アルルにパティだった前世の記憶があったかどうかは知らないけれど、俺はずっとアルルの想いに気付かないフリをしていたから・・・。」
もしかしたら、アルルは自分に気があったのではないかとラグナスはそう思うようになっていた。
周囲はラグナスとアルルが完全に恋人同士だと誰もがそう思い込んでいたけれども、実際の2人の関係は友達以上恋人未満だった。
最もアルルはそんな素振りは見せていなかったが、ラグナス自身は確信は持てないけれどもアルルは自分のことを友達や仲間としてではなく、1人の異性として見ていたのではないかと思えてならなかったからだ。
異世界ガイアースの人間であるラグナスは自分とアルルとでは住む世界の違う存在だから、アルルとはそれ以上の関係になることを遠ざけていたと皆に打ち明けた。
今はこの魔導世界に滞在していても、いつエルドラから自分の世界への帰還命令が下されるともわからないから。
「もしかしたら、アルルを殺したのは俺かもしれない。」
もしもアルルがラグナスの思い通り、ラグナスのことを思っていたと仮定したら、アルルは自分に失恋したショックで自殺したのではないかとラグナスは思い詰める。
「あの子は失恋くらいで自殺するような玉じゃないよ。」
いきなり何を言い出すかと思えばとドラコは屈託のない笑顔で複雑な表情を浮かべるラグナスの横でウィンクを見せる。
そう、ルシファーに失恋した時だってアルルはスグにルシファーへの想いを吹っ切ったのだから。
今だにアルルとカーバンクルの死因は事故か自殺か他殺かはわかっていないけれども、彼らは今は亡きアルルがあの時言った言葉通りにシェゾと言う存在に興味を持つようになり、シェゾとこれから友達としてやっていくのも悪くないと思い始めた。
そして、シェゾとルナの2人の関係をこのまま見守っていこうと決意した。





最終話へ続く





★リリア様より★
パティが前世のアルルと言う説はあくまでも私の中の私的脳内妄想です(公式と織田設定ではパティ=前世のアルルと言う設定はないです)。
ティアラに恋してた時点でのラグナスは自分の名前以外の記憶を失くしてたから、自分がアルル達の魔導世界とは別の世界の人間だと言うことも忘れてたんだと思う。
自分が別の世界の人間であることを思い出した後、ラグナスはアルルとそれ以上の関係になることを避けていました。
もしも、もう2度と会えなくなってしまうことになったらアルルに辛い思いをさせてしまうから、ラグナスはあえて感情を押し殺してたんです。
今回の11話はルーンロードの呪縛から解放されたシェゾへの皆の気持ちと言うワケで、シェゾとウィッチの出番はないです。
そしてシェゾとウィッチを見守ろうとするルルー達でした(皆いい人だ)。
次回はいよいよラストの最終話へ突入。


★主催者より★
いよいよクライマックスですね!私的にドラコの立ち位置が凄く好きです。
ドラコらしい励まし方でとても良いなぁと思いましたヽ(*´∀`)ノ