「恋する闇の魔導師」



何時からだろう、俺がこうなったのは・・・。
14歳で魔導学校を卒業し、闇の魔導師としての道を歩み出した。
闇の魔導師としての人生を選んだのは、あの忌まわしいルーンロードの野郎の意思を継ぐ為ではなく、俺自身の為だった。
誰にも変えられない自分だけの運命の中で生きたかったから、運命と言う名の歯車に抗う力を求めて闇の魔導師となった。
俺が闇の魔導師としての人生を選択したことに関しては今でも後悔はしていない。
アルルの魔力を吸収した次はサタンやルシファーの魔力も吸収する、それが俺の当初の目的だった。
アイツらの勝手な勘違いのせいで変態のレッテルを貼られてしまったが、断じて俺は変態などではない。
ついでに、アイツらと出会ってからと言うものの、ロクな目に遭った覚えはない。
ハルマゲ戦の時はことのなりゆきからエアーエレメント、もとい本名ジャーンに懐かれ「ご主人様」と呼ばれ、慕われるハメに・・・。
俺は助けたつもりはないが、結果的にはジャーンを助けたことになり、ジャーンにとって俺はヤツの命の恩人となっていた。
頭の悪いジャーンはどーゆーワケだか、その内俺の前から姿を消したけど。
メインの町の件もルルーのせいで、女装して美少女コンテストに出るハメになるわで・・・。
おまけに「シェリー」なんて悪趣味な名前まで付けやがって、あの筋肉ゴリラ女。
ようやく変態の汚名も返上出来たけど、思えば散々な出来事ばかりだった。
まぁ、アイツらと関わってからと言うものの、ロクな目に遭ったことはないが、それでもウィッチと出会えた運命にだけは感謝している。
ダークマター事件以降、気付けば俺はウィッチの店に顔を出すのが日課となり、それが当り前となっていた。
最初の頃は互いに意地を張り合っていたけれども、もう誤魔化しは利かなくなっていた。
何だかんだ言っても、振り回されているのはいつも俺の方。
俺はまた、いつものようにウィッチの店の前に来ていた。
「あっ、シェゾじゃない。」
何食わぬ顔で俺に声をかけてきたのはアルルだった。
相変わらずカーバンクルと言う黄色の生物を連れて歩いている。
年齢のワリに童顔で色気ゼロのチンクシャ魔導師だが、高魔力の持ち主であり、元ターゲットだった相手だ。
「用がないなら、俺に話をかけるな。」
コイツは特に用事があるワケでもないのに俺に親げに声をかけてくる。
「キミは相変わらず無愛想だね。」
アルルは相変わらず気軽に俺に声をかけてくる。
「お前は相変わらずおめでたい奴だな。」
「めでたいって?」
俺は闇の魔導師としての普段通りの表情で話す。
その言葉にアルルは一瞬、キョトンとした表情で俺を見る。
「忘れたワケではないだろう?
お前は今まで散々俺に魔力を狙われ続けてきた身だ。
そう簡単に気を許して、いつか剣のサビされるかもしれないぜ?」
俺は皮肉な笑みを浮べ、あくまでも闇の魔導師としての威厳を崩さない。
そう、闇の魔導師としての人生を歩み始めてからは、今まで他人から魔力を奪い吸収し続けてきたが、俺はそれを止めた。
それを止めた理由はルーンロードの思惑通りになりたくなかったからだ。
俺が他人から魔力を吸収するようになったのが、全てルーンロードの計画通りになって、いいように踊らされていたと言うのが気に入らなかったからだ。
だから俺は今まで吸収してきた魔力は全て元の持ち主へと返し、闇の魔導師としての日々を送りながらも、全てをリセットしてイチからやり直し出した。
今は誰の魔力も吸収するつもりはないが、ターゲットから除名したからと言って俺がアルル達に危害を加えないと言う保障はない。
今後、アルル達とは敵となるか味方となるか、それさえもまだわからない。
「別に今までのことはもう気にしてないし。」
相変わらずアルルは何食わぬ顔で言う。
「昨日の敵は明日の友達って言うし、最初はサタンもルルーもミノタウロスもみんなそうだったから・・・。」
出会ったばかりの頃は皆自分の敵として現われ、気付けばいつしか友情と絆が芽生えていたとアルルはそう俺に話し出した。
だから俺ともいつかは友達になれるだろうと言わんばかりの視線を向けている。
「俺はまだお前らの味方になったワケではない。」
「でも、ウィッチとは仲良しなんでしょ?」
最近、頻繁にウィッチの店に顔を出していたから、アルルは俺とウィッチが友達にでもなったと思い込んでいるのだろう。
「俺とアイツはワケありで色々と取引をして、今しばらくの間は一緒にいなければならないだけだ。」
俺は普段通りにクールに振舞ったが・・・。
「そんなこと言っちゃってさ、ウィッチのこと好きなら好きって素直に言っちゃえばいいのに。」
アルルはイタズラっ子のようなニコニコした表情かつ、かったような口調でそう言って俺をおちょくってきた。
「キミはウィッチと2人だけの時はあんな顔してたし、ボクが気付いていないとでも思った?」
普段はニブチンのアルルだが、どうしてコイツはこういう時だけに限って勘が鋭いんだよ?
「キミが言う気がないんなら、ボクが代わりにウィッチにこく・・・。」
「だぁーっ!余計なお世話だ!!」
ちなみに、今アルルは冗談なのか本気なのかわからないような口調で「キミが言う気がないんなら、ボクが代わりにウィッチに告白してきてあげようか♪」と言おうとしたのだけれど、俺はそれを慌てて阻止し、赤面しながらアルルの胸座を掴んだその時・・・。
「今日中に告白しないんなら、メインの町の美少女コンテストのことウィッチにバラすわよ?」
そう意地悪なセリフを言い放って俺とアルルの前に現れたのはルルーだった。
「アンタがそんなんじゃ、アンタにフラれたどっかの誰かさんが可哀想でしょ?」
この筋肉ゴリラ女ルルーはサタンにベタ惚れの格闘女、普段はミノタウロスと言う巨体の牛男を連歩いているが、今回は家で留守番らしい。
世の男を誘惑しそうな抜群の美貌とプロポーションの持ち主、露出の高い衣装に身を包んだその容姿はどちらかと言えば、ルックス的には娼婦かAV女優に近いと思う。
いや、そこまではいかないが、それに似たような妖しさだ。
「ルシファー先生の屋敷のメイドに告白された時、アンタは好きな女の子がいるから付き合えないって言って断ったわよね?」
何のためにルシファーの屋敷のメイド(キキーモラではない)をフッたんだと言わんばかりの顔で、ルルーは今にも俺に噛み付いてきそうだ。
2週間前、俺が野暮用でルシファーの屋敷へ出入りしていた時の話。
俺はそこで働くキキーモラの後輩にあたる新人のメイドに告白されたことがあったが、俺の好みではかったので断った。
コイツと居ると色々と話がややこしくなりそうだし、とりあえずアルルを離し、俺の方から話を切り出すことにした。
俺はさっきまで赤面していた顔を元の普段通りの顔に戻し、冷静になって話をする。
「先に言っておくが俺は奴を口説くどころか、ナンパも何もしていない。」
そのメイドとは特に親しいワケでもなく、交流を交わしたワケでもない。
名前は聞いていなかったが、俺にとってそいつはルシファーの屋敷のメイドと言うだけ。
キキーモラはアルルと仲がいいから、あのメイドは俺を先輩であるキキーモラの友人だと思い、俺と仲良くしようと思ったのだろう。
俺はそいつとは適当に話をしただけだったが、どーゆーワケか俺はそいつに惚れられていた。
それ故にルルーはキキーモラの後輩をフッた以上はいい加減、意地を張っていないでさっさとウィッチとくっつけとでも言いたいのだろう。
「そんなのとっくに知ってるわよ。
何でアンタなんかを好きになったのかは理解出来ないけど、あの娘はああ見えて外見で男を選ぶようなタイプじゃないし。
私だって、サタン様が外見だけの中身のない男だったら恋なんかしていないもの。」
ルルーはサタンと初めて出会った時のことを思い出しながら、このまま放っておけばミノタウロスの奴が言っていた「ああ、サタン様モードv」に突入しそうな勢いだ。
このモードに入ればルルーは人の話なんて全く耳には入らないし、またイチから説明し直さなければならなくなる。
「お前の方こそ、人のことを言える立場ではないだろう?
ミノタウロスがお前のことをどんな想いで見ていると思っているんだ?」
それを言われてしまえばルルーもおしまいだった。
「ミノには悪いと思っているわよ。」
そこを突っかれてしまえば、流石にルルーも気マズそうな表情を見せる。
最初の頃は気付いていなかったけれど、つい最近になってルルーはミノタウロスの秘めた胸の内を知ってしまったから。
最もミノタウロスは本心をルルーに告げてはいなかったが、ルルーは徐々に気付き初めていた。
「サタン様はアルルを妃候補から除名したけれど、私はまだサタン様に相応しい女になれたワケじゃないから。」
ルルーは複雑な表情でサタンと結婚するにあたっては、自分には超えなければならない数々の大きな壁があるからと話し出した。
何でもサタンの奴がアルルを妃候補から除名したのは、サタンいわく「アルルはカーバンクルちゃんの嫁」だからだとか。
何があったのかは知らんが、サタンはカーバンクルがアルルにくっついて行ったのは、カーバンクルがアルルに恋愛感情を抱いていたからだと解釈したらしい。
奴がカーバンクル至上主義なのはよく知っているし、サタンの中のアルルがカーバンクルの嫁である以上、カーバンクルの女を取るワケにはいかないからだ。
最も、アルルがカーバンクルのような小動物などを男として見るハズがなく、ただのペットで終っているのだが。
そして、アルルは現在ラグナスと交際中だ。
「私はそうだけど、アンタはその気になればいつだって告白出来るんでしょ?」
ルルーは複雑な表情で付け加えて小声で「羨ましいわよ」とボソリと呟いた。
「あのなぁ、俺だって・・・。」
その時、買い物籠を持ったミノタウロスが俺達の居る方に近付いて来た。
今俺は「あのなぁ、俺だって色々と考えてるんだぞ。」と言おうとしたのだけれども、ミノタウロスの声の方が早かった。
「ルルー様!」
「どうしたのよミノ?」
この様子から察してミノタウロスは買い物へ行く途中だったのだろう。
何かルルーに用事がありそうな顔をしている。
「ルルー様、大至急屋敷へ戻っていただけないでしょうか?」
ミノタウロスはルルーに事情を説明した。
「そう、わかったわ。
じゃあ、私は急用が出来たから帰るわね。」
話によるとルルーの父親が数年ぶりに家に帰宅してきたそうだ。
ルルーの父親は多忙を極めており、滅多に自宅に帰ってこないとか。
職場の者達も一緒に連れて来ているところから、会食か何かがあるのだろう。
ルルーはすぐにこの場を去り、ミノタウロスも買い物へと向かって行った。
とりあえず厄介な女が目の前から消えて助かったぜ。
「ねぇ、シェゾ。」
「なんだアルル?」
おっと、厄介な女がもう1人居るのを忘れたぜ。
「ついでだからさ、この本ウィッチに返しておいてくれるかな?」
この間、ウィッチに借りた本を返す為にわざわざ今日ここに来たんだけどとアルルが言うと、俺はその本を手に取る。
「ああ、返しておいてやるから、さっさとどこかへ行ってくれ。」
アルルは借りていた本を俺に手渡すと、カーバンクルと共にこの場を去って行った。
これで、とりあえず厄介な女どもはいなくなった。
「俺としたことが。」
厄介な女達に覗き見されていたことにも気付かないなんて、恋をすると目の前が見えなくなるとはこのことだろうと俺はそう思った。







END



★リリア様より★
ちなみにルシファー先生は山本版魔導(角川スニーカー文庫)のオリジナルキャラです。
サタンの双子の弟で魔導学校の教師(アルルとルルーの担任)、山本版魔導知らない人もいるかもしれないので念の為に。
コンパイル要素(DS含む)、織田版真・魔導(ファミ通文庫)要素、山本版魔導(非コンパイル)要素などと色々な要素がごちゃ混じっていますが、セガ版(ぷよフィ等)要素は一切ありません。
セガ版(ぷよフィのアミティ達等)のキャラ達は一切登場しないです。
私はセガ版(ぷよフィ等)の方は私的にはあまりなんでセガ版(ぷよフィ等)のファンの方には申し訳ありませんが、スミマセンです。
小説書いたことない私が小説に挑戦してみたのですが、小説なのか小説もどきなのかはわかりません(素人なのでその辺のツッコミはカンベンして下さい)。
シェアル小説はあるのにシェウィ小説は少ないので、シェウィに飢えているあまりにイラっとしてついにこんなものを書いてしまいました。
シェウィサイトが少ないのも原因はシェアル人間による荒しや誹謗中傷等のせい、以前シェウィで検索していて見つかったのはシェウィよりもシェウィに対する荒しと誹謗中傷等。
まぁ、シェアル人間の全てがシェウィ潰しとは限らないし、中には荒しや誹謗中傷等をしない善良なシェアル派の人達やシェアルとシェウィ両方とも好きだと言う方もいますが、シェアル人間って荒らす人が多過ぎて。
誰がどのCPを愛そうとそれはその人の自由だし、人それぞれCPに対する好き嫌いはありますが、自分が嫌いだからと言ってそのサイトを見つけてはわざわざ悪口・荒し・誹謗中傷等をしに来るんですよね。
それらのせいで閉鎖していくシェウィサイトもあったし、現在はシェウィへの荒しと誹謗中傷等は大分なくなり、シェウィファンもサイトも大分復活して来ましたが、それでもまだ少ないような気がします。
シェアル人間の荒しや誹謗中傷等に負けず、今こそ立ち上がって下さい(って言うか、イラストもいいけど小説の方も見たいです)。
何だか段々と暗い話になってしまってスミマセン。
実はこれ2年以上も前に書いたものなのですが、小説初心者なんで投稿しようかどうか迷っていてずっと保存してそのままの状態だったんですけど、投稿することに決めました。
それでは管理人様、よろしくお願い致します。
実はまだこれ続きがあるのですが、続きも投稿するかどうかはシェウィ同士の皆さんの反応や様子等を少し見てから考えます。
続き(2話以降)も実は保存してずっとそのまんまになってたり(苦笑)。


★主催者より★
シェゾがイケメンッ!!!ヽ(*´∀`)ノ惚れ直しました!!!
「小説を書いたことが無い」というコメントを頂いて、驚きを隠せない私がいます。
アルルやルルーの煽り方が素敵ですねvvvそして、照れるシェゾがとっても可愛いです(#^.^#)
イケメンが照れるというのはとっても美味しいです♪続き、すっごく気になります・・・!!!
もし良かったらまた送って頂きたいです><
この度はとても萌える作品をどうもありがとうございました!!!