朝、新八がいつものように万事屋を訪れ、部屋に入ると、不思議な光景が目の前に広がっていた。
「なんで対角?」
新八は、本日最初のツッコミを、早くも使ってしまった。
ふたつのソファに挟まれた背の低いテーブルの上には、ご飯の入ったおひつと卵が乗っている。それだけならば、神楽が食事当番である日の通常仕様、いつもと変わらぬ朝の光景である。だがしかし、いつもは隣り合うか向かい合うかで座る銀時と神楽が、互いから距離を取るように対角で座っているのだ。しかも一言も話さず黙々と食べている。
何かがおかしい。一体、このふたりに何が起きたのだろう。
「…… 喧嘩でもしたんですか?」
問いかけると、ふたり同時に首を左右に振った。喧嘩しているわけではないらしい。その割には終始無言だが。
「…… 何か変なモノでも食べたんですか?」
また、ふたり同時に首を左右に振った。食中りの心配もなさそうだ。その割には顔が赤いが。
「二人とも顔が赤いですよ」
そう告げてやれば、ふたりは首を左右に振ることなく、硬直した。よくよく見れば、顔の赤みが先程より増したような気もする。
「風邪でも引きました?」
三度目の問いかけにも、ふたり同時に首を左右に振った。「つーか、どっちか喋れ」と新八は心の中で突っ込んだ。
「…… ハァー」
溜息が零れた。昨日までこんなことはなかったのだ。いつも通り、常に隣同士でバカをやっている仲の良いふたりだったのだ。昨日、自分が帰ってから今朝に至るまでに何かが起きたのだろうが、答えは見つからない。
質問が途切れたからか、ふたりは再び卵かけご飯を食べ始めた。おそろしいほどに、行動はシンクロしていて、おかわりのタイミングも同時という奇跡まで起きていた。ふたり同時に立ち上がり、しゃもじに手を伸ばす。そこで、互いの手が触れ合った次の瞬間、
「「あ」」
目にも映らぬ超神速といえる速さで、弾かれるようにふたりが飛び退いた。
一瞬、何が起きたのか新八にも理解できなかった。
「銀ちゃん、先にいいヨ」
「あーいいよ。お前が先で」
絶対、何かがおかしい。譲り合いの精神なんて、このふたりにはなかったはずだ。ふたりを見やれば、今度は耳まで赤く染めている。手が触れ合ったぐらいで、どうしてそんなに赤くなるのか。
「―― 一体何なんですか、アンタら。まるで付き合い始めたばかりのカップルみたいですよ」
そう揶揄するように言ってやれば、瞬時にふたりが新八から顔を背けた。ふたりの背中には「ギクッ」と書かれてある。
「え?」今度は、新八が硬直する番となってしまった。「……そうなの?」
確かめるように問いかけると、今度はゆっくりと、ふたり同時に首を上下に振った。
FIN
[2010/2/14 Web拍手へUp]
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