銀時が外出しているため、神楽と新八は万事屋で留守番をしていた。時間は午後三時。テーブルの上には、新八の用意してくれたお茶とお煎餅が乗っている。神楽と新八は、向かい合うようにソファに座り、おやつタイムを過ごしていた。
 ボリボリバキッ。神楽は次から次へとお煎餅に噛り付き、消化してゆく。
 神楽は昨日からムシャクシャしていた。後悔するようなことはしていないが、悔しい気持ちでいっぱいだった。お煎餅のような歯ごたえのあるおやつは、八つ当たりするのに一役買ってくれた。
「……神楽ちゃん、何かあったの?」
 パリ……。新八の問いかけに、神楽は咀嚼するのをやめた。
 テレビの電源も切ってあったため、辺りがシーンと静まり返る。音もなく、静かな状態でいると、我慢していたものが腹の底から込み上げてくるのを感じた。兄にいじめられて、母に泣きつきにいったときのような感情が、神楽の中に芽生える。
 神楽は口の中のモノを飲み込み、新八に話すことにした。
「私……昨日、銀ちゃんに告白したアルヨ」
「え?!」
 新八はひどく驚いたような顔をしていた。新八の反応は想定内だったが、改めて、驚かれるようなことを自分はしてしまったらしいと気づかされた。
 その上、「やっぱり、神楽ちゃんも銀さんのこと……そうか、そうだったんだ……」と呟かれてしまい、自分の銀時に対する気持ちとやらは新八にもバレていたようだということがわかって、急に恥ずかしくなってくる。
「―― でも、思いっきりガキ扱いされて終わったネ」
「……ホント天邪鬼だな、あの人……」
「何か言ったアルか? 新八」
「ううん、なんでもないよ。あ、銀さん、帰ってきたみたいだよ」
 新八の言う通り、玄関から物音がした。
「オーイ。帰ったぞーう」
 玄関から銀時の声がする。条件反射で「銀ちゃん!」と玄関へ向かっていってしまい、自分の習性に悲しくなった。廊下の途中から、わざとドスドスと足音を響かせて出迎えると、銀時はこちらをじっと見つめてきた。
「な、何アルか」
「新八と二人で、俺に黙ってイイモン食ってやがったな、コノヤロー」
「え」
「お菓子。ほっぺについてんぞ」
「あ」
 こんなことだからガキ扱いされてしまうのだと、神楽は妙に納得してしまった。右頬に手を伸ばす。お煎餅の欠片は見つからない。
「そこじゃねーよ」と苦笑する銀時に、顎を掴まれてしまった。そして、左頬に小さな衝撃まで与えられてしまう。
「ごっそさん」
 神楽はへなへなとその場に座り込んでしまった。
 頬に触れたあのやわらかなモノの正体は、もしや唇だったのではないだろうか。……心臓がドクドクと脈打ち始め、身体全体が熱くなってきた。鏡を見なくても、今、自分の顔が赤くなっているのがわかる。
「あ、銀さん、おかえりなさい。あれ? 神楽ちゃんは?」
「あー廊下でタコになってる」
 銀時と新八の会話を遠くに聞きながら、神楽は、やはり悔しい気持ちでいっぱいになった。



FIN


[2010/2/14 Web拍手へUp]

TextTop